「コンドロイチン硫酸プロテオグリカン」の版間の差分

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 このような多様な機能はCSが構造多様性を示すこと関係があるかもしれない。CSの二糖ユニット(GlcA-GalNAc)の上の様々な位置に硫酸基の負荷が行われる結果、多様なユニットが形成されることが知られている。それらはアルファベットを冠してO-, A-, B-, C-, D-, E-unitなどと呼ばれ、これらのユニットが組み合わされてCS鎖の構造多様性が生み出される[O-unit (GlcA-GalNAc), A-unit (GlcA-GalNAc4S), C-unit (GlcA-GalNAc6S), D-unit (GlcA2S-GalNAc6S), E-unit (GlcA-GalNAc4S6S)]。イズロン酸(IdoA:GlcAのC5位のエピマー)とGalNAcの二糖が作るユニットをB-unitと呼ぶ[B-unit (IdoA-GalNAc)]。(図1)  
 このような多様な機能はCSが構造多様性を示すこと関係があるかもしれない。CSの二糖ユニット(GlcA-GalNAc)の上の様々な位置に硫酸基の負荷が行われる結果、多様なユニットが形成されることが知られている。それらはアルファベットを冠してO-, A-, B-, C-, D-, E-unitなどと呼ばれ、これらのユニットが組み合わされてCS鎖の構造多様性が生み出される[O-unit (GlcA-GalNAc), A-unit (GlcA-GalNAc4S), C-unit (GlcA-GalNAc6S), D-unit (GlcA2S-GalNAc6S), E-unit (GlcA-GalNAc4S6S)]。イズロン酸(IdoA:GlcAのC5位のエピマー)とGalNAcの二糖が作るユニットをB-unitと呼ぶ[B-unit (IdoA-GalNAc)]。(図1)  


 CSのユニット組成の違いが神経突起の伸長や、大脳皮質の層形成に異なった効果を有することが報告されているが、どの様なレベルの構造多様性がどの様に神経細胞の振る舞いに影響を与えているかという機構については不明の点が多い。近年の研究は細胞が特定のCSの構造を識別していることを示唆している(Clement et al., 1998; Nadanaka et al., 1998; Oohira et al., 2000; Ueoka et al., 2000; Gilbert et al., 2005; Properzi et al., 2005)。CS結合タンパク質が8糖(4 units)や10糖(5 units)の長さにわたる特定のユニット配列を特異的に認識することが報告されており、従来に想定されていたようなCS鎖全体の長さや負の荷電量が非特異的に影響を与えているのではないと考えられるようになった(Blanchard et al., 2007; Deepa et al., 2007a; Deepa et al., 2007b; Pothacharoen et al., 2007; Numakura et al., 2010)。これらの報告は細胞表面のCSの構造多様性を認識する受容体の探索という分野を導くこととなった。近年報告されたtransmembrane protein tyrosine phosphatase (PTPσ)とcontactin-1はCS特異的な受容体の候補分子として注目を集めている(Mikami et al., 2009; Shen et al., 2009; Coles et al., 2011)。  
 CSのユニット組成の違いが神経突起の伸長や、大脳皮質の層形成に異なった効果を有することが報告されているが、どの様なレベルの構造多様性がどの様に神経細胞の振る舞いに影響を与えているかという機構については不明の点が多い。近年の研究は細胞が特定のCSの構造を識別していることを示唆している(Clement et al., 1998<ref name=ref21 />;  
Nadanaka et al., 1998<ref name=ref25 />;  
Oohira et al., 2000<ref name=ref31><pubmed>10640392</pubmed></ref>;  
Ueoka et al., 2000<ref name=ref32><pubmed>10978312</pubmed></ref>;  
Gilbert et al., 2005<ref name=ref33><pubmed></pubmed></ref>;  
Properzi et al., 2005<ref name=ref34><pubmed>15673437</pubmed></ref>)。CS結合タンパク質が8糖(4 units)や10糖(5 units)の長さにわたる特定のユニット配列を特異的に認識することが報告されており、従来に想定されていたようなCS鎖全体の長さや負の荷電量が非特異的に影響を与えているのではないと考えられるようになった
(Blanchard et al., 2007<ref name=ref35><pubmed></pubmed></ref>;  
Deepa et al., 2007a<ref name=ref36><pubmed>17317718</pubmed></ref>;  
Deepa et al., 2007b<ref name=ref37><pubmed>17284053</pubmed></ref>;  
Pothacharoen et al., 2007<ref name=ref38><pubmed>17884822</pubmed></ref>;  
Numakura et al., 2010<ref name=ref39><pubmed>20467806</pubmed></ref>)。これらの報告は細胞表面のCSの構造多様性を認識する受容体の探索という分野を導くこととなった。近年報告されたtransmembrane protein tyrosine phosphatase (PTPσ)とcontactin-1はCS特異的な受容体の候補分子として注目を集めている
(Mikami et al., 2009<ref name=ref40><pubmed></pubmed></ref>;  
Shen et al., 2009<ref name=ref41><pubmed></pubmed></ref>;  
Coles et al., 2011<ref name=ref42><pubmed></pubmed></ref>)。  


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==