「髄芽腫」の版間の差分

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===グループ2(SHH型)===
===グループ2(SHH型)===
 [[SHH型髄芽腫]]は[[SHH]]シグナル伝達経路おける遺伝子変異が特徴的である。主な遺伝子変異は''[[PTCH1]]''、''[[SMO]]''、''[[SUFU]]''、[[GLI2]]あるいは''[[MYCN]]''などで高頻度に観察される<ref name=Pugh2012><pubmed>22820256</pubmed></ref><ref name=Robinson2012><pubmed>22722829</pubmed></ref> 。そのためマウスを用いた研究を基に、SHHシグナルを活性化する膜タンパク[[Smoothened]]の機能阻害剤<ref name=Romer2004><pubmed>15380514</pubmed></ref> など、SHHシグナル伝達経路の抑制が化学療法の候補として考えられ、実際に適用され始めている<ref name=Robinson2015><pubmed>26169613</pubmed></ref><ref name=Rudin2009><pubmed>19726761</pubmed></ref> 。病理学的には、小脳半球の表層上に観察され、小細胞性のものや大細胞性のものなど様々である一方、結節型の腫瘍はほぼSHH型髄芽腫に属する。
 [[SHH型髄芽腫]]は[[ソニック・ヘッジホッグ]] ([[SHH]])シグナル伝達経路おける遺伝子変異が特徴的である。主な遺伝子変異は''[[PTCH1]]''、''[[SMO]]''、''[[SUFU]]''、[[GLI2]]あるいは''[[MYCN]]''などで高頻度に観察される<ref name=Pugh2012><pubmed>22820256</pubmed></ref><ref name=Robinson2012><pubmed>22722829</pubmed></ref> 。そのためマウスを用いた研究を基に、SHHシグナルを活性化する膜タンパク[[Smoothened]]の機能阻害剤<ref name=Romer2004><pubmed>15380514</pubmed></ref> など、SHHシグナル伝達経路の抑制が化学療法の候補として考えられ、実際に適用され始めている<ref name=Robinson2015><pubmed>26169613</pubmed></ref><ref name=Rudin2009><pubmed>19726761</pubmed></ref> 。病理学的には、小脳半球の表層上に観察され、小細胞性のものや大細胞性のものなど様々である一方、結節型の腫瘍はほぼSHH型髄芽腫に属する。


 遺伝子組換えマウスを用いた豊富な研究から、SHH型は小脳[[顆粒細胞]]から生じるとされ<ref name=Yang2008><pubmed>18691548</pubmed></ref><ref name=Schuller2008><pubmed>18691547</pubmed></ref> 、WNT型とは異なる。小児だけでなく成人でも生じるが、遺伝子発現など分子的な特性がお互い異なることから<ref name=Kool2014><pubmed>24651015</pubmed></ref> 、成人髄芽腫は異なる細胞種から生じる可能性もある。またがん抑制遺伝子''[[TP53]]''の機能欠損変異がみられる腫瘍は非常に予後が不良で、最新のWHO区分でも予後不良の遺伝子型として特別に分類されている<ref name=Pickles2018><pubmed>28949028</pubmed></ref> 。
 遺伝子組換えマウスを用いた豊富な研究から、SHH型は小脳[[顆粒細胞]]から生じるとされ<ref name=Yang2008><pubmed>18691548</pubmed></ref><ref name=Schuller2008><pubmed>18691547</pubmed></ref> 、WNT型とは異なる。小児だけでなく成人でも生じるが、遺伝子発現など分子的な特性がお互い異なることから<ref name=Kool2014><pubmed>24651015</pubmed></ref> 、成人髄芽腫は異なる細胞種から生じる可能性もある。またがん抑制遺伝子''[[TP53]]''の機能欠損変異がみられる腫瘍は非常に予後が不良で、最新のWHO区分でも予後不良の遺伝子型として特別に分類されている<ref name=Pickles2018><pubmed>28949028</pubmed></ref> 。
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=== 化学療法 ===
=== 化学療法 ===
 標準リスク群では[[wj:アルキル化剤|アルキル化剤]]に分類される[[wj:シクロフォスファミド|シクロフォスファミド]](cyclophosphamide), [[wj:プラチナ製剤|プラチナ製剤]]である[[wj:シスプラチン|シスプラチン]](cisplatin), [[wj:微小管|微小管]]重合の[[阻害剤]]である[[wj:ビンクリスチン|ビンクリスチン]](vincristine), [[wj:トポイソメラーゼⅡ|トポイソメラーゼⅡ]]阻害剤である[[エトポシド]](etoposide)を組み合わせた化学療法([[ICE療法]]や[[PackerBレジメン]]と呼ばれている)に[[wj:メトトレキサート|メトトレキサート]](Methotrexate, MTX)を髄注するプロトコールを用いて行われ<ref name=Packer2006><pubmed>16943538</pubmed></ref> 、高リスク群ではそれらのプロトコールに加え[[wj:ナイトロジェン・マスタード|ナイトロジェン・マスタード]]系の[[wj:アルキル化剤|アルキル化剤]]である[[wj:チオテパ|チオテパ]](Thiotepa)やアルキル化剤に分類される抗がん剤である[[wj:メルファラン|メルファラン]](Melphalan,L-PAM)を用いた大量化学療法を行うレジメンが行われている。
 標準リスク群では[[wj:アルキル化剤|アルキル化剤]]に分類される[[wj:シクロフォスファミド|シクロフォスファミド]](cyclophosphamide), [[wj:プラチナ製剤|プラチナ製剤]]である[[wj:シスプラチン|シスプラチン]](cisplatin), [[微小管]]重合の[[阻害剤]]である[[wj:ビンクリスチン|ビンクリスチン]](vincristine), [[wj:トポイソメラーゼⅡ|トポイソメラーゼⅡ]]阻害剤である[[エトポシド]](etoposide)を組み合わせた化学療法([[ICE療法]]や[[PackerBレジメン]]と呼ばれている)に[[wj:メトトレキサート|メトトレキサート]](Methotrexate, MTX)を髄注するプロトコールを用いて行われ<ref name=Packer2006><pubmed>16943538</pubmed></ref> 、高リスク群ではそれらのプロトコールに加え[[wj:ナイトロジェン・マスタード|ナイトロジェン・マスタード]]系の[[wj:アルキル化剤|アルキル化剤]]である[[wj:チオテパ|チオテパ]](Thiotepa)やアルキル化剤に分類される抗がん剤である[[wj:メルファラン|メルファラン]](Melphalan,L-PAM)を用いた大量化学療法を行うレジメンが行われている。


 またサブグループの発見後はサブグループ毎に分子標的薬の臨床研究も海外では行われており、SHH typeの髄芽腫に対してSHHのpathwayの一つであるSMOの阻害剤である[[wj:ビスモデギブ|ビスモデギブ]]を使用した臨床試験の報告が報告されており、有効例が報告されている<ref name=Robinson2015><pubmed>26169613</pubmed></ref> 。
 またサブグループの発見後はサブグループ毎に分子標的薬の臨床研究も海外では行われており、SHH typeの髄芽腫に対してSHHのpathwayの一つであるSMOの阻害剤である[[wj:ビスモデギブ|ビスモデギブ]]を使用した臨床試験の報告が報告されており、有効例が報告されている<ref name=Robinson2015><pubmed>26169613</pubmed></ref> 。

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