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Keijiimoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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状態が2つの系(例えばOpenとClosed)で、他の状態に移る率が一定の場合、次の性質がある。<br> | 状態が2つの系(例えばOpenとClosed)で、他の状態に移る率が一定の場合、次の性質がある。<br> | ||
*指数関数的に変化する | *指数関数的に変化する | ||
*近づく値、変化の速さは、初期条件に依存しない<br> | *近づく値、変化の速さは、初期条件に依存しない<br> | ||
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2つの状態1と2をとる事の出来る系を考え、それぞれの状態にある確率を''p''<sub>1</sub>と''p''とする。''p''<sub>1</sub>と''p''<sub>2</sub>は時刻''t''の関数であり、''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''2(''t'')と表わすとする。''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''<sub>2</sub>(''t'')は確率であるから、 | 2つの状態1と2をとる事の出来る系を考え、それぞれの状態にある確率を''p''<sub>1</sub>と''p''<sub>2</sub>とする。''p''<sub>1</sub>と''p''<sub>2</sub>は時刻''t''の関数であり、''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''2(''t'')と表わすとする。''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''<sub>2</sub>(''t'')は確率であるから、 | ||
::<math>p1(t) + p2(t) = 1\, </math> | ::<math>p1(t) + p2(t) = 1\, </math> | ||
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と表される。αとβが定数であるとして、定常状態になれば、 | と表される。αとβが定数であるとして、定常状態になれば、 | ||
::<math> \frac{dp_1(\infty)}{dt} = -\alpha p_1(\infty) + \beta p_2(\infty) = 0\, </math> | ::<math> \frac{dp_1(\infty)}{dt} = -\alpha p_1(\infty) + \beta p_2(\infty) = 0\, </math> | ||
::<math> \frac{dp_2(\infty)}{dt} = \alpha p_1(\infty) - \beta p_2(\infty) = 0\, </math> | ::<math> \frac{dp_2(\infty)}{dt} = \alpha p_1(\infty) - \beta p_2(\infty) = 0\, </math> | ||
55行目: | 55行目: | ||
となる。また微分方程式は解析的に解けて、 | となる。また微分方程式は解析的に解けて、 | ||
::<math>p_1(t) = \left( | ::<math>p_1(t) = \left(p_1(0)-\frac{\beta}{\alpha+\beta}\right) e^{-(\alpha+\beta)t} + \frac{\beta}{\alpha+\beta}\, </math> | ||
::<math>p_2(t) = \left( | ::<math>p_2(t) = \left(p_2(0)-\frac{\alpha}{\alpha+\beta}\right) e^{-(\alpha+\beta)t} + \frac{\alpha}{\alpha+\beta}\, </math> | ||
となる。 これらの式は次のことを示している。 | となる。 これらの式は次のことを示している。 | ||
#''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''<sub>2</sub>(''t'')はそれぞれ指数関数的に''p''<sub>1</sub>(∞)と''p''<sub>2</sub>(∞)に近づいていく | #''p''<sub>1</sub>(''t'')と''p''<sub>2</sub>(''t'')はそれぞれ指数関数的に''p''<sub>1</sub>(∞)と''p''<sub>2</sub>(∞)に近づいていく | ||
# | #その時定数(time constant)τは1/(α+β)である | ||
#これらの値''p''<sub>1</sub>(∞)、''p''<sub>2</sub>(∞)、τは、初期値''p''<sub>1</sub>(0)、''p''<sub>2</sub>(0)に依存しない。 | #これらの値''p''<sub>1</sub>(∞)、''p''<sub>2</sub>(∞)、τは、初期値''p''<sub>1</sub>(0)、''p''<sub>2</sub>(0)に依存しない。 | ||
さらに、 | さらに、 | ||
::<math>q_1(t) = | ::<math>q_1(t) = p_1(t) - \frac{\beta}{\alpha+\beta}\, </math> | ||
::<math>q_2(t) = | ::<math>q_2(t) = p_2(t) - \frac{\alpha}{\alpha+\beta}\, </math> | ||
と表すとすると、 | と表すとすると、 | ||
78行目: | 78行目: | ||
== 電位固定法: 基礎となった技術* == | == 電位固定法: 基礎となった技術* == | ||
Hodgkin-Huxley以前に、電気生理学の実験が行われていなかったわけではない。電流と電位変化に関する研究はかなり多く行われていた。しかしながら、細胞にはいろいろなイオンチャネルを通して電流が流れるため、細胞の電位''v''と外部から流す電流''I''<sub>ext</sub> | Hodgkin-Huxley以前に、電気生理学の実験が行われていなかったわけではない。電流と電位変化に関する研究はかなり多く行われていた。しかしながら、細胞にはいろいろなイオンチャネルを通して電流が流れるため、細胞の電位''v''と外部から流す電流''I''<sub>ext</sub>の間の関係は、単純ではない。そこでHodgkinとHuxleyは、 voltage clamp(電位固定法)を用いて、コンダクタンスの変化を測定して解析した。 voltage clampは1940年代にアメリカの生物物理学者Kenneth Cole (1900 - 1984)らにより開発された。 | ||
以下は数式的な説明。<br> | 以下は数式的な説明。<br> | ||
88行目: | 88行目: | ||
::<math>\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{C}\left(\sum_X G_{X}(v-E_X) - I_{ext}\right)</math> | ::<math>\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{C}\left(\sum_X G_{X}(v-E_X) - I_{ext}\right)</math> | ||
''v'' | ''v''が一定となるような外部電流''I''<sub>clamp</sub>を流すと、左辺は0となるため、 | ||
::<math> I_{clamp} = \sum_X G_X (v - E_X)\, </math> | ::<math> I_{clamp} = \sum_X G_X (v - E_X)\, </math> | ||
という関係が得られる。もし溶液の組成を工夫しさらにチャネルのブロッカーなどを用いて、イオンチャネル''A''を流れる電流を単離して測れたとすると、 | |||
::<math>I_{clamp} = G_A (v - E_A)\, </math> | ::<math>I_{clamp} = G_A (v - E_A)\, </math> | ||
となる。これはOhmの法則である。ここで''I''<sub>clamp</sub>は実験の測定値、''v''は実験の設定値、''E''<sub>A</sub> | となる。これはOhmの法則である。ここで''I''<sub>clamp</sub>は実験の測定値、''v''は実験の設定値、''E''<sub>A</sub>は実験条件で定まる定数なので、 | ||
::<math>G_{A} = \frac{I_{clamp}}{v-E_A}\, </math> | ::<math>G_{A} = \frac{I_{clamp}}{v-E_A}\, </math> | ||
の関係式を用いて、実験データよりイオンチャネル''A''のコンダクタンス''G''<sub>A</sub>を算出できることになる。 | |||
== HHモデルに対する批判 == | == HHモデルに対する批判 == |
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