「シナプシン」の版間の差分

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 さらに、海馬興奮性神経終末の電子線トモグラフィーを用いた三次元再構成によると、シナプス小胞同士を繋ぐ短いフィラメントや、シナプス小胞と[[シナプス前膜]]を繋ぐ長いフィラメントが観察され、特に前者はその大きさからシナプシンではないかと考えられていたが、野生型のみならず、シナプシンI/II/III TKOでも観察されたことから、シナプシン以外の蛋白分子もこれら構造物を構成している可能性がある(Siksou, 2007)。
 さらに、海馬興奮性神経終末の電子線トモグラフィーを用いた三次元再構成によると、シナプス小胞同士を繋ぐ短いフィラメントや、シナプス小胞と[[シナプス前膜]]を繋ぐ長いフィラメントが観察され、特に前者はその大きさからシナプシンではないかと考えられていたが、野生型のみならず、シナプシンI/II/III TKOでも観察されたことから、シナプシン以外の蛋白分子もこれら構造物を構成している可能性がある(Siksou, 2007)。


シナプシン機能のまとめ
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1.シナプス小胞の可動性を制限することにより、集合体としての予備のプールの構造を維持・安定化する。
|+表. シナプシン機能のまとめ
2.シナプス小胞の予備のプールを維持することによって、連続刺激の際に放出へと動員できるシナプス小胞の供給を可能とし、シナプス抑圧を限定的なものとする。
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3.これらの機能は、シナプシンファミリー、特に相補的な働きをするIとIIを含めた全体として考えるべきものであろう。
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4.シナプス小胞の固定化・集合化には、おそらく、ドメインCを介するホモ二量体、ヘテロ二量体の形成により、シナプス小胞を2価性に結合し架橋することが役立っている。
# シナプス小胞の可動性を制限することにより、集合体としての予備のプールの構造を維持・安定化する。
5.シナプシンI/II/III TKOで障害されたシナプシンの機能を単独で代償できるのがシナプシンIIa のみであることから、各アイソフォームの中では、シナプシンIIaが一義的な役割を果たすものと考えられる。
# シナプス小胞の予備のプールを維持することによって、連続刺激の際に放出へと動員できるシナプス小胞の供給を可能とし、シナプス抑圧を限定的なものとする。
6.刺激依存的なシナプシンのリン酸化・脱リン酸化は、シナプシンによるシナプス小胞の可動性の制限、集合体としての予備のプールを安定化させる働きを、さらに調節するものと考えられる。すべてのアイソフォームに共通のsite 1のリン酸化に加えて、シナプシンIに特異的なsite 2/3やsite 4/5、site 6などのリン酸化もこれら修飾に様々な関与をしている可能性がある。
# これらの機能は、シナプシンファミリー、特に相補的な働きをするIとIIを含めた全体として考えるべきものであろう。
7.シナプス小胞の架橋・固定化には、シナプシンのみならず、それ以外の蛋白質も関与している可能性がある。
# シナプス小胞の固定化・集合化には、おそらく、ドメインCを介するホモ二量体、ヘテロ二量体の形成により、シナプス小胞を2価性に結合し架橋することが役立っている。
# シナプシンI/II/III TKOで障害されたシナプシンの機能を単独で代償できるのがシナプシンIIa のみであることから、各アイソフォームの中では、シナプシンIIaが一義的な役割を果たすものと考えられる。
# 刺激依存的なシナプシンのリン酸化・脱リン酸化は、シナプシンによるシナプス小胞の可動性の制限、集合体としての予備のプールを安定化させる働きを、さらに調節するものと考えられる。すべてのアイソフォームに共通のsite 1のリン酸化に加えて、シナプシンIに特異的なsite 2/3やsite 4/5、site 6などのリン酸化もこれら修飾に様々な関与をしている可能性がある。
# シナプス小胞の架橋・固定化には、シナプシンのみならず、それ以外の蛋白質も関与している可能性がある。
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== 関連語 ==
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