「全胚培養」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/t-kikkawa 吉川 貴子]、[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子]</font><br>
''東北大学大学院医学系研究科''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2012年5月7日 原稿完成日:2012年10月25日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br>
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英:whole embryo culture 英略語:WEC  
英:whole embryo culture 英略語:WEC  


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 全胚培養とは、[[wikipedia:ja:着床|着床]]後の[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]][[wikipedia:ja:胚|胚]]を母体から取り出し、一定期間[[wikipedia:ja:試験管|試験管]]の中で培養する手法である。全胚培養法の確立により、哺乳類胚において他の方法の適用が困難な発生の早期においても、局所標識による[[細胞系譜]]の追跡、移植実験、組織・領域特異的な[[遺伝子導入]]などが可能なった。[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]、[[マウス]]だけではなく、[[wikipedia:ja:ハムスター|ハムスター]]、[[wikipedia:ja:モルモット|モルモット]]、[[wikipedia:ja:ウサギ|ウサギ]]、[[wikipedia:ja:ジャコウネズミ|スンクス]]などの動物種でも培養可能である。  
 全胚培養とは、[[wikipedia:ja:着床|着床]]後の[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]][[wikipedia:ja:胚|胚]]を母体から取り出し、一定期間[[wikipedia:ja:試験管|試験管]]の中で培養する手法である。全胚培養法の確立により、哺乳類胚において他の方法の適用が困難な発生の早期においても、局所標識による[[細胞系譜]]の追跡、移植実験、組織・領域特異的な[[遺伝子導入]]などが可能なった。[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]、[[マウス]]だけではなく、[[wikipedia:ja:ハムスター|ハムスター]]、[[wikipedia:ja:モルモット|モルモット]]、[[wikipedia:ja:ウサギ|ウサギ]]、[[wikipedia:ja:ジャコウネズミ|スンクス]]などの動物種でも培養可能である。  
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== 歴史 ==
== 歴史 ==
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== 発生学への応用 ==
== 発生学への応用 ==


 全胚培養で用いる胚の発生段階は器官形成期という最もダイナミックな形態形成が行われる時期であり、[[細胞増殖]]、細胞移動、[[細胞分化]]などの重要な発生事象が起こる。この発生段階に色素を用いた細胞標識、細胞移植など<ref><pubmed> 7981749 </pubmed></ref>を行うことにより、細胞系譜や分化運命のポテンシャルを検討することができる。また、薬剤や[[wikipedia:ja:生理活性|生理活性物質]]を培養液に添加することにより、発生毒性・胎児代謝の研究に応用されており、医薬品の安全性試験としても使用されている。
 全胚培養で用いる胚の発生段階は器官形成期という最もダイナミックな形態形成が行われる時期であり、[[細胞増殖]]、細胞移動、[[細胞分化]]などの重要な発生事象が起こる。この発生段階に色素を用いた細胞標識、細胞移植など<ref><pubmed> 7981749 </pubmed></ref>を行うことにより、細胞系譜や[[分化]]運命のポテンシャルを検討することができる。また、薬剤や[[wikipedia:ja:生理活性|生理活性物質]]を培養液に添加することにより、発生毒性・胎児代謝の研究に応用されており、医薬品の安全性試験としても使用されている。


 胚発生における特定[[wikipedia:ja:遺伝子|遺伝子]]の機能を知るためには、時間的、空間的に制御可能な遺伝子操作が必要である。近年の[[wikipedia:ja:遺伝子工学|遺伝子工学]]技術はめざましく、[[トランスジェニック動物]]や[[ノックアウト動物]]などの技術が開発され、さらに[[cre-loxP]]システムによる条件つき遺伝子改変が可能になったものの、その作製労力を考えると決して簡便ではない。全胚培養法を用いれば、[[電気穿孔法]](エレクトロポレーション法)を組み合わせることによって、他の方法の適用が困難な発生の早期においても遺伝子を直接細胞内に導入することができる<ref><pubmed> 11327800 </pubmed></ref>。導入する遺伝子は単独である必要はなく、複数の遺伝子を導入時に、あるいは時間差で導入することも可能である。また、[[ドミナントネガティブ分子]]による機能阻害実験、[[siRNA]]による[[ノックダウン]]実験<ref><pubmed> 16237179 </pubmed></ref>、および[[ウィルスベクター]]を用いた遺伝子導入も可能である。これらの技術は基礎研究だけでなく、特定の疾患[[モデル動物]]を対象とした遺伝子治療の研究にも有効であると考えられる。
 胚発生における特定[[wikipedia:ja:遺伝子|遺伝子]]の機能を知るためには、時間的、空間的に制御可能な遺伝子操作が必要である。近年の[[wikipedia:ja:遺伝子工学|遺伝子工学]]技術はめざましく、[[トランスジェニック動物]]や[[ノックアウト動物]]などの技術が開発され、さらに[[cre-loxP]]システムによる条件つき遺伝子改変が可能になったものの、その作製労力を考えると決して簡便ではない。全胚培養法を用いれば、[[電気穿孔法]](エレクトロポレーション法)を組み合わせることによって、他の方法の適用が困難な発生の早期においても遺伝子を直接細胞内に導入することができる<ref><pubmed> 11327800 </pubmed></ref>。導入する遺伝子は単独である必要はなく、複数の遺伝子を導入時に、あるいは時間差で導入することも可能である。また、[[ドミナントネガティブ分子]]による機能阻害実験、[[siRNA]]による[[ノックダウン]]実験<ref><pubmed> 16237179 </pubmed></ref>、および[[ウィルスベクター]]を用いた遺伝子導入も可能である。これらの技術は基礎研究だけでなく、特定の疾患[[モデル動物]]を対象とした遺伝子治療の研究にも有効であると考えられる。
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<references />
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(執筆者:吉川貴子、大隅典子 担当編集委員:村上富士夫)

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