「カプグラ症候群」の版間の差分

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 1979年、Alexander, Stuss & Benson<ref name=ref1><pubmed>571979</pubmed></ref>は、カプグラ症候群が[[重複記憶錯誤]](Reduplicative Paramnesia)の一型であり、二つの症状の神経心理学的、脳病理学的基盤が同一であると主張した。重複記憶錯誤は「今いる場所ないし人物は確かに本物であるが、同じ場所ないし人物がもう一つないしそれ以上存在している」という確信で、一般的には器質性疾患において認められ、神経学的背景として右半球損傷、前頭葉損傷が指摘されている。カプグラ症候群を認める症例においても右半球や前頭葉の損傷が関連するとされているが、重複記憶錯誤ほど明確ではない。
 1979年、Alexander, Stuss & Benson<ref name=ref1><pubmed>571979</pubmed></ref>は、カプグラ症候群が[[重複記憶錯誤]](Reduplicative Paramnesia)の一型であり、二つの症状の神経心理学的、脳病理学的基盤が同一であると主張した。重複記憶錯誤は「今いる場所ないし人物は確かに本物であるが、同じ場所ないし人物がもう一つないしそれ以上存在している」という確信で、一般的には器質性疾患において認められ、神経学的背景として右半球損傷、前頭葉損傷が指摘されている。カプグラ症候群を認める症例においても右半球や前頭葉の損傷が関連するとされているが、重複記憶錯誤ほど明確ではない。


 重複記憶錯誤では、患者は非現実的で矛盾した内容を確信的に語るため、背景に何らかの思考障害や妄想性障害が想定されることがある。濱中<ref name=ref22>'''濱中淑彦'''<br>記憶錯誤・作話と妄想のあいだ <br>「幻覚と妄想の臨床」、P135-168、医学書院、東京、1992. M61)</ref>によれば、カプグラ症候群ではしばしば入れ替わった対象に対して猜疑的、被害的である一方、重複記憶錯誤では対象の重複に対しむしろ肯定的な態度を示し、多幸的ないし無関心な傾向がみられる場合が多い。また、カプグラ症候群では入れ替わりの対象は原則として人物であり、場所のみを対象とする報告がない一方で、重複記憶錯誤では人物の重複よりむしろ場所の重複が主であると言う差異がある。
 重複記憶錯誤では、患者は非現実的で矛盾した内容を確信的に語るため、背景に何らかの思考障害や妄想性障害が想定されることがある。濱中<ref name=ref22>'''濱中淑彦'''<br>記憶錯誤・作話と妄想のあいだ <br>「幻覚と妄想の臨床」、P135-168、医学書院、東京、1992. M61)</ref>によれば、カプグラ症候群ではしばしば入れ替わった対象に対して猜疑的、被害的である一方、重複記憶錯誤では対象の重複に対しむしろ肯定的な態度を示し、多幸的ないし無関心な傾向がみられる場合が多い。また、カプグラ症候群では入れ替わりの対象は原則として人物であり、場所のみを対象とする報告がない一方で、重複記憶錯誤では人物の重複よりむしろ場所の重複が主であると言う差異がある。両者を同一の現象と見なすかどうかについては、未だ学派により意見の分かれるところである。


== 相貌失認との関連 ==
== 相貌失認との関連 ==
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