「間脳の発生」の版間の差分

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== 比較形態学・発生学からみた間脳の形態 ==
== 比較形態学・発生学からみた間脳の形態 ==
間脳の領域構成については、形態学、組織学、そして発生学の観点から様々な研究が行われてきた。Rendahl(1924)は間脳がsynencephalonとposterior/anterior parencephalonに分けられることを指摘している<ref>'''Rendahl H'''<br>Embryologische und morphologische Studien u¨ ber das Zwischenhirn beim Huhn<br>''Acta Zool 5:241–344.'':1924</ref>。近年の分子発生学の発展に伴い、ニワトリやマウス、アフリカツメガエル等を用いて、間脳の領域が転写因子などの領域マーカー遺伝子の発現と照らし合わせて調べられ、発生期にみられるプロソメアとの対応関係が示されてきた。synencephalonとposterior/anterior parencephalonはプロソメア1とプロソメア2/3におおよそ対応している。プロソメア1に含まれる領域はさらにprecommissural、juxtacommissural、commissuralの三つの領域に細分されている<ref name=ref8 /><ref name=ref20><pubmed> 22949352 </pubmed></ref>。
間脳の領域構成については、形態学、組織学、そして発生学の観点から様々な研究が行われてきた。Rendahl(1924)は間脳がsynencephalonとposterior/anterior parencephalonに分けられることを指摘している<ref>'''Rendahl H'''<br>Embryologische und morphologische Studien über das Zwischenhirn beim Huhn<br>''Acta Zool 5:241–344.'':1924 [[media:Rendahl Acta Zoologica.pdf|PDF]]</ref>。近年の分子発生学の発展に伴い、ニワトリやマウス、アフリカツメガエル等を用いて、間脳の領域が転写因子などの領域マーカー遺伝子の発現と照らし合わせて調べられ、発生期にみられるプロソメアとの対応関係が示されてきた。synencephalonとposterior/anterior parencephalonはプロソメア1とプロソメア2/3におおよそ対応している。プロソメア1に含まれる領域はさらにprecommissural、juxtacommissural、commissuralの三つの領域に細分されている<ref name=ref8 /><ref name=ref20><pubmed> 22949352 </pubmed></ref>。


 こうした知見を基に、現在では、成体の羊膜類、両生類、魚類の間脳は後ろから視蓋前域(Pretectum)、視床(Thalamus)、視床前域(Prethalamus)に分けられており、これらはそれぞれプロソメア1、2、3の背側要素(翼板)に対応している<ref name=ref1 /><ref name=ref2 /><ref name=ref6 /><ref name=ref7 /><ref name=ref8 /><ref name=ref20 /><ref><pubmed> 10195307 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10342441 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11567052 </pubmed></ref>。これらの構成は解剖学の教科書に見られる形態学的単位と対応しない場合がある。例えば従来の考えでは視蓋前域と松果体は共に視床上部に含まれているが、後者では視蓋前域(プロソメア1)と松果体(プロソメア2)は異なる領域である。また、腹側視床と視床(背側視床)は視床前域と視床という名称に変更されている<ref name=ref2 />。最近の比較形態学的研究や発生学的研究ではプロソメアに基づくモデルが使われる場合が多いようである。プロソメアはPuellesとRubensteinによって発表されてから、間脳から終脳をカバーする大規模な分節として、菱脳のロンボメアと同じく重要な脳分節として捉えられてきた。プロソメア1から3の三つについては、現在ではこれらの領域は多くの研究者によって認められている。ただし、プロソメア3より前方にあるコンパートメントについては、現在も議論が続けられている(6、視床下部と終脳に関する発生基盤参照)。
 こうした知見を基に、現在では、成体の羊膜類、両生類、魚類の間脳は後ろから視蓋前域(Pretectum)、視床(Thalamus)、視床前域(Prethalamus)に分けられており、これらはそれぞれプロソメア1、2、3の背側要素(翼板)に対応している<ref name=ref1 /><ref name=ref2 /><ref name=ref6 /><ref name=ref7 /><ref name=ref8 /><ref name=ref20 /><ref><pubmed> 10195307 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10342441 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11567052 </pubmed></ref>。これらの構成は解剖学の教科書に見られる形態学的単位と対応しない場合がある。例えば従来の考えでは視蓋前域と松果体は共に視床上部に含まれているが、後者では視蓋前域(プロソメア1)と松果体(プロソメア2)は異なる領域である。また、腹側視床と視床(背側視床)は視床前域と視床という名称に変更されている<ref name=ref2 />。最近の比較形態学的研究や発生学的研究ではプロソメアに基づくモデルが使われる場合が多いようである。プロソメアはPuellesとRubensteinによって発表されてから、間脳から終脳をカバーする大規模な分節として、菱脳のロンボメアと同じく重要な脳分節として捉えられてきた。プロソメア1から3の三つについては、現在ではこれらの領域は多くの研究者によって認められている。ただし、プロソメア3より前方にあるコンパートメントについては、現在も議論が続けられている(6、視床下部と終脳に関する発生基盤参照)。

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