「ニカストリン」の版間の差分

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==生理・病態における機能==
==生理・病態における機能==
=== アルツハイマー病 ===
=== アルツハイマー病 ===
 NCT変異による家族性アルツハイマー病家系は知られていない一方、単一塩基多型(single nucleotide polymorphism: SNP)を基に5つのハプロタイプが見出され、特定のハプロタイプ頻度が若年発症の家族性アルツハイマー病例において有意に高いことが示された<ref name=Dermaut2002><pubmed>11992262</pubmed></ref> 。また、プロモーター領域のSNP解析からも、アルツハイマー病との相関性が指摘されている。しかし、否定的な追試結果も見られる。さらに、11歳群と79歳群における認知機能テストから、このハプロタイプが生来の認知機能レベルと関連するものの、加齢に伴う認知機能低下とは相関しないとする報告もある<ref name=Deary2005><pubmed>15567563</pubmed></ref> 。現在まで、コモンバリアントとの連関はコンセンサスに到っていない。一方で、Luptonら<ref name=Lupton2011><pubmed>21364883</pubmed></ref> は、レアバリアントであるAsn417Tyrがギリシャ人アルツハイマー病群で有意に高いことを報告している。ちなみに、この変異体の発現は細胞のA産生には変化を与えない<ref name=Dermaut2002><pubmed>11992262</pubmed></ref> 。
 ニカストリン遺伝子変異による家族性アルツハイマー病家系は知られていない一方、単一塩基多型(single nucleotide polymorphism: SNP)を基に5つのハプロタイプが見出され、特定のハプロタイプ頻度が若年発症の家族性アルツハイマー病例において有意に高いことが示された<ref name=Dermaut2002><pubmed>11992262</pubmed></ref> 。また、プロモーター領域のSNP解析からも、アルツハイマー病との相関性が指摘されている。しかし、否定的な追試結果も見られる。さらに、11歳群と79歳群における認知機能テストから、このハプロタイプが生来の認知機能レベルと関連するものの、加齢に伴う認知機能低下とは相関しないとする報告もある<ref name=Deary2005><pubmed>15567563</pubmed></ref> 。現在まで、コモンバリアントとの連関はコンセンサスに到っていない。一方で、Luptonら<ref name=Lupton2011><pubmed>21364883</pubmed></ref> は、レアバリアントであるAsn417Tyrがギリシャ人アルツハイマー病群で有意に高いことを報告している。ちなみに、この変異体の発現は細胞のA&beta;産生には変化を与えない<ref name=Dermaut2002><pubmed>11992262</pubmed></ref> 。
 
=== 体節形成、細胞分化、アポトーシスなど ===
=== 体節形成、細胞分化、アポトーシスなど ===
 ニカストリン欠失マウスは胎生致死であるが、加えてNotch1あるいはプレセニリンの欠失マウスに類似した体節形成不全などの表現型が確認されている<ref name=Li2003><pubmed>12716934</pubmed></ref> 。γセクレターゼの基質は多いため、それらに関連した多彩な表現型が認められ得る。例えば、マウスやショウジョウバエを用いた解析から、神経細胞やリンパ球の分化に必須であることが指摘されているが、これらはγセクレターゼがNotchシグナル伝達に不可欠であることで説明できる。
 ニカストリン欠失マウスは胎生致死であるが、加えてNotch1あるいはプレセニリンの欠失マウスに類似した体節形成不全などの表現型が確認されている<ref name=Li2003><pubmed>12716934</pubmed></ref> 。γセクレターゼの基質は多いため、それらに関連した多彩な表現型が認められ得る。例えば、マウスやショウジョウバエを用いた解析から、神経細胞やリンパ球の分化に必須であることが指摘されているが、これらはγセクレターゼがNotchシグナル伝達に不可欠であることで説明できる。