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3 バイト除去 、 2013年1月30日 (水)
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<br>小胞は30-60秒で細胞内部にエンドサイトーシスで取り込まれる。その後、細胞外を、色素を含まない溶液で還流し、細胞外膜に結合した色素をwash out する。このような loading 過程を経て示される蛍光量は、30回の刺激時に開口放出した小胞にあたりReadily releasable pool (RRP)のサイズの指標となる。カエルNMJの場合、RRP の小胞数は神経終末内小胞の約15%(12-17%)と報告された<ref><pubmed> 15044806 </pubmed></ref>。
<br>小胞は30-60秒で細胞内部にエンドサイトーシスで取り込まれる。その後、細胞外を、色素を含まない溶液で還流し、細胞外膜に結合した色素をwash out する。このような loading 過程を経て示される蛍光量は、30回の刺激時に開口放出した小胞にあたりReadily releasable pool (RRP)のサイズの指標となる。カエルNMJの場合、RRP の小胞数は神経終末内小胞の約15%(12-17%)と報告された<ref><pubmed> 15044806 </pubmed></ref>。


次に、細胞外色素フリーの状態で放出刺激を与えると、前段階で染められた小胞は細胞膜と融合し、細胞外液への拡散により神経終末の蛍光は減弱する(destaining)。この減弱の程度や時間経過から、開口放出の量と速度が評価できる。蛍光減弱の時間経過は single exponential に近似されることから、Release probability(Pr) は蛍光減弱の時定数に反比例すると考えられる。Prの計算法として、(Recycling pool の小胞数×0.63)/ (37%に蛍光減弱するまでに与えた電気パルス数)で示す方法(<ref><pubmed> 18701072 </pubmed></ref>)
次に、細胞外色素フリーの状態で放出刺激を与えると、前段階で染められた小胞は細胞膜と融合し、細胞外液への拡散により神経終末の蛍光は減弱する(destaining)。この減弱の程度や時間経過から、開口放出の量と速度が評価できる。蛍光減弱の時間経過は single exponential に近似されることから、Release probability(Pr) は蛍光減弱の時定数に反比例すると考えられる。Prの計算法として、(Recycling pool の小胞数×0.63)/ (37%に蛍光減弱するまでに与えた電気パルス数)で示す方法<ref><pubmed> 18701072 </pubmed></ref>
も提起された。より簡易的には、FM1-43の蛍光半減期の逆数<ref><pubmed> 11426227 </pubmed></ref>で示されるケースもある。  
も提起された。より簡易的には、FM1-43の蛍光半減期の逆数<ref><pubmed> 11426227 </pubmed></ref>で示されるケースもある。  


開口放出した顆粒はactive zone の周辺から内部に取り込まれ(endocytosis)、再び放出可能となる(recycle)。このリサイクルにかかる時間は、海馬培養標本では20-30秒、神経筋接合部では60秒と見積もられた。そこで、Recycling pool(=RRP + Reserve pool)の測定は、RRP測定時よりも長い時間電気刺激を与え、色素をロードする事により達成できる(例 10Hz 900 発)。リサイクルされた小胞は、元来小胞があった領域のほぼ全域に拡散し、Core への拡散のみが軽度に少なかった。また、リサイクルした小胞は、初めて刺激を受けたプール同様の放出確率を持つことが報告された<ref><pubmed> 1553547 </pubmed></ref> 。
開口放出した顆粒はactive zone の周辺から内部に取り込まれ(endocytosis)、再び放出可能となる(recycle)。このリサイクルにかかる時間は、海馬培養標本では20-30秒、神経筋接合部では60秒と見積もられた。そこで、Recycling pool(=RRP + Reserve pool)の測定は、RRP測定時よりも長い時間電気刺激を与え、色素をロードする事により達成できる(例 10Hz 900 発)。リサイクルされた小胞は、元来小胞があった領域のほぼ全域に拡散し、Core への拡散のみが軽度に少なかった。また、リサイクルした小胞は、初めて刺激を受けたプール同様の放出確率を持つことが報告された<ref><pubmed> 1553547 </pubmed></ref> 。


FM色素には、炭素鎖数の異なる複数種類の色素がある。これらが小胞膜を染める頻度を比較することにより、融合細孔の開放時間の長短が識別可能となる。FM2-10やFM1-43色素を用い、顆粒膜から離脱する完全融合型(full fusion)と、離脱しない不完全融合型(incomplete fusion)の識別が行われた。<ref><pubmed> 9707119 </pubmed></ref> , <ref><pubmed> 12354398 </pubmed></ref>  
FM色素には、炭素鎖数の異なる複数種類の色素がある。これらが小胞膜を染める頻度を比較することにより、融合細孔の開放時間の長短が識別可能となる。FM2-10やFM1-43色素を用い、顆粒膜から離脱する完全融合型(full fusion)と、離脱しない不完全融合型(incomplete fusion)の識別が行われた<ref><pubmed> 9707119 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 12354398 </pubmed></ref>


開口放出現象の可視化 FM1-43を網膜双極性細胞のシナプス小胞に取り込ませて標識し、TIRF顕微鏡で細胞膜直下(~100nm)の観察を行い、単一小胞の開口放出現象の可視化が報告された<ref><pubmed> 10972279 </pubmed></ref> 。また、下垂体前葉細胞 (lactotrophs) や膵島細胞においても、大型有芯小胞の膜融合に伴い、開口放出部位においてFM1-43蛍光強度の上昇が報告された。 <ref><pubmed> 10953007 </pubmed></ref>
開口放出現象の可視化 FM1-43を網膜双極性細胞のシナプス小胞に取り込ませて標識し、TIRF顕微鏡で細胞膜直下(~100nm)の観察を行い、単一小胞の開口放出現象の可視化が報告された<ref><pubmed> 10972279 </pubmed></ref> 。また、下垂体前葉細胞 (lactotrophs) や膵島細胞においても、大型有芯小胞の膜融合に伴い、開口放出部位においてFM1-43蛍光強度の上昇が報告された <ref><pubmed> 10953007 </pubmed></ref>


<br>分泌小胞の直径測定シナプス小胞から大型有芯小胞に至るまで、小胞の直径計測に有効である <ref><pubmed> 16150799 </pubmed></ref>。水溶性色素(赤色 sulforhodamine B) とFM1-43を細胞外液に同時に与え、開口放出を誘発すると、水溶性色素は小胞内部に進入し、FM1-43は細胞外膜から小胞内膜へ拡散するため、開口放出した小胞が両色素で描出される。この際2光子励起画像を取得し、双方の色素の増加分の比を求めると小胞直径が計算される(直径=6 ΔSRB/ΔFM1-43)。本法は色素濃度やレンズ特性(point-spread function)によらず、シナプス小胞のような光学解像度以下の器官の計測にも応用可能である。  
<br>分泌小胞の直径測定シナプス小胞から大型有芯小胞に至るまで、小胞の直径計測に有効である <ref><pubmed> 16150799 </pubmed></ref>。水溶性色素(赤色 sulforhodamine B) とFM1-43を細胞外液に同時に与え、開口放出を誘発すると、水溶性色素は小胞内部に進入し、FM1-43は細胞外膜から小胞内膜へ拡散するため、開口放出した小胞が両色素で描出される。この際2光子励起画像を取得し、双方の色素の増加分の比を求めると小胞直径が計算される(直径=6 ΔSRB/ΔFM1-43)。本法は色素濃度やレンズ特性(point-spread function)によらず、シナプス小胞のような光学解像度以下の器官の計測にも応用可能である。  
<references/>
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(執筆者:高橋倫子、河西春郎、 担当編集委員:柚崎通介) 
(執筆者:高橋倫子、河西春郎、 担当編集委員:柚崎通介) 
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