「基底膜」の版間の差分

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== 中枢神経系における基底膜の分布  ==
== 中枢神経系における基底膜の分布  ==


 [[wikipedia:ja: 神経管|神経管]](neural tube)は、胚盤背側の外胚葉が溝状に陥没すると同時に溝の両側が伸び出し左右が接触・融合することによって形成される。この過程を通じて外胚葉の直下や神経管の周囲には連続した基底膜が観察される<ref><pubmed> 3332260 </pubmed></ref>。
 [[wikipedia:ja: 神経管|神経管]](neural tube)は、胚盤背側の外胚葉が溝状に陥没すると同時に溝の両側が伸び出し左右が接触・融合することによって形成される。この過程を通じて外胚葉の直下や神経管の周囲には連続した基底膜が観察される<ref><pubmed> 3332260 </pubmed></ref>。  


 成熟した中枢神経組織の実質最外層では、[[wikipedia:ja: アストログリア|アストログリア]]の突起(astrocyte endfeet)が層をなし、限界膠(glial limitation)を形成する。基底膜はこのアストロサイトの突起の層を裏打ちするように認められ、神経実質と[[wikipedia:ja: 軟膜|軟膜]]とを隔てている (軟膜基底膜:pial basement membrane) <ref name="ref5"><pubmed> 19779720 </pubmed></ref>。  
 成熟した中枢神経組織の実質最外層では、[[wikipedia:ja: アストログリア|アストログリア]]の突起(astrocyte endfeet)が層をなし、限界膠(glial limitation)を形成する。基底膜はこのアストロサイトの突起の層を裏打ちするように認められ、神経実質と[[wikipedia:ja: 軟膜|軟膜]]とを隔てている (軟膜基底膜:pial basement membrane) <ref name="ref5"><pubmed> 19779720 </pubmed></ref>。  
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 IV型コラーゲン (Type IV collagen):IV型コラーゲンは非線維性であり、基底膜の骨格をなす網目状構造の形成に関与している。他のコラーゲンと同様に、α鎖と呼ばれるポリペプチド鎖が3本集まり、3重らせん構造を形成している。IV型コラーゲンには6種類のα鎖が存在し、各アイソフォームはその組み合わせに応じて[α1(IV)]<sub>2</sub>α2(IV)のように表記される。脳実質基底膜 (parenchymal basement membrane)には、[α1(IV)]<sub>2</sub>α2(IV)と[α5(IV)]<sub>2</sub>α6(IV) の2種類が共発現しているが、血管内皮基底膜 (endothelial basement membrane)では[α1(IV)]<sub>2</sub>α2(IV)のみが発現する<ref name="ref8"><pubmed> 12164337 </pubmed></ref>。脈絡叢の基底膜では、毛細血管基底膜には[α1(IV)]<sub>2</sub>α2(IV)が、脈絡叢上皮基底膜にはα3(IV)α4(IV)α5(IV)で構成されたIV型コラーゲンが存在している<ref name="ref8" />。フラクトンにはIV型コラーゲンが含まれているが、各α鎖の分布などは明らかになっていない<ref name="ref9"><pubmed> 17569787 </pubmed></ref>。  
 IV型コラーゲン (Type IV collagen):IV型コラーゲンは非線維性であり、基底膜の骨格をなす網目状構造の形成に関与している。他のコラーゲンと同様に、α鎖と呼ばれるポリペプチド鎖が3本集まり、3重らせん構造を形成している。IV型コラーゲンには6種類のα鎖が存在し、各アイソフォームはその組み合わせに応じて[α1(IV)]<sub>2</sub>α2(IV)のように表記される。脳実質基底膜 (parenchymal basement membrane)には、[α1(IV)]<sub>2</sub>α2(IV)と[α5(IV)]<sub>2</sub>α6(IV) の2種類が共発現しているが、血管内皮基底膜 (endothelial basement membrane)では[α1(IV)]<sub>2</sub>α2(IV)のみが発現する<ref name="ref8"><pubmed> 12164337 </pubmed></ref>。脈絡叢の基底膜では、毛細血管基底膜には[α1(IV)]<sub>2</sub>α2(IV)が、脈絡叢上皮基底膜にはα3(IV)α4(IV)α5(IV)で構成されたIV型コラーゲンが存在している<ref name="ref8" />。フラクトンにはIV型コラーゲンが含まれているが、各α鎖の分布などは明らかになっていない<ref name="ref9"><pubmed> 17569787 </pubmed></ref>。  


 ラミニン(laminin):ラミニンは、α、β、γの3つの鎖からなる3量体糖タンパク質で、それぞれの鎖のC末の3重らせんドメインで会合した十字架構造をしている<ref><pubmed> 19693542 </pubmed></ref>。α鎖が5種類、β鎖が3種類、γ鎖が3種類存在し、それらの組み合わせによって、例えばα1、β1、γ1ならばラミニン-111、α5、β2、γ1ならばラミニン-521のように命名されている。現在までに19種類の組み合わせが報告されている。α、β、γの鎖のなかで、α鎖が細胞の接着に関わる主要な鎖としてラミニンの機能に大きく関わっている。血管内皮基底膜には、ラミニン-411と-511が存在している。また、脳実質基底膜 (parenchymal basement membrane)には、ラミニン-111とラミニン-211が共発現する。血管が脳実質内に侵入し、2つの基底膜が融合した部分では、ラミニン-211、-411、-511が共発現する<ref name="ref5" />。脈絡叢上皮基底膜にはラミニン-511が存在している。一方、脈絡叢の毛細血管基底膜はラミニン-411である<ref name="ref7" />。血管内皮基底膜を除く各基底膜では、同時にβ2およびγ3鎖の発現も見られることから、ラミニン-421/-423/-521/-523が同時に含まれることが予想される<ref name="ref7" /> 。フラクトンには、β1とγ1鎖が存在しているが、これらと会合するα鎖は明らかになっていない<ref name="ref9" />。  
 ラミニン(laminin):ラミニンは、α、β、γの3つの鎖からなる十字架構造をした糖タンパク質である<ref><pubmed> 19693542 </pubmed></ref>。α鎖が5種類、β鎖が3種類、γ鎖が3種類存在し、それらの組み合わせによって、例えばα1、β1、γ1ならばラミニン-111、α5、β2、γ1ならばラミニン-521のように命名されている。現在までに19種類の組み合わせが報告されている。α、β、γの鎖のなかで、α鎖が細胞の接着に関わる主要な鎖としてラミニンの機能に大きく関わっている。血管内皮基底膜には、ラミニン-411と-511が存在している。また、脳実質基底膜 (parenchymal basement membrane)には、ラミニン-111とラミニン-211が共発現する。血管が脳実質内に侵入し、2つの基底膜が融合した部分では、ラミニン-211、-411、-511が共発現する<ref name="ref5" />。脈絡叢上皮基底膜にはラミニン-511が存在している。一方、脈絡叢の毛細血管基底膜はラミニン-411である<ref name="ref7" />。血管内皮基底膜を除く各基底膜では、同時にβ2およびγ3鎖の発現も見られることから、ラミニン-421/-423/-521/-523が同時に含まれることが予想される<ref name="ref7" /> 。フラクトンには、β1とγ1鎖が存在しているが、これらと会合するα鎖は明らかになっていない<ref name="ref9" />。  


 ニドゲン (nidogen):ニドゲンはエンタクチン(entactin)とも呼ばれ、2種類のアイソフォーム(nidogen-1 and -2)が知られている。どちらもラミニンγ1鎖に結合し、ラミニンをIV型コラーゲンに結びつけることで基底膜の形成と維持に関与している<ref name="ref11"><pubmed> 18219668 </pubmed></ref>。どちらも中枢神経組織内におけるほとんどの基底膜に共発現している<ref name="ref7" /> <ref name="ref11" /> <ref name="ref12"><pubmed> 12122064 </pubmed></ref>。フラクトンには、ニドゲン-1は存在しているが、ニドゲン-2については明らかになっていない<ref name="ref9" />。  
 ニドゲン (nidogen):ニドゲンはエンタクチン(entactin)とも呼ばれ、2種類のアイソフォーム(nidogen-1 and -2)が知られている。どちらもラミニンγ1鎖に結合し、ラミニンをIV型コラーゲンに結びつけることで基底膜の形成と維持に関与している<ref name="ref11"><pubmed> 18219668 </pubmed></ref>。どちらも中枢神経組織内におけるほとんどの基底膜に共発現している<ref name="ref7" /> <ref name="ref11" /> <ref name="ref12"><pubmed> 12122064 </pubmed></ref>。フラクトンには、ニドゲン-1は存在しているが、ニドゲン-2については明らかになっていない<ref name="ref9" />。  
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