「脆弱X症候群」の版間の差分

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 脆弱X症候群では、FMRPの欠如によりマトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)活性が亢進する。この機序は、脆弱X症候群においてPI<sub>3</sub>K-mTOR経路が活性化されることでeIF4Eのリン酸化が上昇する結果、MMP-9の翻訳レベルが上昇するためである。FMRPはMMP-9の活性亢進を抑制しているが、FMRPが欠損している場合には、MMP-9がmTORシグナル伝達系の経路の活性化を促し、このことが脆弱X症候群でのシナプス形態の変化、行動異常の病態の一つと考えられている<ref name=Dziembowska2012><pubmed>22326910</pubmed></ref> 。抗生物質として知られるミノサイクリンはMMP-9活性を低下させる働きを有し、候補薬として挙げられている<ref name=Utari2010><pubmed>20687826</pubmed></ref><ref name=Paribello2010><pubmed>20937127</pubmed></ref> 。
 脆弱X症候群では、FMRPの欠如によりマトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)活性が亢進する。この機序は、脆弱X症候群においてPI<sub>3</sub>K-mTOR経路が活性化されることでeIF4Eのリン酸化が上昇する結果、MMP-9の翻訳レベルが上昇するためである。FMRPはMMP-9の活性亢進を抑制しているが、FMRPが欠損している場合には、MMP-9がmTORシグナル伝達系の経路の活性化を促し、このことが脆弱X症候群でのシナプス形態の変化、行動異常の病態の一つと考えられている<ref name=Dziembowska2012><pubmed>22326910</pubmed></ref> 。抗生物質として知られるミノサイクリンはMMP-9活性を低下させる働きを有し、候補薬として挙げられている<ref name=Utari2010><pubmed>20687826</pubmed></ref><ref name=Paribello2010><pubmed>20937127</pubmed></ref> 。


== 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 ==
=== 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 ===
SSRIs
 以前から、セロトニンの機能障害と脆弱X症候群および自閉スペクトラム症との関連が知られている。月齢12から50か月の小児脆弱X症候群を対象に行われた少量の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるセルトラリンを用いた臨床研究では、非投与群に比べて特に言語発達において有意に効果が認められた<ref name=Winarni2012><pubmed>23074686</pubmed></ref> 。この結果を受けて、2歳から6歳を対象とした52人に対し、ランダム化2相性試験が行われた。この結果では、プラシーボ群に対し、粗大運動、視覚認知、認知機能で有意に効果がみられた<ref name=Ligsay2016><pubmed>27672538</pubmed></ref> 。
 
 以前から、セロトニンの機能障害と脆弱X症候群および自閉スペクトラム症との関連が知られている。月齢12から50か月の小児脆弱X症候群を対象に行われた少量のセルトラリンを用いた臨床研究では、非投与群に比べて特に言語発達において有意に効果が認められた<ref name=Winarni2012><pubmed>23074686</pubmed></ref> 。この結果を受けて、2歳から6歳を対象とした52人に対し、ランダム化2相性試験が行われた。この結果では、プラシーボ群に対し、粗大運動、視覚認知、認知機能で有意に効果がみられた<ref name=Ligsay2016><pubmed>27672538</pubmed></ref> 。


=== ロバスタチン ===
=== ロバスタチン ===
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=== メトフォルミン ===
=== メトフォルミン ===
 メトフォルミンは2型糖尿病の治療薬として知られているが、2017年に脆弱X症候群モデルマウスでの効果が認められたとの報告がなされた<ref name=Gantois2017><pubmed>28504725</pubmed></ref> 。作用機序として、亢進したRAS-MAPK-ERK1/2経路およびMMP-9産生の阻害が考えられている。臨床試験の報告が翌年にはなされ、現在も臨床研究が行われている<ref name=Dy2018><pubmed>28436599</pubmed></ref> 。
 メトフォルミンは2型糖尿病の治療薬として知られているが、2017年に脆弱X症候群モデルマウスでの効果が認められたとの報告がなされた<ref name=Gantois2017><pubmed>28504725</pubmed></ref> 。作用機序として、亢進したRAS-MAPK-ERK1/2経路およびMMP-9産生の阻害が考えられている。臨床試験の報告が翌年にはなされ、現在も臨床研究が行われている<ref name=Dy2018><pubmed>28436599</pubmed></ref> 。


=== カナビジオール ===
=== カナビジオール ===