「ドリフト拡散モデル」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
59行目: 59行目:
<math>\frac{\pi \sigma^2}{a^2} e^{-zv/\sigma^2} \sum_{k=1}^\infty k \sin (\frac{\pi z k}{a}) e^{-\frac{1}{2} (v^2 / \sigma^2 + \pi^2 k^2 \sigma^2/a^2)t} </math>
<math>\frac{\pi \sigma^2}{a^2} e^{-zv/\sigma^2} \sum_{k=1}^\infty k \sin (\frac{\pi z k}{a}) e^{-\frac{1}{2} (v^2 / \sigma^2 + \pi^2 k^2 \sigma^2/a^2)t} </math>


で与えられる。境界<math>a</math>に到達し反応Aが起こり,かつその反応時間が<math>t</math>となる確率密度は,上の式において<math>v</math>を<math>-v</math>で, <math>z</math> を<math>a -z</math>で置き換えることで得られる。図Xの上下の曲線はこれらの式により得られた条件付きの確率密度関数である。シミュレーションにより得た反応時間のヒストグラムもサンプルが増えるにつれてこの関数に近づいていくことがわかる。
で与えられる。境界<math>a</math>に到達し反応Aが起こり,かつその反応時間が<math>t</math>となる確率密度は,上の式において<math>v</math>を<math>-v</math>で, <math>z</math> を<math>a -z</math>で置き換えることで得られる。図2の上下の曲線はこれらの式により得られた条件付きの確率密度関数である。シミュレーションにより得た反応時間のヒストグラムもサンプルが増えるにつれてこの関数に近づいていくことがわかる。


==モデルフィッティング==
==モデルフィッティング==
上記のように解析的に得られる反応時間の分布が実際のデータに近づくようにパラメータを調整することで,明示的にドリフト拡散過程をシミュレートせずともモデルのパラメータを推定することができる。また,複数ある候補のモデルからデータをよりよく説明するモデルを選択することも可能となる。パラメータの推定やモデル選択をする作業を総称してモデルフィッティングと呼ぶ。
上記のように解析的に得られる反応時間の分布が実際のデータに近づくようにパラメータを調整することで,明示的にドリフト拡散過程をシミュレートせずともモデルのパラメータを推定することができる。また,複数ある候補のモデルからデータをよりよく説明するモデルを選択することも可能となる。パラメータの推定やモデル選択をする作業を総称してモデルフィッティングと呼ぶ。


実験で収集された反応データに対して,モデルフィッティングをする方法として,<math>\chi^{2}</math>最小化,最尤法,重み付き最小二乗法,ベイズ推定等がある<ref><pubmed> 12412886</pubmed></ref>。モデルフィッティング用のソフトウェアとしては,以下がある。
実験で収集された反応データに対して,モデルフィッティングをする方法として,<math>\chi^{2}</math>最小化,最尤法,重み付き最小二乗法,ベイズ推定等がある<ref><pubmed> 12412886</pubmed></ref>。モデルフィッティング用のソフトウェアとしては,以下がある。


* Fast-dm: Voss & Voss (2007)が開発したWindowsで動作するソフト(最尤推定,Kolmogorov-Smirnov,<math>\chi^{2}</math>最小化などの方法が可能)
* Fast-dm: Voss & Voss (2007)が開発したWindowsで動作するソフトウェア。最尤推定,Kolmogorov-Smirnov,<math>\chi^{2}</math>最小化などの方法が可能である。
* DMAT: Vandekerckhove & Tuerlinckx (2008)が開発した,ドリフト拡散モデル用MATLABツールボックス。
* DMAT<ref><pubmed>18411528</pubmed></ref>: Vandekerckhove & Tuerlinckx (2008)が開発した,ドリフト拡散モデル用MATLABツールボックス。
* EZ2: Wagenmakers, Van Der Maas, & Grasman(2007)によって提案されたドリフト拡散モデルから施行間変動の推定を除いたシンプルなEZ拡散モデルを用いてモデルフィッティングするRパッケージ
* EZ2<ref><pubmed>17546727</pubmed></ref>: Wagenmakers, Van Der Maas, & Grasman(2007)によって提案されたドリフト拡散モデルから試行間変動の推定を除いたシンプルなEZ拡散モデルを用いてモデルフィッティングするRパッケージ。
* HDDM: Wiecki, Sofer, & Frank(2013)が開発した,ドリフト拡散モデルを階層ベイズ推定するPythonパッケージ
* HDDM<ref><pubmed>23935581</pubmed></ref>: Wiecki, Sofer, & Frank(2013)が開発した,ドリフト拡散モデルを階層ベイズ推定するPythonパッケージ。
* hBayesDM: Ahn, Haines, & Zhang(2017)が開発した,意思決定課題に対して階層ベイズモデリングを行うRパッケージ。ドリフト拡散モデルを使ったモデルフィッティングができる関数が含まれている。
* hBayesDM<ref><pubmed>29601060</pubmed></ref>: Ahn, Haines, & Zhang(2017)が開発した,意思決定課題に対して階層ベイズモデリングを行うRパッケージ。
* rtdists: ドリフト拡散モデルをはじめとする反応時間のモデリングに有用な関数が含められたRパッケージ。
* rtdists: ドリフト拡散モデルをはじめとする反応時間のモデリングに有用な関数が含められたRパッケージ。


135

回編集