「ナトリウムチャネル」の版間の差分

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 通常、Navチャネルは不活性化が速いため、一過的にしか内向き電流は流れないが、[[小脳]]の[[プルキンエ細胞]]をはじめ多くの[[神経細胞]]では、長時間にわたり不活性化せずに開き続ける持続的な内向き電流が存在する([[持続性ナトリウム電流]])。また、これに加えて小脳のプルキンエ細胞などでは、不活性化状態ののち再開口が起こりやすく([[resurgent電流]])、これにより[[スパイク]]の後に[[脱分極]]が引き起こされることが知られている。
 通常、Navチャネルは不活性化が速いため、一過的にしか内向き電流は流れないが、[[小脳]]の[[プルキンエ細胞]]をはじめ多くの[[神経細胞]]では、長時間にわたり不活性化せずに開き続ける持続的な内向き電流が存在する([[持続性ナトリウム電流]])。また、これに加えて小脳のプルキンエ細胞などでは、不活性化状態ののち再開口が起こりやすく([[resurgent電流]])、これにより[[スパイク]]の後に[[脱分極]]が引き起こされることが知られている。


[[Image:Tree.png|thumb|300px|'''図4. サブユニットの系統樹''']] 
== αサブユニットの多様性  ==
== αサブユニットの多様性  ==


[[Image:Tree.png|thumb|300px|'''図4. サブユニットの系統樹''']] Navチャネルのαサブユニットは、[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]では9つの[[wikipedia:ja:遺伝子|遺伝子]]が知られている。それぞれ発現場所や発生段階における発現のタイミング、および分子特性や薬理学的作用などが異なっている(表、図4参照)。Nav1.4は骨格筋、Nav1.5は心筋に多く発現し、Nav1.7、Nav1.8、Nav1.9は[[末梢神経]]に発現している。Nav1.1、Nav1.2、Nav1.3およびNav1.6は主に[[中枢神経]]で発現しているが、一部は末梢神経にも存在する。Axon initial segmentとランビエ紋輪のNavチャネルの多くはNav1.6であることが知られている。中枢神経細胞の樹状突起にもNav1.6は分布する。   
Navチャネルのαサブユニットは、[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]では9つの[[wikipedia:ja:遺伝子|遺伝子]]が知られている。それぞれ発現場所や発生段階における発現のタイミング、および分子特性や薬理学的作用などが異なっている(表、図4参照)。Nav1.4は骨格筋、Nav1.5は心筋に多く発現し、Nav1.7、Nav1.8、Nav1.9は[[末梢神経]]に発現している。Nav1.1、Nav1.2、Nav1.3およびNav1.6は主に[[中枢神経]]で発現しているが、一部は末梢神経にも存在する。Axon initial segmentとランビエ紋輪のNavチャネルの多くはNav1.6であることが知られている。中枢神経細胞の樹状突起にもNav1.6は分布する。   


 またNavチャネルと似た配列を持つ[[Nax]]と呼ばれるタンパク質が存在する。アミノ酸配列上、Navチャネルと同様、電位センサーおよびポアドメインに似た構造を持っているが、電位依存的にナトリウムイオンを透過させる機能を持っていない。Naxは中枢神経系などに発現し、チャネルではなくナトリウムセンサーとして働いているという報告がある<ref><pubmed> 11992118 </pubmed></ref>。  
 またNavチャネルと似た配列を持つ[[Nax]]と呼ばれるタンパク質が存在する。アミノ酸配列上、Navチャネルと同様、電位センサーおよびポアドメインに似た構造を持っているが、電位依存的にナトリウムイオンを透過させる機能を持っていない。Naxは中枢神経系などに発現し、チャネルではなくナトリウムセンサーとして働いているという報告がある<ref><pubmed> 11992118 </pubmed></ref>。  
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 [[wikipedia:ja:サソリ|サソリ]]や[[wikipedia:ja:イソギンチャク|イソギンチャク]]、[[wikipedia:ja:クモ|クモ]]などの種々の生物毒はNavチャネルに結合することが知られているが、結合性はαサブユニット間で異なる。[[フグ毒]]として知られているテトロドトキシン(tetrodotoxin, TTX)はナトリウムチャネルの細胞外側に結合し、ナトリウムイオン透過を阻害する。テトロドトキシンは多くのナトリムチャネルに結合するが、Nav1.5、Nav1.8およびNav1.9はテトロドトキシン抵抗性である。  
 [[wikipedia:ja:サソリ|サソリ]]や[[wikipedia:ja:イソギンチャク|イソギンチャク]]、[[wikipedia:ja:クモ|クモ]]などの種々の生物毒はNavチャネルに結合することが知られているが、結合性はαサブユニット間で異なる。[[フグ毒]]として知られているテトロドトキシン(tetrodotoxin, TTX)はナトリウムチャネルの細胞外側に結合し、ナトリウムイオン透過を阻害する。テトロドトキシンは多くのナトリムチャネルに結合するが、Nav1.5、Nav1.8およびNav1.9はテトロドトキシン抵抗性である。  


{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" align="center" style="width: 880px; height: 450px;"
{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" align="center"
|+ 表. 各αサブユニットの発現場所、および機能等  
|+ 表. 各αサブユニットの発現場所、および機能等  
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| 中枢神経(主に神経細胞の[[細胞体]])、心筋<br>  
| 中枢神経(主に神経細胞の[[細胞体]])、心筋<br>  
| テトロドトキシン、[[サキシトキシン]]  
| テトロドトキシン、[[サキシトキシン]]  
| 2番染色体<br>  
| 2番染色体<br>  
| 全般性てんかん熱性痙攣プラス、[[乳児重症ミオクロニーてんかん]]<br>
| 全般性てんかん熱性痙攣プラス、[[乳児重症ミオクロニーてんかん]]<br>
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| 中枢神経(主に[[無髄]]、[[髄鞘化]]前の軸索)<br>  
| 中枢神経(主に[[無髄]]、[[髄鞘化]]前の軸索)<br>  
| テトロドトキシン、サキシトキシン<br>  
| テトロドトキシン、サキシトキシン<br>  
| 2番染色体<br>  
| 2番染色体<br>  
| 全般性てんかん熱性痙攣プラス、乳児重症ミオクロニーてんかん<br>
| 全般性てんかん熱性痙攣プラス、乳児重症ミオクロニーてんかん<br>
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| 骨格筋<br>  
| 骨格筋<br>  
| μ-[[コノトキシン]]、テトロドトキシン、サキシトキシン<br>  
| μ-[[コノトキシン]]、テトロドトキシン、サキシトキシン<br>  
| 17番染色体<br>  
| 17番染色体<br>  
| [[高カリウム性周期性四肢麻痺]]、筋硬直症<br>
| [[高カリウム性周期性四肢麻痺]]、筋硬直症<br>
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| 心筋、脳の一部<br>  
| 心筋、脳の一部<br>  
| テトロドトキシン抵抗性、サキシトキシン抵抗性<br>  
| テトロドトキシン抵抗性、サキシトキシン抵抗性<br>  
| 3番染色体<br>  
| 3番染色体<br>  
| [[wikipedia:JA:先天性QT延長症候群|先天性QT延長症候群]]、[[ブルガダ症候群]]<br>
| [[wikipedia:JA:先天性QT延長症候群|先天性QT延長症候群]]、[[ブルガダ症候群]]<br>
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102行目: 103行目:
| 後根神経節細胞<br>  
| 後根神経節細胞<br>  
| テトロドトキシン抵抗性<br>  
| テトロドトキシン抵抗性<br>  
| 3番染色体<br>  
| 3番染色体<br>  
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| 後根神経節細胞、[[wikipedia:ja:三叉神経|三叉神経]]<br>  
| 後根神経節細胞、[[wikipedia:ja:三叉神経|三叉神経]]<br>  
| テトロドトキシン抵抗性<br>  
| テトロドトキシン抵抗性<br>  
| 3番染色体<br>  
| 3番染色体<br>  
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