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=== ホモフィリック結合(同種分子親和性結合 Homophilic adhesion) === | === ホモフィリック結合(同種分子親和性結合 Homophilic adhesion) === | ||
同種の分子が結合する様式をホモフィリック結合という。神経系に発現する代表的なホモフィリック結合分子として、[[カドヘリン]]、NCAM,[[ L1]], P0などが挙げられる。同じタイプの神経細胞を集めて配置する神経核の形成過程や、同じタイプの軸索を集めて束化する軸索束形成過程において、細胞接着分子によるホモフィリック結合が重要な役割を果たす。 | |||
=== ヘテロフィリック結合(異種分子親和性結合Heterophilic adhesion) === | === ヘテロフィリック結合(異種分子親和性結合Heterophilic adhesion) === | ||
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=== インテグリン・ファミリー(Integrin family) === | === インテグリン・ファミリー(Integrin family) === | ||
[[wikipedia:integrin|インテグリン]]はαサブユニットとβサブユニットのヘテロ2量体からなる2価カチオン(Mg2+あるいはCa2+)依存性の接着分子である。マウスでは16種類のαサブユニットと8種類のβサブユニット遺伝子が存在し、図4に示す組み合わせにより機能的なヘテロ2量体を形成する。多くのインテグリンは、[[wikipedia:jp:コラーゲン|コラーゲン]], [[wikipedia:Vitronectin|ビトロネクチン]], [[wikipedia:Laminin|ラミニン]], [[wikipedia:jp:フィブロネクチン|フィブロネクチン]] | [[wikipedia:integrin|インテグリン]]はαサブユニットとβサブユニットのヘテロ2量体からなる2価カチオン(Mg2+あるいはCa2+)依存性の接着分子である。マウスでは16種類のαサブユニットと8種類のβサブユニット遺伝子が存在し、図4に示す組み合わせにより機能的なヘテロ2量体を形成する。多くのインテグリンは、[[wikipedia:jp:コラーゲン|コラーゲン]], [[wikipedia:Vitronectin|ビトロネクチン]], [[wikipedia:Laminin|ラミニン]], [[wikipedia:jp:フィブロネクチン|フィブロネクチン]]などの細胞外マトリックス蛋白質をリガンドとして細胞−基質間の接着を司る。一方、一部のインテグリンはIgSFや[[カドヘリン]]と結合することで細胞間接着を担う。例えばβ2サブユニットを含むインテグリンLFA-1(αLβ2; CD11a/CD18)は、Telencephalin(ICAM-5)などのICAMファミリーIgSF分子群と結合し、免疫系および神経系における細胞間認識・接着において機能することが報告されている<ref><pubmed>17201681</pubmed></ref><ref><pubmed>18367254</pubmed></ref>。インテグリンの細胞内領域はTalin, α-Actinin, Vinculinなどと結合し、アクチン細胞骨格系や様々な細胞内シグナル伝達系を制御する<ref><pubmed>12297042</pubmed></ref>。神経系におけるインテグリンの機能として、ニューロンの移動、軸索の伸長、シナプスの形成、神経可塑性の制御などが報告されている<ref><pubmed>15250583</pubmed></ref><ref><pubmed>17049262</pubmed></ref><ref><pubmed>16567651</pubmed></ref><ref><pubmed>19047646</pubmed></ref><ref><pubmed>19758485</pubmed></ref><ref><pubmed>22232691</pubmed></ref><ref><pubmed>23083738</pubmed></ref>。 | ||
=== その他のシナプス接着分子 === | === その他のシナプス接着分子 === | ||
上述した分子の他に、Netrin-G1, -G2などのロイシンリッチリピート蛋白質、Neurexins / Neuroligins、Neuropilins / Plexins / Semaphorins、Ephrins / Ephs、Syndecansなどの細胞認識・接着分子がシナプス部位に局在しており、シナプス形成・維持・可塑性を制御している(詳細は「[[シナプス接着因子]]」の項目を参照)<ref><pubmed>15882774</pubmed></ref><ref><pubmed>18923512</pubmed></ref><ref><pubmed>21740233</pubmed></ref><ref><pubmed>22449939</pubmed></ref><ref><pubmed>22895477</pubmed></ref> | 上述した分子の他に、Netrin-G1, -G2などのロイシンリッチリピート蛋白質、Neurexins / Neuroligins、Neuropilins / Plexins / Semaphorins、Ephrins / Ephs、Syndecansなどの細胞認識・接着分子がシナプス部位に局在しており、シナプス形成・維持・可塑性を制御している(詳細は「[[シナプス接着因子]]」の項目を参照)<ref><pubmed>15882774</pubmed></ref><ref><pubmed>18923512</pubmed></ref><ref><pubmed>21740233</pubmed></ref><ref><pubmed>22449939</pubmed></ref><ref><pubmed>22895477</pubmed></ref>。また、[[wikipedia:G protein-coupled receptor|膜7回貫通型受容体]]膜7回貫通型受容体であるLatrophilin, Celsr, Brain-specific angiogenesis inhibitor (BAI)は脳において高発現している。これらの細胞外領域には[[細胞外マトリックス]]蛋白質や[[カドヘリン]]と共通するドメインを持っているため、細胞接着に関連するドメインを介した相互作用によりシナプス形成を調節すると考えられる<ref><pubmed>21724987</pubmed></ref><ref><pubmed>21262840</pubmed></ref><ref><pubmed>22262843</pubmed></ref><ref><pubmed>22405201</pubmed></ref>。 | ||
=== 細胞外マトリックス分子(Extracellular Matrix Molecules) === | === 細胞外マトリックス分子(Extracellular Matrix Molecules) === | ||
細胞外マトリックスは主にコラーゲンやラミニンに代表される分泌蛋白質と[[wikipedia:jp:ヒアルロン酸|ヒアルロン酸]]や[[wikipedia:jp:コンドロイチン硫酸|コンドロイチン硫酸]]などの糖から構成されており、これらの分子が自己組織化することにより細胞の周囲にシート状またはメッシュ状の線維を形成する。それぞれの細胞は細胞外マトリックス分子を分泌し、その細胞自体に適した細胞外環境を構築している。また、細胞外マトリックス分子は[[wikipedia:Matrix metalloproteinase|Matrix metalloproteinase]]などの細胞外プロテアーゼによって分解され、細胞外環境を随時最適なものにカスタマイズしている。<br> 細胞外マトリックスは単に細胞間を埋め尽くしているだけでなく、細胞を支える構造体となり、細胞の増殖、分化、行動、運命などを決定する。細胞外マトリックス分子の情報は主にインテグリンを介して細胞内へと伝えられる。その他、Telencephalin, NeclなどのIgSF分子群もビトロネクチンなどの細胞外マトリックス蛋白質と結合することで細胞内へと情報を伝える<ref><pubmed>17446174</pubmed></ref><ref name=ref33><pubmed>23019340</pubmed></ref>。<br> 運動ニューロンと筋細胞のシナプス([[神経筋接合部]])ではシート状の細胞外マトリックス([[基底膜]])が存在し、細胞外マトリックス蛋白質がシナプス形成を制御している<ref><pubmed>10202544</pubmed></ref> | 細胞外マトリックスは主にコラーゲンやラミニンに代表される分泌蛋白質と[[wikipedia:jp:ヒアルロン酸|ヒアルロン酸]]や[[wikipedia:jp:コンドロイチン硫酸|コンドロイチン硫酸]]などの糖から構成されており、これらの分子が自己組織化することにより細胞の周囲にシート状またはメッシュ状の線維を形成する。それぞれの細胞は細胞外マトリックス分子を分泌し、その細胞自体に適した細胞外環境を構築している。また、細胞外マトリックス分子は[[wikipedia:Matrix metalloproteinase|Matrix metalloproteinase]]などの細胞外プロテアーゼによって分解され、細胞外環境を随時最適なものにカスタマイズしている。<br> 細胞外マトリックスは単に細胞間を埋め尽くしているだけでなく、細胞を支える構造体となり、細胞の増殖、分化、行動、運命などを決定する。細胞外マトリックス分子の情報は主にインテグリンを介して細胞内へと伝えられる。その他、Telencephalin, NeclなどのIgSF分子群もビトロネクチンなどの細胞外マトリックス蛋白質と結合することで細胞内へと情報を伝える<ref><pubmed>17446174</pubmed></ref><ref name=ref33><pubmed>23019340</pubmed></ref>。<br> 運動ニューロンと筋細胞のシナプス([[神経筋接合部]])ではシート状の細胞外マトリックス([[基底膜]])が存在し、細胞外マトリックス蛋白質がシナプス形成を制御している<ref><pubmed>10202544</pubmed></ref>。一方、中枢神経系におけるシナプスでは明らかな細胞外マトリックス構造が見られないが、[[wikipedia:Vitronectin|ビトロネクチン]]や[[wikipedia:thrombospondin|トロンボスポンジン]]などの細胞外マトリックス蛋白質がスパイン成熟やシナプス形成を制御している<ref><pubmed>22405201</pubmed></ref><ref name=ref33/>。また、細胞外マトリックス分子はシナプス形成のみならず、幹細胞の維持、細胞移動の制御、軸索伸長の促進・抑制などにも関与している<ref><pubmed>20497467</pubmed></ref><ref><pubmed>21898854</pubmed></ref><ref><pubmed>23083738</pubmed></ref>。(詳細は「[[細胞外マトリックス]]」の項を参照) | ||
== ギャップジャンクション(Gap Junction) == | == ギャップジャンクション(Gap Junction) == | ||
約1000ダルトン以下の低分子を通すことのできる細胞間チャネルを有する接着構造を[[wikipedia:Gap junction|ギャップジャンクション]]という。ギャップジャンクションを介して、栄養素、代謝産物、セカンドメッセンジャー、陽イオン、陰イオンなどの様々な分子が細胞間で輸送される。この細胞間チャネルはConnexinsとPannexinsにより形成され、ヒトやマウスのゲノムには約20種類のConnexin遺伝子と、3種類のPannexin遺伝子が存在する。ニューロン間のギャップジャンクションは、主に6種類のConnexin-26, -30.2, -31.1, 36, -45, -57と2種類のPannexin-1, - | 約1000ダルトン以下の低分子を通すことのできる細胞間チャネルを有する接着構造を[[wikipedia:Gap junction|ギャップジャンクション]]という。ギャップジャンクションを介して、栄養素、代謝産物、セカンドメッセンジャー、陽イオン、陰イオンなどの様々な分子が細胞間で輸送される。この細胞間チャネルはConnexinsとPannexinsにより形成され、ヒトやマウスのゲノムには約20種類のConnexin遺伝子と、3種類のPannexin遺伝子が存在する。ニューロン間のギャップジャンクションは、主に6種類のConnexin-26, -30.2, -31.1, 36, -45, -57と2種類のPannexin-1, -2で構成される。Connexinsは細胞膜でホモまたはヘテロ6量体(Connexon)として存在し、対面する細胞膜のConnexonどうしでさらにホモフィリックあるいはヘテロフィリックに結合することで細胞間接合部チャネル、すなわちギャップジャンクションを形成する(図5)。ギャップジャンクションはニューロン間のみならず、[[小脳プルキンエ細胞]]と[[バーグマングリア]]の接着部位などにも存在し、[[ニューロン]]−[[グリア細胞]]間の情報伝達にも機能している<ref><pubmed>15738956</pubmed></ref>。 | ||
== タイトジャンクション(Tight Junction) == | == タイトジャンクション(Tight Junction) == |
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