「抑制性シナプス」の版間の差分

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===シナプス前部(プレシナプス)===
===シナプス前部(プレシナプス)===
====GABA作動性シナプス====
====GABA作動性シナプス====
 GABA作動性ニューロンには、グルタミン酸からGABAを合成するグルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase: GAD)が存在する。GADには、GAD65とGAD67の二つのアイソフォームがあり、GABA作動性ニューロン特異的に発現している(Dupuy & Houser, 1996)。GAD65は神経終末部に限局している一方、GAD67は細胞体などにも存在し、GABA合成において主要な役割を担っている(Asada et al., 1997)。また、GAD67はパルブアルブミン陽性の介在ニューロンに強い発現がみられる(Fukuda et al., 1997)。合成されたGABAは、液胞型ATPアーゼ(vacuolar-type H+‐ATPase: V-ATPase)によってできるH+濃度勾配および電位勾配に従い、小胞抑制性アミノ酸輸送体(vesicular inhibitory amino acid transporter: VIAAT)注1によって、シナプス小胞に充填される(Chaudhry et al., 1998; Wajcik et al., 2006)。そして、シナプス間隙に開口放出されたGABAは、ニューロンおよびグリア細胞の細胞膜に存在するGABA輸送体(GABA transporter: GAT)によって回収される(Conti et al., 2004)。また、Gタンパク質共役型受容体であるGABA<sub>B</sub>受容体は、K+チャネルを開口させて神経終末を過分極させると共に、Ca2+チャネルを閉口させて伝達物質の放出を抑制する(2.4にて詳述)。
 GABA作動性ニューロンには、グルタミン酸からGABAを合成するグルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic acid decarboxylase: GAD)が存在する。GADには、GAD65とGAD67の二つのアイソフォームがあり、GABA作動性ニューロン特異的に発現している(Dupuy & Houser, 1996)。GAD65は神経終末部に限局している一方、GAD67は細胞体などにも存在し、GABA合成において主要な役割を担っている(Asada et al., 1997)。また、GAD67はパルブアルブミン陽性の介在ニューロンに強い発現がみられる(Fukuda et al., 1997)。合成されたGABAは、液胞型ATPアーゼ(vacuolar-type H+‐ATPase: V-ATPase)によってできるH+濃度勾配および電位勾配に従い、小胞抑制性アミノ酸輸送体(vesicular inhibitory amino acid transporter: VIAAT)注1によって、シナプス小胞に充填される(Chaudhry et al., 1998; Wajcik et al., 2006)。そして、シナプス間隙に開口放出されたGABAは、ニューロンおよびグリア細胞の細胞膜に存在するGABA輸送体(GABA transporter: GAT)によって回収される(Conti et al., 2004)。また、Gタンパク質共役型受容体であるGABA<sub>B</sub>受容体は、K+チャネルを開口させて神経終末を過分極させると共に、Ca<sup>2+</sup>チャネルを閉口させて伝達物質の放出を抑制する(2.4にて詳述)。


====グリシン作動性シナプス====
====グリシン作動性シナプス====
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===GABA<sub>B</sub>受容体を介した抑制作用===
===GABA<sub>B</sub>受容体を介した抑制作用===
 Gi/o共役型受容体であるGABA<sub>B</sub>受容体は、興奮性と抑制性を問わず、シナプス前終末、シナプス後膜、シナプス外領域のいずれの細胞膜にも存在しており、抑制性シナプスでは特にシナプス後膜に強い発現がみられる(Gonchar et al., 2001)。GABA<sub>B</sub>受容体はGタンパク質を介してK+チャネルを開口させることで、細胞膜を過分極させる。また、Gタンパク質を介して電位依存性Ca2+チャネルを閉口させる。そのため、神経終末では活動電位が到達しても伝達物質の放出が起こりにくくなり、GABA作動性神経終末においては、自ら放出したGABAによってその後の放出を抑制する自己受容体(autoreceptor)として働く。また、GABA<sub>B</sub>受容体を介した応答は、GABA<sub>A</sub>受容体やグリシン受容体などのイオンチャネル型受容体よりも遅く、長い時間スケールでの抑制作用を持つことが知られている(Gassmann & Bettler, 2012)。
 Gi/o共役型受容体であるGABA<sub>B</sub>受容体は、興奮性と抑制性を問わず、シナプス前終末、シナプス後膜、シナプス外領域のいずれの細胞膜にも存在しており、抑制性シナプスでは特にシナプス後膜に強い発現がみられる(Gonchar et al., 2001)。GABA<sub>B</sub>受容体はGタンパク質を介してK+チャネルを開口させることで、細胞膜を過分極させる。また、Gタンパク質を介して電位依存性Ca<sup>2+</sup>チャネルを閉口させる。そのため、神経終末では活動電位が到達しても伝達物質の放出が起こりにくくなり、GABA作動性神経終末においては、自ら放出したGABAによってその後の放出を抑制する自己受容体(autoreceptor)として働く。また、GABA<sub>B</sub>受容体を介した応答は、GABA<sub>A</sub>受容体やグリシン受容体などのイオンチャネル型受容体よりも遅く、長い時間スケールでの抑制作用を持つことが知られている(Gassmann & Bettler, 2012)。


===GABAおよびグリシン作動性シナプスの相違点===
===GABAおよびグリシン作動性シナプスの相違点===
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*[[GABA輸送体]]
*[[GABA輸送体]]
*[[Gタンパク質共役型受容体]]
*[[Gタンパク質共役型受容体]]
*[[Ca2+チャネル]]
*[[Ca2+チャネル|Ca<sup>2+</sup>チャネル]]
*[[K+チャネル]]
*[[K+チャネル|K<sup>+</sup>チャネル]]
*[[グリシン]]
*[[グリシン]]
*[[セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ]]
*[[セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ]]
*[[アストロサイト]]
*[[アストロサイト]]
*[[グリシン輸送体]]
*[[グリシン輸送体]]
*[[GABA<sub>A</sub>受容体]]
*[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]
*[[グリシン受容体]]
*[[グリシン受容体]]
*[[イオンチャネル]]
*[[イオンチャネル]]
*[[GABA<sub>B</sub>受容体]]
*[[GABAB受容体|GABA<sub>B</sub>受容体]]
*[[開口放出]]
*[[開口放出]]
*[[神経伝達物質]]
*[[神経伝達物質]]
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*[[短絡効果]]
*[[短絡効果]]
*[[脱分極]]
*[[脱分極]]
*[[Cl-/HCO3-交換輸送体]]
*[[Cl-/HCO3-交換輸送体|Cl<sup>-</sup>/HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>交換輸送体]]
*[[K+-Cl-共輸送体(KCC) ]]
*[[K+-Cl-共輸送体(KCC)|K<sup>+</sup>-Cl<sup>-</sup>共輸送体(KCC) ]]
*[[Na+-K+-Cl-共輸送体(NKCC)]]
*[[Na+-K+-Cl-共輸送体(NKCC)|Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup>-Cl<sup>-</sup>共輸送体(NKCC)]]
*[[興奮性シナプス後電位(EPSP)]]
*[[興奮性シナプス後電位(EPSP)]]
*[[Gi/o共役型受容体]]
*[[Gi/o共役型受容体|<sub>G</sub>i/<sub>o</sub>共役型受容体]]
*[[Gタンパク質]]
*[[Gタンパク質]]
*[[K+チャネル]]
*[[電位依存性Ca2+チャネル|電位依存性Ca<sup>2+</sup>チャネル]]
*[[電位依存性Ca2+チャネル]]
*[[自己受容体(autoreceptor)]]
*[[自己受容体(autoreceptor)]]
*[[中枢神経系]]
*[[中枢神経系]]

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