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== 結晶構造 == | == 結晶構造 == | ||
カリウムチャネルの結晶化とその構造解析が進んでいる。1998年の原核生物由来の2TM型カリウムチャネルKcsAのX線構造解析に始まり(図1,2) | カリウムチャネルの結晶化とその構造解析が進んでいる。1998年の原核生物由来の2TM型カリウムチャネルKcsAのX線構造解析に始まり(図1,2) <ref><pubmed>9525859</pubmed></ref>、Ca依存的/活性化カリウムチャネル(MthK, hBK)、電位依存性カリウムチャネル(KvAP)、Kirチャネル(KirBac、Kir2、Kir3)、K2Pチャネル(TRAAK、TWIK-1)と原核生物に留まらず近年では真核生物のカリウムチャネルの構造も相次いで報告されている。共通の性質として(図2)、①TM1とTM2(あるいはS5とS6)とよばれる2つの膜貫通領域から水性のポアが形成される、②P領域がポアヘリックスとイオン選択フィルターを形成し、シグネチャ配列がイオン選択性フィルターの一部を形成し、それは細胞膜の中心から外側にかけて存在する、③イオン選択フィルターの細胞内側に中心腔(central cavity)とよばれる水性の空間が存在する、④ポアヘリックスが4対称軸の中心に向いており、C末側が中心腔に到達していること、などがあげられる <ref><pubmed>9525859</pubmed></ref>。これらの水性ポアドメインの構造に関わる共通点から、カリウムチャネルの選択イオン透過機能に関わる立体構造はほぼ等価であるといえる。 | ||
[[Image:KCh fig2.png|345x173px]] | [[Image:KCh fig2.png|345x173px]] | ||
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= 3.神経細胞におけるカリウムチャネルの役割<br> = | = 3.神経細胞におけるカリウムチャネルの役割<br> = | ||
神経細胞や心筋細胞の静止膜電位や興奮性の多様性は、多くの場合、それぞれの細胞に発現するカリウムチャネルの種類と量によって説明することが出来る。また細胞内においても均一に発現しているわけではなく、樹状突起や軸索に局在して発現していることも多い(図5)。 | |||
[[Image:KCh fig5.png|374x368px]]<br> | [[Image:KCh fig5.png|374x368px]]<br> | ||
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= 5.薬理学<br> = | = 5.薬理学<br> = | ||
カリウムチャネルは様々な生理的役割を果たしており、カリウムチャネルに作用する毒物や薬物は生体にとって深刻な作用を与えうる。これら毒素や薬物はチャネル研究を行なう上で重要なツールとなっている。また、カリウムチャネルは薬物治療の標的となり、いくつかの阻害薬および活性化薬が臨床の現場で使用されている。<br>実験室レベルで用いられるKvチャネルの阻害薬としてtetraethylammonium(TEA)、4-aminopyridine(4-AP)ヘビ毒のdendrotoxin、サソリ毒のagitoxin、蜘蛛毒のhanatoxinなどがある。イオンチャネルごとに異なる薬物選択性が知られており、イオン電流成分の分離や分子種の推定に薬理学的解析が行われている。阻害の機序としては、TEA、4-AP、dendrotoxin、agitoxinなどは小孔、もしくは小孔の近傍に結合し、イオン透過機能を阻害する。一方、hanatoxinなどは電位センサー部位に結合し、電位依存性を変える。<br>amiodaroneやnifekalantは心筋細胞の''I''<sub>Kr</sub>電流を阻害し活動電位持続時間を延長し、相対的不応期を延長することから抗不整脈薬(第三群)として臨床使用されている。<br>近年、Kvチャネル電流を増加させる薬物も報告されており、それらは不活性化機構や脱感作機構に影響を及ぼしていると報告されている。<br>KCaチャネルのBKチャネルはサソリ毒のcharybdotoxin、iberiotoxin、そして比較的低濃度のTEA(<1 mM)によって阻害される。またSKチャネルはハチ毒apaminによって強力に阻害される。この薬物感受性の違いはCa活性化Kチャネルの分子種の特定に利用される。また、1-EBIOなどKCaチャネル(IK, SKチャネル)の開口薬が存在し、これらはCa<sup>2+</sup>感受性を高めることが報告されているが詳細なメカニズムは不明である。<br>K<sub>ATP</sub>チャネルの阻害薬と活性化薬が薬物治療に用いられている。スルホニルウレア剤(tolbutamide、glibenclamideなど)は膵臓β細胞のK<sub>ATP</sub>チャネルを阻害し細胞を脱分極させ、インスリン分泌を促す作用があり糖尿病の治療に用いられる。スルホニルウレア(sulfonylurea, SU)剤の受容サイトがあることから、K<sub>ATP </sub>チャネルのβサブユニットはスルホニルウレア受容体(sulfonylurea receptor, SUR)と呼ばれる。また、diazoxideやpinacidilなどカリウムチャネル開口薬(K channel opener, | カリウムチャネルは様々な生理的役割を果たしており、カリウムチャネルに作用する毒物や薬物は生体にとって深刻な作用を与えうる。これら毒素や薬物はチャネル研究を行なう上で重要なツールとなっている。また、カリウムチャネルは薬物治療の標的となり、いくつかの阻害薬および活性化薬が臨床の現場で使用されている。<br>実験室レベルで用いられるKvチャネルの阻害薬としてtetraethylammonium(TEA)、4-aminopyridine(4-AP)ヘビ毒のdendrotoxin、サソリ毒のagitoxin、蜘蛛毒のhanatoxinなどがある。イオンチャネルごとに異なる薬物選択性が知られており、イオン電流成分の分離や分子種の推定に薬理学的解析が行われている。阻害の機序としては、TEA、4-AP、dendrotoxin、agitoxinなどは小孔、もしくは小孔の近傍に結合し、イオン透過機能を阻害する。一方、hanatoxinなどは電位センサー部位に結合し、電位依存性を変える。<br>amiodaroneやnifekalantは心筋細胞の''I''<sub>Kr</sub>電流を阻害し活動電位持続時間を延長し、相対的不応期を延長することから抗不整脈薬(第三群)として臨床使用されている。<br>近年、Kvチャネル電流を増加させる薬物も報告されており、それらは不活性化機構や脱感作機構に影響を及ぼしていると報告されている。<br>KCaチャネルのBKチャネルはサソリ毒のcharybdotoxin、iberiotoxin、そして比較的低濃度のTEA(<1 mM)によって阻害される。またSKチャネルはハチ毒apaminによって強力に阻害される。この薬物感受性の違いはCa活性化Kチャネルの分子種の特定に利用される。また、1-EBIOなどKCaチャネル(IK, SKチャネル)の開口薬が存在し、これらはCa<sup>2+</sup>感受性を高めることが報告されているが詳細なメカニズムは不明である。<br>K<sub>ATP</sub>チャネルの阻害薬と活性化薬が薬物治療に用いられている。スルホニルウレア剤(tolbutamide、glibenclamideなど)は膵臓β細胞のK<sub>ATP</sub>チャネルを阻害し細胞を脱分極させ、インスリン分泌を促す作用があり糖尿病の治療に用いられる。スルホニルウレア(sulfonylurea, SU)剤の受容サイトがあることから、K<sub>ATP </sub>チャネルのβサブユニットはスルホニルウレア受容体(sulfonylurea receptor, SUR)と呼ばれる。また、diazoxideやpinacidilなどカリウムチャネル開口薬(K channel opener, KCO)とはK<sub>ATP</sub>チャネルの開口薬である。これらは血管の緊張を緩和し、血管拡張剤として用いられている。KCOもK<sub>ATP</sub>チャネルのβサブユニットSURに作用する。<br>吸引性麻酔薬であるhalothaneがK2Pチャネルを活性化することが知られており、この作用は局所麻酔薬の分子作用機序として考えられている。<ref><pubmed>10321245</pubmed></ref>。<br>臨床で用いられているものを含む多くの化合物の作用を詳細に調べると、主作用とは別にカリウムチャネルに対する作用を併せ持つ薬物が非常に多くあることが分かってきた。例えば抗ヒスタミン薬のterfenadineはカリウムチャネルを阻害する副作用を持ち、その為に致死的な不整脈を誘発する危険性が有り、臨床で使われなくなった。他には中枢神経系作動薬(haloperidolなどの抗精神病薬やfluoxetineなどの抗うつ薬など)にも副作用としてカリウムチャネルに対する作用が認められる。例えば''I''<sub>K</sub>電流の阻害が知られており、hERGチャネルの阻害が報告されている。またKirチャネルに対する作用なども報告されているが、治療効果への関与は未解明である。 | ||
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