「DISC1」の版間の差分

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== イントロダクション(背景、歴史的推移など) ==
== イントロダクション(背景、歴史的推移など) ==
 ''DISC1''遺伝子は、染色体1番と11番の間で均衡型常染色体転座(1;11)(q42.1;q14.3)を遺伝的に有する、スコットランドの精神疾患が集積する家系から見いだされた<ref><pubmed> 1973210 </pubmed></ref><ref name=ref1><pubmed> 10814723</pubmed></ref>。この家系の転座をもつ保因者29名のうち、21名に精神疾患の診断がなされ、そのうち、統合失調症が7名、[[双極性障害]]が1名、大うつ病が10名であった<ref name=ref3><pubmed> 11443544 </pubmed></ref>[[ファイル:Kkubo_fig_1.jpg|thumb|right|400px|''DISC1''発見の契機となった家系での均衡型常染色体転座と診断名<ref name=ref3 />]]。それに対し、この家系の転座を持たない38名については、5名に精神疾患の診断がなされ、そのうちわけは、1名がアルコール依存、1名は青年期の行為−情緒障害、3名が小うつ病と、精神疾患としては比較的軽度の診断であった<ref name=ref3 />。この家系での転座によって、染色体1番上の遺伝子が2つ破壊されると考えられ、その破壊される遺伝子は''DISC1''、''DISC2''と名付けられた<ref name=ref1 />。このうち、''DISC1''は、主なアイソフォームとして854アミノ酸からなるタンパク質をコードする。一方、''DISC2''は''DISC1''とは逆方向のノンコーディングRNAをコードする。
[[ファイル:Kkubo_fig_1.jpg|thumb|right|400px|'''図1.''DISC1''発見の契機となった家系での均衡型常染色体転座と診断名'''<ref name=ref3 />]]
 
 ''DISC1''遺伝子は、染色体1番と11番の間で均衡型常染色体転座(1;11)(q42.1;q14.3)を遺伝的に有する、スコットランドの精神疾患が集積する家系から見いだされた<ref><pubmed> 1973210 </pubmed></ref><ref name=ref1><pubmed> 10814723</pubmed></ref>。この家系の転座をもつ保因者29名のうち、21名に精神疾患の診断がなされ、そのうち、統合失調症が7名、[[双極性障害]]が1名、大うつ病が10名であった<ref name=ref3><pubmed> 11443544 </pubmed></ref>(図1)。それに対し、この家系の転座を持たない38名については、5名に精神疾患の診断がなされ、そのうちわけは、1名がアルコール依存、1名は青年期の行為−情緒障害、3名が小うつ病と、精神疾患としては比較的軽度の診断であった<ref name=ref3 />。この家系での転座によって、染色体1番上の遺伝子が2つ破壊されると考えられ、その破壊される遺伝子は''DISC1''、''DISC2''と名付けられた<ref name=ref1 />。このうち、''DISC1''は、主なアイソフォームとして854アミノ酸からなるタンパク質をコードする。一方、''DISC2''は''DISC1''とは逆方向のノンコーディングRNAをコードする。


 なお、この転座は、特定の精神疾患への罹患に直接結びつくのではなく、この転座によって、精神疾患罹患のリスクを高める[[エンドフェノタイプ]]が生じると考えられる。実際、この転座を持つ保因者では、同じ家系内の非保因者よりも事象関連電位P300の振幅が有意に低下するとの報告もある<ref name=ref3 />。
 なお、この転座は、特定の精神疾患への罹患に直接結びつくのではなく、この転座によって、精神疾患罹患のリスクを高める[[エンドフェノタイプ]]が生じると考えられる。実際、この転座を持つ保因者では、同じ家系内の非保因者よりも事象関連電位P300の振幅が有意に低下するとの報告もある<ref name=ref3 />。
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[[ファイル:Kkubo_fig_2.jpg|thumb|right|400px|'''図2.DISC1の構造の模式図と代表的な結合分子''']]。
[[ファイル:Kkubo_fig_2.jpg|thumb|right|400px|'''図2.DISC1の構造の模式図と代表的な結合分子''']]。


 DISC1は足場(scaffold)タンパク質、もしくは、ハブ(hub)タンパク質として機能すると考えられ、多くの結合分子(DISC1 interactome)が知られている<ref><pubmed> 17043677 </pubmed></ref><ref name=ref19><pubmed> 22015021 </pubmed></ref>。これらの結合分子の探索がDISC1の機能の解明に大きな役割を果たしてきた。主な分子名を下に挙げる(分子名の後の数字は、報告されたDISC1上の結合部位[アミノ酸残基])
 DISC1は足場(scaffold)タンパク質、もしくは、ハブ(hub)タンパク質として機能すると考えられ、多くの結合分子(DISC1 interactome)が知られている<ref><pubmed> 17043677 </pubmed></ref><ref name=ref19><pubmed> 22015021 </pubmed></ref>。これらの結合分子の探索がDISC1の機能の解明に大きな役割を果たしてきた。主な分子名を下に挙げる(分子名の後の数字は、報告されたDISC1上の結合部位[アミノ酸残基])(図2)。


Nuclear distribution element-like 1 (NDEL1/NUDEL) [802-835] <ref name=ref13 /><ref name=ref48><pubmed> 12812986 </pubmed></ref><ref><pubmed> 14962739 </pubmed></ref><ref name=ref6 /><ref><pubmed> 17035248 </pubmed></ref>
Nuclear distribution element-like 1 (NDEL1/NUDEL) [802-835] <ref name=ref13 /><ref name=ref48><pubmed> 12812986 </pubmed></ref><ref><pubmed> 14962739 </pubmed></ref><ref name=ref6 /><ref><pubmed> 17035248 </pubmed></ref>