「膜融合」の版間の差分

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==細胞内小器官の膜融合==
==細胞内小器官の膜融合==
===Rabエフェクター===
===Rabエフェクター===
小胞が膜と結合する最初の段階を繋留には、多種が存在するRab GTPaseに結合するRab エフェクタータンパク質類が関与していると考えられる。Rabエフェクターには、様々なものがあるが、いずれもSNAREタンパク質と機能的に、または、直接に結合することで、膜の融合を行う。<br>
小胞が膜と結合する最初の段階を繋留には、多種が存在するRab GTPaseに結合するRab エフェクタータンパク質類が関与している場合が多いと考えられる。Rabエフェクターには、様々なものがあるが、いずれもSNAREタンパク質と機能的に、または、直接に結合することで、膜の融合を行う。<br>
RabエフェクターはGTP結合型の活性化Rabに結合する。これらにはp115 (あるいはUso1)やGM130、EEA1、Exocyst complexなどがあり、いずれもGolgiやERあるいは細胞外分泌における膜の融合に関与している。RabエフェクターはSNAREsと結合し、膜融合のために膜をつなぐ。Rabのアミノ酸配列は保存性が高いが、Rabエフェクターのドメイン構造は様々である<ref><pubmed> 21248164 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 19473826 </pubmed></ref>。
RabエフェクターはGTP結合型の活性化Rabに結合する。これらにはp115 (あるいはUso1)やGM130、EEA1、Exocyst complexなどがあり、いずれもGolgiやERあるいは細胞外分泌における膜の融合に関与している。Rabのアミノ酸配列は保存性が高いが、Rabエフェクターのドメイン構造は様々である<ref><pubmed> 21248164 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 19473826 </pubmed></ref>。
===Synatotagmin===
===Synatotagmin===
特に神経伝達物質の放出に伴う膜融合にはSynaptotagminの役割が注目されている。Synaptotagmin Iは65kDaの膜タンパク質で、膜貫通ドメインと細胞質側の2つのC2ドメインの繰り返しの構造(C2AとC2B)を持っている。膜貫通ドメインでシナプス小胞の膜に存在し、C2ドメインでCa2+の濃度を感知する。このCa2+との結合は、C2ドメインに脂質膜結合能を持たせ、細胞膜側の脂質膜のチューブ化あるいは局所的な曲率の増大を引き起こすと考えられている。この局所的な脂質膜の曲率の増大は、膜の融合を効率化すると考えられる<ref><pubmed> 17478680 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 19703397 </pubmed></ref>。
特に神経伝達物質の放出に伴う膜融合にはSynaptotagminの役割が注目されている。Synaptotagmin Iは65kDaの膜タンパク質で、膜貫通ドメインと細胞質側の2つのC2ドメインの繰り返しの構造(C2AとC2B)を持っている。膜貫通ドメインでシナプス小胞の膜に存在し、C2ドメインでCa2+の濃度を感知する。このCa2+との結合は、C2ドメインに脂質膜結合能を持たせ、細胞膜側の脂質膜のチューブ化あるいは局所的な曲率の増大を引き起こすと考えられている。この局所的な脂質膜の曲率の増大は、膜の融合を効率化すると考えられる<ref><pubmed> 17478680 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 19703397 </pubmed></ref>。
===SNARE===
===SNARE===
膜の融合装置の本体と考えられるものは、SNARE(Soluble N-ethylmaleimide sensitive fusion protein attachment protein receptor)タンパク質(SNARE)複合体である。SNAREタンパク質には、多くの場合、標的側と考えられる、多くの場合、大きい方の構造体の脂質膜に存在するt-SNARE/Q-SNARE(Qa-SNARE:Syntaxin1A/1Bなど、QbあるいはQcあるいはQbc-SNARE:SNAP25(synaptosomal-associated protein 25)など、)と小胞側のv-SNARE/R-SNARE(synaptobrevin /VAMP( vesicle-associated membrane protein)など)が存在している。動物細胞では少なくとも35種、酵母で24種の異なるSNAREが存在しており、それぞれがオルガネラ特有のエキソサイトーシスやエンドサイトーシスに関連している。SNAREには様々な大きさと構造があるが、60-70アミノ酸からなるコイルドコイルを含む共通のSNAREモチーフを持っている。SNAREsが小胞を正しいターゲット膜に融合させるというSNARE仮説が提唱されている。<br>
膜の融合装置の本体と考えられるものは、SNARE(Soluble N-ethylmaleimide sensitive fusion protein attachment protein receptor)タンパク質(SNARE)複合体である。SNAREタンパク質には、多くの場合、標的側と考えられる大きい方の構造体の脂質膜に存在するt-SNARE/Q-SNARE(Qa-SNARE:Syntaxin1A/1Bなど、QbあるいはQcあるいはQbc-SNARE:SNAP25(synaptosomal-associated protein 25)など、)と小胞側のv-SNARE/R-SNARE(synaptobrevin /VAMP( vesicle-associated membrane protein)など)が存在している。動物細胞では少なくとも35種、酵母で24種の異なるSNAREが存在しており、それぞれがオルガネラ特有のエキソサイトーシスやエンドサイトーシスに関連している。SNAREには様々な大きさと構造があるが、60-70アミノ酸からなるコイルドコイルを含む共通のSNAREモチーフを持っている。SNAREsが小胞を正しいターゲット膜に融合させるというSNARE仮説が提唱されている。<br>
膜の融合過程においては、繋留の後、小胞側のv-SNARE/R-SNAREと標的側のt-SNARE(Qa-SNARE + Qbc-SNAREまたはQa-SNARE + Qc-SNARE + Qc-SAARE)の組み合わせで安定な4つのヘリックス束を形成し、二つ膜をつなぎとめる。この状態をtrans-complexと呼ぶ。この状態で小胞と標的側の膜が近接した状態となり、脂質二重膜の半融合を経て、膜が融合すると考えられている。膜融合の後のv-SNAREとt-SNAREの膜貫通ドメインが同じ膜上にある状態をcis-complexと呼ぶ。cis-complexのSNAREsにNSF (N-ethylmaleimide-sensitive factor)が結合してSNARE複合体を解離させ、次の融合に備える<ref><pubmed> 16912714 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 18496517 </pubmed></ref>。
膜の融合過程においては、繋留の後、小胞側のv-SNARE/R-SNAREと標的側のt-SNARE(Qa-SNARE + Qbc-SNAREまたはQa-SNARE + Qc-SNARE + Qc-SAARE)の組み合わせで安定な4つのヘリックス束を形成し、二つ膜をつなぎとめる。この状態をtrans-complexと呼ぶ。この状態で小胞と標的側の膜が近接した状態となり、脂質二重膜の半融合を経て、膜が融合すると考えられている。膜融合の後のv-SNAREとt-SNAREの膜貫通ドメインが同じ膜上にある状態をcis-complexと呼ぶ。cis-complexのSNAREsにNSF (N-ethylmaleimide-sensitive factor)が結合してSNARE複合体を解離させ、次の融合に備える<ref><pubmed> 16912714 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 18496517 </pubmed></ref>。
===Atlastin===
===Atlastin===
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==細胞間の細胞融合==
==細胞間の細胞融合==
細胞間の細胞融合には、受精時に生じるもの、筋肉細胞の多核化過程で生じるものがある。これらの膜融合過程におけるSNAREに相当する分子実体は不明である。分子実体の明らかになっている内在性の機構によって生じる細胞融合には、次のようなものがある。線虫(Caenorhabditis elegans)のanchor cellfusion failure-1 (AFF‑1) と epithelial fusion failure-1(EFF‑1)は、細胞をつなぎとめ、神経細胞の回路の形成に関与する細胞融合を媒介すると考えられている<ref><pubmed> 21436398 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 20448153 </pubmed></ref>。Syncytinは胎盤に発現しており、胎盤の外側を取り巻く合胞体栄養膜を形成する際の栄養膜細胞同士の融合を担う。Syncytinはヒト内在性のレトロウイルスの産生タンパク質である<ref><pubmed> 15644441 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 22109522 </pubmed></ref>。
細胞間の細胞融合には、受精時に生じるもの、筋肉細胞の多核化過程で生じるものが著名であるが、これらの膜融合過程におけるSNAREに相当する分子実体は不明である。分子実体の明らかになっている内在性の機構によって生じる細胞融合には、次のようなものがある。線虫(Caenorhabditis elegans)のanchor cellfusion failure-1 (AFF‑1) と epithelial fusion failure-1(EFF‑1)は、細胞をつなぎとめ、神経細胞の回路の形成に関与する細胞融合を媒介すると考えられている<ref><pubmed> 21436398 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 20448153 </pubmed></ref>。Syncytinは胎盤に発現しており、胎盤の外側を取り巻く合胞体栄養膜を形成する際の栄養膜細胞同士の融合を担う。Syncytinはヒト内在性のレトロウイルスの産生タンパク質である<ref><pubmed> 15644441 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 22109522 </pubmed></ref>。




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