グルタミン酸受容体
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イオンチャネル型受容体
グルタミン酸神経伝達のうち、早い成分を担っているのがイオンチャネル型グルタミン酸受容体である。脊椎動物ではカチオンチャネルである興奮性のグルタミン酸受容体のみであるが、無脊椎動物では、塩素チャネルである抑制型のグルタミン酸受容体も知られている[1]。
興奮性グルタミン酸受容体は次の3種に大きく分けられる。いずれも、大きな細胞外ドメインに3つの膜貫通領域(M1、M3、M4)とそれに挟まれた膜にループ状に埋め込まれるM2領域、細胞内ドメインからなる。テトラマーを形成される。
タイプ | 名称 | 作動薬 | 阻害薬 |
イオンチャネル型 | NMDA型 | NMDA | D-AP5, CPP, MK801 |
カイニン酸型 | カイニン酸 | CNQN, DNQX, GYKI 53655 | |
AMPA型 | AMPA | CNQN, DNQX, NBQX | |
代謝活性型 | サブグループI | trans-ACPD, キスカル酸, DHPG | MCPG, CPCCOEt, MPEP |
サブグループII | L-CCG-I | LY 341495, EGLU | |
サブグループIII | L-AP4 | MAP4, MSOP |
AMPA型グルタミン酸受容体
- 古くはキスカル酸型グルタミン酸受容体といわれたが、キスカル酸は代謝活性型グルタミン酸受容体も刺激する事が判ったため、より特異的なアゴニストである2-amino-3-(3-hydroxy-5-methyl-isoxazol-4-yl)propanoic acid (AMPA)からAMPA型グルタミン酸受容体といわれるようになった。拮抗阻害薬にはCNQX、NBQXがよく用いられる。
- AMPA型グルタミン酸受容体は、通常の場合、膜電位によらず機能する。そのため、静止膜電位付近のシナプス伝達を担っている。チャネルはNa+、K+に対して透過性が高い。
- GluA1-4(以前はGluR1-4と呼ばれていた)の4つのサブタイプがあり、リガンド結合領域がFLIP型、FLOP型の選択的スプラインシング、またサブタイプによっては細胞内ドメインも選択的スプラインシングを受ける。
- GluA2サブユニットではチャネル壁を構成する一つのアミノ酸がmRNAの編集によりグルタミンからアルギニンに変化する。その他のサブユニットではグルタミンのままである。このため、GluA2を含む受容体と含まない受容体では整流特性、イオン透過性がかわっている。
詳細はAMPA型グルタミン酸受容体の項目参照。
カイニン酸型グルタミン酸受容体
- カイニン酸受容体はGluK1-3 (GluR5-7)、GluK4,5 (KA1-2)からなる。AMPA型受容体、NMDA型受容体と比較して中枢神経系での伝達の寄与は小さい。シナプス後部に存在する他、前部に存在し、神経伝達物質の放出の制御にも関わる。
詳細はカイニン酸型グルタミン酸受容体の項目参照
NMDA型グルタミン酸受容体
- NMDAにより特異的に活性化される。拮抗的阻害剤としては、D-AP5、D-CPP(D-AP7を環状化したもの)、非拮抗的阻害剤としてはMK801、フェンサイクリジン、ケタミンなどが知られている。また、コアゴニストとしてグリシンまたは[[D-セリン|D-セリン]]を必要とする。
- 通常静止膜電位付近では、Mg2+によりチャネルが塞がれており、活性化にはある程度の脱分極が必要である。そのため、ある程度の神経活動がある時にのみ活動する。AMPA型受容体とは異なり、Ca2+透過性が高く、活性化により細胞内Ca2+濃度が上昇する。シナプス可塑性にはこのCa2+が必須である。
- 通常GluN1(NR1)、GluN2A-D(NR2A-D)から構成される。すべての受容体にGluN1は含まれる一方、GluN2は組織により特定のサブユニットが含まれており、電気生理学的特性を規定していると考えられる。また一部はGluN3A,B(NR3A,B)サブユニットも含むと考えられる。GluN3がGluN1、GluN2と複合体に共存すると、ドミナントネガティブ体として働く[2]。また、GluN1とGluN3だけ複合体を作ると、グリシン単独で開くチャネルが形成されるが[3]、実際に神経組織で、グリシン受容体として機能しているかは不明である。
詳細はNMDA型グルタミン酸受容体の項目参照
代謝活性型受容体
リガンド結合領域を含む細胞外N末端、7回膜貫通領域、細胞内C末端からなる。Gタンパク質共役受容体の一つであるが、ロドプシンとの相同性はほとんどない。
詳細は代謝活性型グルタミン酸受容体の項目参照。
サブグループI
ホスホリパーゼCを活性化する事によりイノシトール3リン酸代謝回転/Ca2+/リン脂質依存性タンパク質リン酸化酵素 (Cキナーゼ)経路につながる。mGluR1とmGluR5により構成される。TRPチャネルを介し、遅いシナプス伝達に関与する。
サブグループII
trans-ACPD、DCG-IVにより活性化され、cAMP産生を抑制する。また、Gタンパク質活性化カリウムチャネル(GIRK)を活性化する事により、シナプス前部にて自己受容体として機能する。mGluR2とmGluR3が属する。
サブグループIII
L−AP4により活性化され、cAMP産生を抑制する。また、サブグループIIと同様にGIRKを活性化する。mGluR4、mGluR6、mGluR7、mGluR8が属する。
- ↑
Dingledine, R., Borges, K., Bowie, D., & Traynelis, S.F. (1999).
The glutamate receptor ion channels. Pharmacological reviews, 51(1), 7-61. [PubMed:10049997] [WorldCat] - ↑
Nishi, M., Hinds, H., Lu, H.P., Kawata, M., & Hayashi, Y. (2001).
Motoneuron-specific expression of NR3B, a novel NMDA-type glutamate receptor subunit that works in a dominant-negative manner. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 21(23), RC185. [PubMed:11717388] [PMC] [WorldCat] - ↑
Chatterton, J.E., Awobuluyi, M., Premkumar, L.S., Takahashi, H., Talantova, M., Shin, Y., ..., & Zhang, D. (2002).
Excitatory glycine receptors containing the NR3 family of NMDA receptor subunits. Nature, 415(6873), 793-8. [PubMed:11823786] [WorldCat] [DOI]