「強迫症」の版間の差分

編集の要約なし
101行目: 101行目:
 強力な[[セロトニン]]([[serotonin]]; [[5-HT]])再取り込み阻害作用を有する[[選択的セロトニン再取り込阻害薬]]([[Selective serotonin reuptake inhibitors]]; [[SSRI]]) は、OCDに対する薬物療法の第一選択薬であり、OCDの病態にセロトニン神経伝達異常が密接に関連するというセロトニン仮説の根拠とされている<ref name="ref18" /> <ref name="ref23" />。しかし現在ところ、特定のセロトニン受容体や機能異常の関与は明らかではなく、セロトニン系が特異的にというよりは、ドーパミン(dopamine)や[[ノルアドレナリン]]系を含む多くの[[神経伝達物質]]、及び神経調整機能が複雑に関連しているものと推定されている。例えば、ドーパミン系には、セロトニン動態やネットワーク自体に直接的調整作用を有しており、セロトニンはドーパミンに対し抑制的に作用するなど、セロトニン系とドーパミン系には、密接な相互関連が存在し、さらにOCDの病態生理にドーパミン系機能障害の直接的関与が示唆されている<ref name="ref23" />。またSSRI単独投与に抵抗性の、またはTDやTSなどと関連したOCD患者に対し、[[抗精神病薬]]([[非定型抗精神病薬]]を含む)の付加的投与が有効である<ref name="ref10" /> <ref name="ref11" /> <ref name="ref12" /> <ref name="ref26">'''松永寿人'''<br>強迫性障害. 「神経症性障害の治療ガイドライン」精神科治療学26(10)増刊号<br>(編集;「精神科治療学」編集委員会) ''星和書店''、東京、pp56-67.2011.</ref>。この様に、少なくともOCDの一部では、セロトニン、ドーパミン伝達系双方が、強迫症状の病態生理に関わる可能性があり、基底核における両者の機能的相互作用が存在し、ドーパミン系に対するセロトニン系の持続的抑制の減弱により、ドーパミン機能亢進が生じている可能性などが推定されている。  
 強力な[[セロトニン]]([[serotonin]]; [[5-HT]])再取り込み阻害作用を有する[[選択的セロトニン再取り込阻害薬]]([[Selective serotonin reuptake inhibitors]]; [[SSRI]]) は、OCDに対する薬物療法の第一選択薬であり、OCDの病態にセロトニン神経伝達異常が密接に関連するというセロトニン仮説の根拠とされている<ref name="ref18" /> <ref name="ref23" />。しかし現在ところ、特定のセロトニン受容体や機能異常の関与は明らかではなく、セロトニン系が特異的にというよりは、ドーパミン(dopamine)や[[ノルアドレナリン]]系を含む多くの[[神経伝達物質]]、及び神経調整機能が複雑に関連しているものと推定されている。例えば、ドーパミン系には、セロトニン動態やネットワーク自体に直接的調整作用を有しており、セロトニンはドーパミンに対し抑制的に作用するなど、セロトニン系とドーパミン系には、密接な相互関連が存在し、さらにOCDの病態生理にドーパミン系機能障害の直接的関与が示唆されている<ref name="ref23" />。またSSRI単独投与に抵抗性の、またはTDやTSなどと関連したOCD患者に対し、[[抗精神病薬]]([[非定型抗精神病薬]]を含む)の付加的投与が有効である<ref name="ref10" /> <ref name="ref11" /> <ref name="ref12" /> <ref name="ref26">'''松永寿人'''<br>強迫性障害. 「神経症性障害の治療ガイドライン」精神科治療学26(10)増刊号<br>(編集;「精神科治療学」編集委員会) ''星和書店''、東京、pp56-67.2011.</ref>。この様に、少なくともOCDの一部では、セロトニン、ドーパミン伝達系双方が、強迫症状の病態生理に関わる可能性があり、基底核における両者の機能的相互作用が存在し、ドーパミン系に対するセロトニン系の持続的抑制の減弱により、ドーパミン機能亢進が生じている可能性などが推定されている。  


 近年、OCDにおける[[グルタミン酸]]系機能異常の関与が注目されている<ref name="ref27"><pubmed>15841109</pubmed></ref>。特にこの過剰状態は、直接的経路の活性亢進を介して、OCDの病態に関連すると推定されている。また[[N-metyl-D-aspartate (NMDA)型グルタミン酸受容体|N-metyl-D-aspartate (NMドーパミン)型グルタミン酸受容体]]は、CBT時における学習や記憶、そして新たな行動パターンの習得に関連している<ref name="ref28"><pubmed>16919524</pubmed></ref>。この部分アゴニストである[[D-サイクロセリン]]は、[[向知性薬]]として、この作用を増強し、暴露時の恐怖消去を促してCBTの有効性を高める効果が期待されている<ref name="ref29"><pubmed>21865528</pubmed></ref> <ref name="ref30"><pubmed>18316423</pubmed></ref>。  
 近年、OCDにおける[[グルタミン酸]]系機能異常の関与が注目されている<ref name="ref27"><pubmed>15841109</pubmed></ref>。特にこの過剰状態は、直接的経路の活性亢進を介して、OCDの病態に関連すると推定されている。また[[NMDA型グルタミン酸受容体|N-metyl-<small>D</small>-aspartate (NMDA)型グルタミン酸受容体]]は、CBT時における学習や記憶、そして新たな行動パターンの習得に関連している<ref name="ref28"><pubmed>16919524</pubmed></ref>。この部分アゴニストである[[D-サイクロセリン]]は、[[向知性薬]]として、この作用を増強し、暴露時の恐怖消去を促してCBTの有効性を高める効果が期待されている<ref name="ref29"><pubmed>21865528</pubmed></ref> <ref name="ref30"><pubmed>18316423</pubmed></ref>。


==治療  ==
==治療  ==