「神経筋接合部」の版間の差分

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 脊椎動物の神経筋接合部は、初期シナプス形成の良いモデルとなっているだけでなく、出来上がったシナプスが再編される過程であるシナプス競合のモデルとしても研究が盛んである。脊椎動物の神経筋接合部では、発生初期において、一本の筋繊維上に、複数の神経繊維の終末がシナプスを形成する。最終的に、単一の運動神経から強いシナプス入力を受け取る筋繊維では、やがて、一本の神経繊維からの終末だけが残るように他の神経繊維からの終末は除去される。これは、複数の神経終末間で競合が起こり、シナプス除去の機構が働いた結果起こると考えられている<ref><pubmed>5499804</pubmed></ref>, <ref><pubmed>978579</pubmed></ref>, <ref><pubmed>8426240</pubmed></ref>。シナプス除去は、神経細胞の活動を抑制すると、抑制されることから、神経活動依存的であることが示されている<ref><pubmed>14946732</pubmed></ref>。アセチルコリンのアンタゴニスト、α-Bungarotoxinを微小領域に投与すると、投与された領域はシナプス除去される。しかし、筋繊維全体にα-Bungarotoxinが投与されると、シナプス競合は起こらない<ref><pubmed>7990923</pubmed></ref>。これらのことから、神経活動依存的に筋肉細胞側からの因子(神経栄養因子など)を奪い合う結果、シナプス競合・除去が起こる可能性や、筋肉側から、シナプスを除去するような因子が放出されていて、活動の高い神経終末は、その毒性から守られているという可能性や、活動の高いシナプスでは、筋肉内でシナプスを保護する機構が活性化され、さらに、それ以外のシナプスを除去する機構も活性化させるという仮説が、考えられている<ref name="ref9" />。 <br>
 脊椎動物の神経筋接合部は、初期シナプス形成の良いモデルとなっているだけでなく、出来上がったシナプスが再編される過程であるシナプス競合のモデルとしても研究が盛んである。脊椎動物の神経筋接合部では、発生初期において、一本の筋繊維上に、複数の神経繊維の終末がシナプスを形成する。最終的に、単一の運動神経から強いシナプス入力を受け取る筋繊維では、やがて、一本の神経繊維からの終末だけが残るように他の神経繊維からの終末は除去される。これは、複数の神経終末間で競合が起こり、シナプス除去の機構が働いた結果起こると考えられている<ref><pubmed>5499804</pubmed></ref>, <ref><pubmed>978579</pubmed></ref>, <ref><pubmed>8426240</pubmed></ref>。シナプス除去は、神経細胞の活動を抑制すると、抑制されることから、神経活動依存的であることが示されている<ref><pubmed>14946732</pubmed></ref>。アセチルコリンのアンタゴニスト、α-Bungarotoxinを微小領域に投与すると、投与された領域はシナプス除去される。しかし、筋繊維全体にα-Bungarotoxinが投与されると、シナプス競合は起こらない<ref><pubmed>7990923</pubmed></ref>。これらのことから、神経活動依存的に筋肉細胞側からの因子(神経栄養因子など)を奪い合う結果、シナプス競合・除去が起こる可能性や、筋肉側から、シナプスを除去するような因子が放出されていて、活動の高い神経終末は、その毒性から守られているという可能性や、活動の高いシナプスでは、筋肉内でシナプスを保護する機構が活性化され、さらに、それ以外のシナプスを除去する機構も活性化させるという仮説が、考えられている<ref name="ref9" />。 <br>


 
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== 無脊椎動物の神経筋接合部  ==
== 無脊椎動物の神経筋接合部  ==
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'''脊椎動物の神経筋接合部との異なる点'''  
'''脊椎動物の神経筋接合部との異なる点'''  


幼虫の筋肉は単一の多核の細胞であり、脊椎動物のような、多数の筋繊維が1つの機能ユニットとして束になっている状態は見られない。神経伝達物質としてはアセチルコリンではなく、[[グルタミン酸]]が用いられている。脊椎動物の神経筋接合部は筋肉繊維上の比較的中央の決まった場所に神経終末を形成しているが、幼虫の場合、筋肉細胞全体に広がるような神経終末を形成する。また、前述のように、脊椎動物の神経筋接合部においては、神経伝達物質受容体の集積にアグリンが関与しているが、ショウジョウバエでは、ホモログが見つかっていない。  
幼虫の筋肉は単一の多核の細胞であり、脊椎動物のような、多数の筋繊維が1つの機能ユニットとして束になっている状態は見られない。成熟した3齢幼虫のシナプス後部側である筋肉細胞の膜は、複雑な何層にも折りたたまれたSubsynaptic reticurumという特殊な構造となっている。神経伝達物質としてはアセチルコリンではなく、[[グルタミン酸]]が用いられている。脊椎動物の神経筋接合部は筋肉繊維上の比較的中央の決まった場所に神経終末を形成しているが、幼虫の場合、筋肉細胞全体に広がるような神経終末を形成する。また、前述のように、脊椎動物の神経筋接合部においては、神経伝達物質受容体の集積にアグリンが関与しているが、ショウジョウバエでは、ホモログが見つかっていない。  


'''シナプス形成機構に関わる分子機構の同定'''  
'''シナプス形成機構に関わる分子機構の同定'''  
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