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英:alcoholism 独:Alkoholkrankheit 仏:alcoolisme | 英:alcoholism 独:Alkoholkrankheit 仏:alcoolisme | ||
{{box|text= アルコール依存症は、飲酒の制御困難を本質的部分とする。身体面への影響、抑うつや自殺リスクを上げるなどの精神面への影響、家族関係など周囲の人々への影響、飲酒運転等の社会への影響など、多岐にわたる問題に繋がる。診断はICD-10またはDSM-5にてなされる。DSM- | {{box|text= アルコール依存症は、飲酒の制御困難を本質的部分とする。身体面への影響、抑うつや自殺リスクを上げるなどの精神面への影響、家族関係など周囲の人々への影響、飲酒運転等の社会への影響など、多岐にわたる問題に繋がる。診断はICD-10またはDSM-5にてなされる。DSM-5では「アルコール依存症」という分類はなくなり、基準となる症状の項目数により「アルコール使用障害」の診断の中で重症度を判定する仕組みとなっている。アルコール依存症の成因については、遺伝要因と環境要因の相互作用が考えられ、アルコール依存症の中間表現型を規定する遺伝子が検索されている。また、脳内報酬系等の神経回路の変化が、物質使用障害における使用制御の困難を生み出す基盤と考えられている。治療は断酒を目標とした集団療法や様々な個人療法が認められているが、一方であくまで断酒を最終目標としながらも治療への参加を促すため、減酒を当初の目標とすることもある。}} | ||
==物質依存、概念の歴史== | ==物質依存、概念の歴史== | ||
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古代には、主に[[wj:ビール|ビール]]、[[wj:ワイン|ワイン]]などの[[wj:醸造酒|醸造酒]]のみしか普及しておらず、そのアルコール濃度の上限は約十数%程度であった。しかし、中性〜近代にかけて[[wj:ヨーロッパ|ヨーロッパ]]諸国を中心に、よりアルコール濃度が高く携帯性、保存性の優れる[[wj:ラム酒|ラム酒]]や[[wj:ジン|ジン]]・[[wj:ウイスキー|ウイスキー]]などの[[wj:蒸留酒|蒸留酒]]が普及すると、[[アルコール乱用]]・依存がさらに社会問題化してくるようになった<ref>'''中山秀紀、樋口進'''<br>依存症・衝動制御障害の治療「物質依存の概念」<br>''中山書店''、東京、p2–13</ref>。 | 古代には、主に[[wj:ビール|ビール]]、[[wj:ワイン|ワイン]]などの[[wj:醸造酒|醸造酒]]のみしか普及しておらず、そのアルコール濃度の上限は約十数%程度であった。しかし、中性〜近代にかけて[[wj:ヨーロッパ|ヨーロッパ]]諸国を中心に、よりアルコール濃度が高く携帯性、保存性の優れる[[wj:ラム酒|ラム酒]]や[[wj:ジン|ジン]]・[[wj:ウイスキー|ウイスキー]]などの[[wj:蒸留酒|蒸留酒]]が普及すると、[[アルコール乱用]]・依存がさらに社会問題化してくるようになった<ref>'''中山秀紀、樋口進'''<br>依存症・衝動制御障害の治療「物質依存の概念」<br>''中山書店''、東京、p2–13</ref>。 | ||
現在の物質依存に相当する医学用語は、1820年頃から[[アヘン]]に[[poisoning]](中毒)が用いられるようになり、その後[[コカイン]] | 現在の物質依存に相当する医学用語は、1820年頃から[[アヘン]]に[[poisoning]](中毒)が用いられるようになり、その後[[コカイン]]やアルコールにも用いられるようになった。1880年頃からhabit([[習慣]])、〜ism(症)が、1920年頃から[[addiction]]([[嗜癖]])へと変遷していった。世界的な診断基準としては、1957年には[[wj:世界保健機関|世界保健機関]](World Health Organization: WHO)は、addiction(嗜癖)と[[habituation]]([[習慣性]])を学術用語として定義した。Addictionは「著明な[[身体依存]]」「薬物摂取の渇望」「大きな社会的弊害」の3条件を満たす薬物の使用とされ、habituationはこれより程度の軽い薬物の習慣的使用とされた。しかし、身体依存がなくとも[[精神依存]]により薬物摂取への欲求、渇望が起こりうることが判明し、1964年にWHOによってそれまでのaddictionやhabituationに代わって、dependence(依存)の用語が提唱され、現在に至る<ref>'''柳田知司'''<br>動物における薬物依存研究のあゆみ<br>''脳と精神の医学'' 7(2).137–142.1996</ref>。 | ||
==症状== | ==症状== | ||
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==診断== | ==診断== | ||
現在、世界的に見て、アルコール依存症は2通りの診断体系、[[ICD-10]]と[[DSM-5]]を用いて同定され得る。それぞれ異なる診断基準を提示している。 | |||
=== 国際疾病分類第10版 === | === 国際疾病分類第10版 === | ||
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=== 精神障害の診断と統計マニュアル第5版 === | === 精神障害の診断と統計マニュアル第5版 === | ||
一方、アメリカ精神医学会の[[ | 一方、アメリカ精神医学会の[[精神障害の診断と統計マニュアル第5版]]([[DSM-5]])では、依存という名称が無くなり、前版の[[DSM-Ⅳ–TR]]までで定義されていたアルコール依存症という概念は「アルコール使用障害」のカテゴリーに含められることとなった。診断基準11項目('''表2''')のうち2〜3項目が該当すれば軽症、4〜5項目が該当すれば中等症、6項目以上が該当すれば重症とするアルコール使用障害の程度の重み付けがあるのみであり、依存症という診断概念そのものは定義していない<ref>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders<br>''DSM-5-Alcohol Related Disorders''. APA. Washington DC, 2013, p490-503</ref>。 | ||
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|+ | |+ 表2.DSM-5によるアルコール使用障害の診断基準 | ||
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