「Hodgkin-Huxley方程式」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
23行目: 23行目:
状態が2つの系(例えばOpenとClosed)で、他の状態に移る率が一定の場合、次の性質がある。<br>  
状態が2つの系(例えばOpenとClosed)で、他の状態に移る率が一定の場合、次の性質がある。<br>  


*指数関数的に変化する
*指数関数的に変化する  
*近づく値、変化の速さは、初期条件に依存しない<br>
*近づく値、変化の速さは、初期条件に依存しない<br>


30行目: 30行目:
----
----


2つの状態1と2をとる事の出来る系を考え、それぞれの状態にある確率を''p''<sub>1</sub>と''p''とする。''p''<sub>1</sub>と''p''<sub>2</sub>は時刻''t''の関数であり、''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''2(''t'')と表わすとする。''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''<sub>2</sub>(''t'')は確率であるから、  
2つの状態1と2をとる事の出来る系を考え、それぞれの状態にある確率を''p''<sub>1</sub>と''p''<sub>2</sub>とする。''p''<sub>1</sub>と''p''<sub>2</sub>は時刻''t''の関数であり、''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''2(''t'')と表わすとする。''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''<sub>2</sub>(''t'')は確率であるから、  


::<math>p1(t) + p2(t) = 1\, </math>
::<math>p1(t) + p2(t) = 1\, </math>
41行目: 41行目:
と表される。αとβが定数であるとして、定常状態になれば、  
と表される。αとβが定数であるとして、定常状態になれば、  


::<math> \frac{dp_1(\infty)}{dt} = -\alpha p_1(\infty) + \beta p_2(\infty) = 0\, </math>
::<math> \frac{dp_1(\infty)}{dt} = -\alpha p_1(\infty) + \beta p_2(\infty) = 0\, </math>  
::<math> \frac{dp_2(\infty)}{dt} = \alpha p_1(\infty) - \beta p_2(\infty) = 0\, </math>
::<math> \frac{dp_2(\infty)}{dt} = \alpha p_1(\infty) - \beta p_2(\infty) = 0\, </math>


55行目: 55行目:
となる。また微分方程式は解析的に解けて、  
となる。また微分方程式は解析的に解けて、  


::<math>p_1(t) = \left(p1(0)-\frac{\beta}{\alpha+\beta}\right) e^{-(\alpha+\beta)t} + \frac{\beta}{\alpha+\beta}\, </math>  
::<math>p_1(t) = \left(p_1(0)-\frac{\beta}{\alpha+\beta}\right) e^{-(\alpha+\beta)t} + \frac{\beta}{\alpha+\beta}\, </math>  
::<math>p_2(t) = \left(p2(0)-\frac{\alpha}{\alpha+\beta}\right) e^{-(\alpha+\beta)t} + \frac{\alpha}{\alpha+\beta}\, </math>
::<math>p_2(t) = \left(p_2(0)-\frac{\alpha}{\alpha+\beta}\right) e^{-(\alpha+\beta)t} + \frac{\alpha}{\alpha+\beta}\, </math>


となる。 これらの式は次のことを示している。  
となる。 これらの式は次のことを示している。  


#''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''<sub>2</sub>(''t'')はそれぞれ指数関数的に''p''<sub>1</sub>(∞)と''p''<sub>2</sub>(∞)に近づいていく  
#''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''<sub>2</sub>(''t'')はそれぞれ指数関数的に''p''<sub>1</sub>(∞)と''p''<sub>2</sub>(∞)に近づいていく  
#その時定数τは1/(α+β)である  
#その時定数(time constant)τは1/(α+β)である  
#これらの値''p''<sub>1</sub>(∞)、''p''<sub>2</sub>(∞)、τは、初期値''p''<sub>1</sub>(0)、''p''<sub>2</sub>(0)に依存しない。
#これらの値''p''<sub>1</sub>(∞)、''p''<sub>2</sub>(∞)、τは、初期値''p''<sub>1</sub>(0)、''p''<sub>2</sub>(0)に依存しない。


さらに、  
さらに、  


::<math>q_1(t) = p1(t) - \frac{\beta}{\alpha+\beta}\, </math>  
::<math>q_1(t) = p_1(t) - \frac{\beta}{\alpha+\beta}\, </math>  
::<math>q_2(t) = p2(t) - \frac{\alpha}{\alpha+\beta}\,  </math>
::<math>q_2(t) = p_2(t) - \frac{\alpha}{\alpha+\beta}\,  </math>


と表すとすると、  
と表すとすると、  
78行目: 78行目:
== 電位固定法: 基礎となった技術*  ==
== 電位固定法: 基礎となった技術*  ==


Hodgkin-Huxley以前に、電気生理学の実験が行われていなかったわけではない。電流と電位変化に関する研究はかなり多く行われていた。しかしながら、細胞にはいろいろなイオンチャネルを通して電流が流れるため、細胞の電位''v''と外部から流す電流''I''<sub>ext</sub>の間の関係は、単純ではない。そこで、HodgkinとHuxleyは voltage clamp(電位固定法)を用いて、コンダクタンスの変化を測定して解析した。 voltage clampは、1940年代にアメリカの生物物理学者Kenneth Cole (1900 - 1984)らにより開発された。  
Hodgkin-Huxley以前に、電気生理学の実験が行われていなかったわけではない。電流と電位変化に関する研究はかなり多く行われていた。しかしながら、細胞にはいろいろなイオンチャネルを通して電流が流れるため、細胞の電位''v''と外部から流す電流''I''<sub>ext</sub>の間の関係は、単純ではない。そこでHodgkinとHuxleyは、 voltage clamp(電位固定法)を用いて、コンダクタンスの変化を測定して解析した。 voltage clampは1940年代にアメリカの生物物理学者Kenneth Cole (1900 - 1984)らにより開発された。  


以下は数式的な説明。<br>  
以下は数式的な説明。<br>  
88行目: 88行目:
::<math>\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{C}\left(\sum_X G_{X}(v-E_X) - I_{ext}\right)</math>
::<math>\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{C}\left(\sum_X G_{X}(v-E_X) - I_{ext}\right)</math>


''v''が一定となるように外部電流を''I''<sub>clamp</sub>を流すと、左辺は0となるため、  
''v''が一定となるような外部電流''I''<sub>clamp</sub>を流すと、左辺は0となるため、  


::<math> I_{clamp} = \sum_X G_X (v - E_X)\, </math>
::<math> I_{clamp} = \sum_X G_X (v - E_X)\, </math>


という関係が得られる。もし溶液の組成を工夫しチャネルのブロッカーなどを用いて、イオンチャネル''A''を流れる電流を単独で測れたとすると、
という関係が得られる。もし溶液の組成を工夫しさらにチャネルのブロッカーなどを用いて、イオンチャネル''A''を流れる電流を単離して測れたとすると、


::<math>I_{clamp} = G_A (v - E_A)\, </math>
::<math>I_{clamp} = G_A (v - E_A)\, </math>


となる。これはOhmの法則である。ここで''I''<sub>clamp</sub>は実験の測定値、''v''は実験の設定値、''E''<sub>A</sub>は実験条件で定まる定数なので、イオンチャネル''A''のコンダクタンス''G''<sub>A</sub>を、
となる。これはOhmの法則である。ここで''I''<sub>clamp</sub>は実験の測定値、''v''は実験の設定値、''E''<sub>A</sub>は実験条件で定まる定数なので、


::<math>G_{A} = \frac{I_{clamp}}{v-E_A}\, </math>
::<math>G_{A} = \frac{I_{clamp}}{v-E_A}\, </math>


と算出できることになる。
の関係式を用いて、実験データよりイオンチャネル''A''のコンダクタンス''G''<sub>A</sub>を算出できることになる。


== HHモデルに対する批判  ==
== HHモデルに対する批判  ==
66

回編集

案内メニュー