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脳においてノルアドレナリンの多くは、MAO、[[アルデヒド還元酵素]]、およびCOMTにより[[wikipedia:3-Methoxy-4-hydroxyphenylglycol|3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール]] (3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol, MHPG)へ代謝され、さらに[[wikipedia:Vanillylmandelic acid|3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデル酸]] (3-methoxy-4-hydroxymandelic acid) (または[[wikipedia:Vanillylmandelic acid|バニリルマンデル酸]] (vanillylmandelic acid, VMA)となって尿中に排出される<ref name="ref15">'''D E Golan, A H Tashjian Jr, E J Armstrong, A W Armstrong'''<br> Principles of Pharmacology, Second Edition<br>''Wolters Kluwer Health (Philadelphia)'':2002</ref>。MHPGの硫酸化物も尿中に排出される<ref name="ref15" />。 | 脳においてノルアドレナリンの多くは、MAO、[[アルデヒド還元酵素]]、およびCOMTにより[[wikipedia:3-Methoxy-4-hydroxyphenylglycol|3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール]] (3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol, MHPG)へ代謝され、さらに[[wikipedia:Vanillylmandelic acid|3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデル酸]] (3-methoxy-4-hydroxymandelic acid) (または[[wikipedia:Vanillylmandelic acid|バニリルマンデル酸]] (vanillylmandelic acid, VMA)となって尿中に排出される<ref name="ref15">'''D E Golan, A H Tashjian Jr, E J Armstrong, A W Armstrong'''<br> Principles of Pharmacology, Second Edition<br>''Wolters Kluwer Health (Philadelphia)'':2002</ref>。MHPGの硫酸化物も尿中に排出される<ref name="ref15" />。 | ||
== <br> | == 受容体 == | ||
ノルアドレナリンはアドレナリンと共にアドレナリン受容体(adrenergic receptorまたはadrenoceptor)に結合し活性化する。αおよびβのサブファミリーからなる(表)。より細かくは、α<sub>1A</sub>-α<sub>1D</sub>、α<sub>2A</sub>-α<sub>2C</sub>、β<sub>1</sub>-β<sub>3</sub>、から構成されている。いずれも三量体[[Gタンパク質共役型受容体]]である。α<sub>1</sub>はG<sub>q</sub>、α<sub>2</sub>はG<sub>i</sub>、β<sub>1</sub>-β<sub>3</sub>はG<sub>s</sub>と共役し、、異なるシグナル伝達を行う。Gqはphospho-lipase Cを活性化し、 inositol 1,4,5-trisphosphate (IP3) の産生からIP3受容体を介して細胞内Ca<sup>2+</sup>の上昇を引き起こす。またdiacylglicerol (DAG) の産生を介してProtein kinase Cの活性化を引き起こす。G<sub>i</sub>、G<sub>s</sub>はそれぞれadenylate cyclaseを阻害、または活性化し、cAMPの産生の増減、そしてPKA活性の増減を引き起こす。 | |||
中枢神経系において、ノルアドレナリンは主にα<sub>1</sub>、α<sub>2</sub>、そしてβ<sub>1</sub>受容体を介して作用する。。海馬神経細胞において、β1受容体の活性化はCa2+依存性K+チャンネルを阻害し、afterhyperpolarizationを減少させ、結果的にシナプス入力依存的な発火を亢進させる(PMID: 2873241, 6300681)。この作用はcAMPを介している(PMID: 8274274)。さらに、β受容体は海馬におけるシナプス長期増強(LTP)をポジティブに調節する(PMID: 6311345, 20043991)。そのメカニズムとして、樹上突起状のA型K+チャンネルの不活性化によるbackpropagationの促進が考えられている(PMID: 9914302, 12077183)。また、SK型K+チャンネルの活性化やグルタミン酸受容体のリン酸化の可能性も指摘されている(PMID: 20043991)。前頭前野では、α1、α2、そしてβ1受容体が異なる働きを示すことが示唆されている(PMID: 17303246)。<br> | |||
末梢神経系において、ノルアドレナリンはα<sub>1</sub>およびβ<sub>1</sub>アドレナリン受容体のアゴニストとして作用する。(アドレナリンは、低濃度ではβ<sub>1</sub>およびβ<sub>2</sub>アドレナリン受容体に作用し、高濃度ではα<sub>1</sub>を介した作用が主となる。) | |||
心筋において、β1受容体はGsを介してadenylate cyclaseの活性化、cAMPの産生、PKAの活性化が引き起こす。さらに、cyclic nucleotideがhyperpolarization-activated cyclic nucleotide gated (HCN) channelに直接結合し、チャンネル活性を亢進し、心筋の興奮性を高める (PMID 20156590, 18953682)。また、PKAによりL型電位依存性カルシウムチャンネルや、筋小胞体リアノジン受容体がリン酸化されて活性化し、細胞内のカルシウム濃度が上昇、結果的に心筋の興奮性を亢進する。この時A-kinase anchoring protein (AKAP)が受容体とPKAの相互作用を手助けする(PMID 20156590, 9687361)。また、内向き整流性カリウムチャンネルの一種であるslowly activated K channels (IKs) もPKAのリン酸化を受け、活性化する(PMID 20156590)。これにより、心拍数が増加した時でも、心臓の拡張期の時間が適切に調節されると考えられる。アドレナリンによるα2受容体の活性化は、Giを介して上記β1受容体と逆の効果がある。 | |||
平滑筋において、ノルアドレナリンα1受容体の活性化は、Gqを介してphospholipaseの活性化、inositol 1,4,5-trisphosphate (IP3)とdiacylglycerolの産生、IP3受容体の活性化による細胞内カルシウムストアからのカルシウム放出、myosin-light chain kinaseの活性化、そして結果的に筋収縮を引き起こす(<ref>'''D E Golan, A H Tashjian Jr, E J Armstrong, A W Armstrong'''<br> Principles of Pharmacology, Second Edition<br>''Wolters Kluwer Health (Philadelphia)'':2002</ref>) (PMID: 11096123)。<br>逆に、アドレナリンによるβ2受容体の活性化は、Gsを介してPKAの活性化、MLCKのリン酸化による抑制の結果、筋弛緩をもたらすと考えられる(<ref>'''D E Golan, A H Tashjian Jr, E J Armstrong, A W Armstrong'''<br> Principles of Pharmacology, Second Edition<br>''Wolters Kluwer Health (Philadelphia)'':2002</ref>)(PMID: 6259152)。<br> | |||
α<sub>2</sub>アドレナリン受容体はノルアドレナリン[[軸索終末]]に存在し([[自己受容体]]またはオートレセプター)、ノルアドレナリンの放出を抑制する<ref name="ref19"><pubmed> 11520889 </pubmed></ref>。 | α<sub>2</sub>アドレナリン受容体はノルアドレナリン[[軸索終末]]に存在し([[自己受容体]]またはオートレセプター)、ノルアドレナリンの放出を抑制する<ref name="ref19"><pubmed> 11520889 </pubmed></ref>。 | ||
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! style="white-space:nowrap" | [[wikipedia:Adrenergic antagonist|アンタゴニスト]] | ! style="white-space:nowrap" | [[wikipedia:Adrenergic antagonist|アンタゴニスト]] | ||
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| [[wikipedia:ja:平滑筋|平滑筋]]収縮 | | [[wikipedia:ja:平滑筋|平滑筋]]収縮 | ||
| [[Gq alpha subunit|G<sub>q</sub>]]: [[ホスホリパーゼC]] (PLC) 活性化により[[イノシトール3リン酸]]と[[ジアシルグリセロール]]、細胞内[[カルシウム]]の上昇 | | [[Gq alpha subunit|G<sub>q</sub>]]: [[ホスホリパーゼC]] (PLC) 活性化により[[イノシトール3リン酸]]と[[ジアシルグリセロール]]、細胞内[[カルシウム]]の上昇 | ||
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''([[wikipedia:Alpha-adrenergic agonist|α<sub>1</sub>アゴニスト]])'' | ''([[wikipedia:Alpha-adrenergic agonist|α&lt;sub&gt;1&lt;/sub&gt;アゴニスト]])'' | ||
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*[[アルフゾシン]] | *[[アルフゾシン]] | ||
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| [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 | | [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 | ||
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''([[wikipedia:ja:交感神経β受容体遮断薬|β<sub>1</sub>アンタゴニスト]])'' | ''([[wikipedia:ja:交感神経β受容体遮断薬|β&lt;sub&gt;1&lt;/sub&gt;アンタゴニスト]])'' | ||
*[[メトプロロール]] | *[[メトプロロール]] | ||
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| [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 ([[Gi alpha subunit|Gi]]と共役することもある) | | [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 ([[Gi alpha subunit|Gi]]と共役することもある) | ||
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''([[wikipedia:ja:交感神経β2受容体作動薬|β<sub>2</sub>アゴニスト]])'' | ''([[wikipedia:ja:交感神経β2受容体作動薬|β&lt;sub&gt;2&lt;/sub&gt;アゴニスト]])'' | ||
*[[サルブタモール]] | *[[サルブタモール]] | ||
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''([[wikipedia:ja:交感神経β受容体遮断薬|β<sub>2</sub>アンタゴニスト]])'' | ''([[wikipedia:ja:交感神経β受容体遮断薬|β&lt;sub&gt;2&lt;/sub&gt;アンタゴニスト]])'' | ||
*[[ブトキサミン]] | *[[ブトキサミン]] | ||
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'''表 アドレナリン性受容体''' Wikipedia項目[[wikipedia:Adrenergic Receptor|Adrenergic Receptor]]から翻訳、修正の上転載。 <sup>†</sup>α<sub>1C</sub>受容体と呼ばれる物は、存在しない。 | '''表 アドレナリン性受容体''' Wikipedia項目[[wikipedia:Adrenergic Receptor|Adrenergic Receptor]]から翻訳、修正の上転載。 <sup>†</sup>α<sub>1C</sub>受容体と呼ばれる物は、存在しない。 | ||
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主たる投射系と機能 | |||
中枢神経系<br> 脳におけるノルアドレナリン作動性の神経細胞群は、主に髄質(延髄でしょうか?)、橋に存在し、A1-A7に分けられている。<br>A1、A2:A1は髄質の腹外側に位置し、A2は背側に位置する。共に視床下部に上行性投射をし、ホルモン循環器系やホルモン内分泌系の調節を行う。<br>A5、A7:橋の腹外側に位置し、脊髄へ投射し、自律神経反射や、痛覚の調節を行う。<br>A6:青斑核(locus ceruleus)と呼ばれる。橋の背側に位置し、最も主要なノルアドレナリン作動性神経細胞の核である。青斑核からは、大脳皮質、視床、視床下部、小脳、中脳、脊髄、など脳のほぼ全域にわたって投射している。青斑核のノルアドレナリン作動性神経細胞は覚醒状態や不意な環境変化への応答性に関係している。例えば、ラット青斑核神経細胞の発火頻度は、覚醒-睡眠のサイクルに応じて変化し、また継続中の行動を中断するような場合に上昇する。さらに近年、ノルアドレナリンの注意、記憶、学習への関与、またシナプス可塑性への関与が報告されている 。これらのことから、ノルアドレナリンの働きは、動物が環境の変化に適応する際に、注意や認知のシフト、そして行動の適応化を早めることであると提唱されている。<br>自律神経系<br> 自律神経系のうちの交感神経系では、節後神経細胞がノルアドレナリン作動性であり、脊髄中の節前神経細胞よりアセチルコリン性の入力を受け、ノルアドレナリン性の出力を内臓器官に与える。その結果、血管の収縮、血圧の上昇、心拍数の増加、などを引き起こす。 | |||
中枢神経系<br> 脳におけるノルアドレナリン作動性の神経細胞群は、主に髄質(延髄でしょうか?)、橋に存在し、A1-A7に分けられている。<br>A1、A2:A1は髄質の腹外側に位置し、A2は背側に位置する。共に視床下部に上行性投射をし、ホルモン循環器系やホルモン内分泌系の調節を行う。<br>A5、A7:橋の腹外側に位置し、脊髄へ投射し、自律神経反射や、痛覚の調節を行う。<br>A6:青斑核(locus ceruleus)と呼ばれる。橋の背側に位置し、最も主要なノルアドレナリン作動性神経細胞の核である。青斑核からは、大脳皮質、視床、視床下部、小脳、中脳、脊髄、など脳のほぼ全域にわたって投射している。青斑核のノルアドレナリン作動性神経細胞は覚醒状態や不意な環境変化への応答性に関係している。例えば、ラット青斑核神経細胞の発火頻度は、覚醒-睡眠のサイクルに応じて変化し、また継続中の行動を中断するような場合に上昇する。さらに近年、ノルアドレナリンの注意、記憶、学習への関与、またシナプス可塑性への関与が報告されている 。これらのことから、ノルアドレナリンの働きは、動物が環境の変化に適応する際に、注意や認知のシフト、そして行動の適応化を早めることであると提唱されている。<br>自律神経系<br> 自律神経系のうちの交感神経系では、節後神経細胞がノルアドレナリン作動性であり、脊髄中の節前神経細胞よりアセチルコリン性の入力を受け、ノルアドレナリン性の出力を内臓器官に与える。その結果、血管の収縮、血圧の上昇、心拍数の増加、などを引き起こす。 | |||
== 抗うつ薬とノルアドレナリン == | == 抗うつ薬とノルアドレナリン == |
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