「Ras homolog enriched in brain」の版間の差分

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 Rhebのエフェクタータンパク質としては[[mTORC1]]が代表的である。GTP結合型RhebはmTORと直接結合し活性化させる<ref name=Heard2014><pubmed>24863881</pubmed></ref>。また、活性型Rhebは[[FK506結合タンパク質38]] ([[FK506 binding protein 38]]; [[FKBP38]])との結合、あるいは[[ホスホリパーゼD1]](PLD1)との結合を通じてもmTORC1の活性化を促進していると考えられている<ref name=Bai2007><pubmed>17991864</pubmed></ref><ref name=Heard2014><pubmed>24863881</pubmed></ref>。mTORは[[リボソームタンパク質S6キナーゼ]]([[S6K]])をリン酸化し、活性化する。S6Kは活性化することでタンパク質の翻訳を促進する。また、mTORは[[eukaryotic translation initiation factor 4E-binding protein 1]] ([[4E-BP1]]または[[EIF4EBP1]])を[[リン酸化]]することで不活性化する。4E-BP1はタンパク質[[翻訳]]開始因子[[eIF4F]]のネガティブレギュレーターであるため、4E-BP1の不活性化はタンパク質の合成を促進することになる。これらの機能を通じてmTORは細胞の成長や増殖、タンパク質合成を促進することが知られているが('''図2''')、Rhebの活性化はmTORC1活性化を通じて細胞の増殖などを引き起こすことが明らかとなっている。
 Rhebのエフェクタータンパク質としては[[mTORC1]]が代表的である。GTP結合型RhebはmTORと直接結合し活性化させる<ref name=Heard2014><pubmed>24863881</pubmed></ref>。また、活性型Rhebは[[FK506結合タンパク質38]] ([[FK506 binding protein 38]]; [[FKBP38]])との結合、あるいは[[ホスホリパーゼD1]](PLD1)との結合を通じてもmTORC1の活性化を促進していると考えられている<ref name=Bai2007><pubmed>17991864</pubmed></ref><ref name=Heard2014><pubmed>24863881</pubmed></ref>。mTORは[[リボソームタンパク質S6キナーゼ]]([[S6K]])をリン酸化し、活性化する。S6Kは活性化することでタンパク質の翻訳を促進する。また、mTORは[[eukaryotic translation initiation factor 4E-binding protein 1]] ([[4E-BP1]]または[[EIF4EBP1]])を[[リン酸化]]することで不活性化する。4E-BP1はタンパク質[[翻訳]]開始因子[[eIF4F]]のネガティブレギュレーターであるため、4E-BP1の不活性化はタンパク質の合成を促進することになる。これらの機能を通じてmTORは細胞の成長や増殖、タンパク質合成を促進することが知られているが('''図2''')、Rhebの活性化はmTORC1活性化を通じて細胞の増殖などを引き起こすことが明らかとなっている。


 mTORC1以外にもRhebにより制御されるシグナルタンパク質は幾つか知られている。例として、[[p21活性化キナーゼ]] ([[p21 activated kinase 2]]; [[PAK2]])は、活性化型Rheb依存的かつmTORC1非依存的にリン酸化を受け活性化される<ref name=Alves2015><pubmed>26412398</pubmed></ref>。また、[[シンテニン]]]([[Syntenin]])もRhebと結合することが明らかとなっている。シンテニンは[[PDZドメイン]]を有する[[アダプタータンパク質]]で、様々なシグナルカスケード因子と結合しシグナルの活性を調節することが知られている。シンテニンはGDP結合型Rhebとより結合しやすく、シンテニンとRhebが結合することで両者ともに[[プロテアソーム]]による分解を受ける。そのため、GTP型Rhebが増えるとシンテニンと結合して分解されるRhebが減少するため、結果的にシンテニンが増加し、シンテニンに依存したシグナルの増強が起きる<ref name=Sugiura2015><pubmed>25880340</pubmed></ref>。
 mTORC1以外にもRhebにより制御されるシグナルタンパク質は幾つか知られている。例として、[[p21活性化キナーゼ]] ([[p21 activated kinase 2]]; [[PAK2]])は、活性化型Rheb依存的かつmTORC1非依存的にリン酸化を受け活性化される<ref name=Alves2015><pubmed>26412398</pubmed></ref>。また、[[シンテニン]]([[syntenin]])もRhebと結合することが明らかとなっている。シンテニンは[[PDZドメイン]]を有する[[アダプタータンパク質]]で、様々なシグナルカスケード因子と結合しシグナルの活性を調節することが知られている。シンテニンはGDP結合型Rhebとより結合しやすく、シンテニンとRhebが結合することで両者ともに[[プロテアソーム]]による分解を受ける。そのため、GTP型Rhebが増えるとシンテニンと結合して分解されるRhebが減少するため、結果的にシンテニンが増加し、シンテニンに依存したシグナルの増強が起きる<ref name=Sugiura2015><pubmed>25880340</pubmed></ref>。


=== 神経系における機能 ===
=== 神経系における機能 ===