「胚性幹細胞」の版間の差分

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 しかしながら、ヒト ES 細胞の元となるヒトの胚盤胞期胚を得ることは容易でなく、またヒト胚に侵襲を加えることに対する社会的な抵抗感があることが問題になった。更に、移植を目指す場合、[[wikipedia:ja:組織適合抗原|組織適合抗原]]の不一致による[[wikipedia:ja:拒絶反応|拒絶反応]]を防ぐため、患者と同一の組織適合抗原を持ったヒト ES 細胞が必要となるという問題がある。この問題を回避するアイデアとして、[[wikipedia:ja:核移植|核移植]]技術を用いて患者体細胞からクローン胚を作成し、ES 細胞を樹立することで、患者と同一の遺伝型を持つオーダーメイドの ES 細胞(ntES 細胞)を作成することが検討された。しかし、この方法には大量のヒト未受精[[wikipedia:ja:卵子|卵子]]が必要である上に、もし子宮に移植すればクローン人間誕生に繋がる可能性がゼロとは言えず、そのようなヒト胚を作成・使用することへの危険性が議論された。更に、ヒト ntES 細胞を作成したとする論文が捏造であったこともこの研究を減速させる大きな要因となった。現在も正常な核型を持つヒト ntES 細胞株は得られていない。
 しかしながら、ヒト ES 細胞の元となるヒトの胚盤胞期胚を得ることは容易でなく、またヒト胚に侵襲を加えることに対する社会的な抵抗感があることが問題になった。更に、移植を目指す場合、[[wikipedia:ja:組織適合抗原|組織適合抗原]]の不一致による[[wikipedia:ja:拒絶反応|拒絶反応]]を防ぐため、患者と同一の組織適合抗原を持ったヒト ES 細胞が必要となるという問題がある。この問題を回避するアイデアとして、[[wikipedia:ja:核移植|核移植]]技術を用いて患者体細胞からクローン胚を作成し、ES 細胞を樹立することで、患者と同一の遺伝型を持つオーダーメイドの ES 細胞(ntES 細胞)を作成することが検討された。しかし、この方法には大量のヒト未受精[[wikipedia:ja:卵子|卵子]]が必要である上に、もし子宮に移植すればクローン人間誕生に繋がる可能性がゼロとは言えず、そのようなヒト胚を作成・使用することへの危険性が議論された。更に、ヒト ntES 細胞を作成したとする論文が捏造であったこともこの研究を減速させる大きな要因となった。現在も正常な核型を持つヒト ntES 細胞株は得られていない。


 このような背景のなか、体細胞に遺伝子導入することによって ES 細胞に近い性質を持った、[[wikipedia:ja:人工多能性幹細胞|人工多能性幹(iPS)細胞]]を作成する技術が開発され、ES 細胞を使用することによる問題点の多くを解決すると期待されている。しかしながら、iPS 細胞は人工的な操作によって得られる細胞であり、ES 細胞との類似性の厳密な検討が必要であるが、ヒト ES 細胞自体の性質はマウス ES 細胞ほど明らかでなく、ヒト ES 細胞研究と並行して推進することが必須である。  
 このような背景のなか、体細胞に遺伝子導入することによって ES 細胞に近い性質を持った、[[iPS細胞|人工多能性幹(iPS)細胞]]を作成する技術が開発され、ES 細胞を使用することによる問題点の多くを解決すると期待されている。しかしながら、iPS 細胞は人工的な操作によって得られる細胞であり、ES 細胞との類似性の厳密な検討が必要であるが、ヒト ES 細胞自体の性質はマウス ES 細胞ほど明らかでなく、ヒト ES 細胞研究と並行して推進することが必須である。


== マウス ES 細胞とヒト ES 細胞の相違  ==
== マウス ES 細胞とヒト ES 細胞の相違  ==