「SYNGAP1」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
121 バイト追加 、 2019年10月8日 (火)
19行目: 19行目:


== 構造 ==
== 構造 ==
N末端側から、PHドメイン、C2ドメイン、GAPドメイン、SH3 結合配列、Coiled-coilドメイン、PDZリガンド(1アイソフォームのみ)を持つ(Fig.1) <ref name=Chen1998><pubmed>9620694</pubmed></ref><ref name=Kim1998><pubmed>9581761</pubmed></ref> 。SH3結合配列とCoiled-coilドメインの間の配列、およびCoiled-coilドメインは、[[CaMKII]], Plk2, [[cdk]]5等によりリン酸化される<ref name=Lee2011><pubmed>21382555</pubmed></ref><ref name=Oh2004><pubmed>14970204</pubmed></ref> 。Coiled-coilドメイン、PDZリガンドはPSD-95との液体―液体相転移現象に必須である<ref name=Zeng2016><pubmed>27565345</pubmed></ref> 。これらのCaMKIIリン酸化サイト、coiled-coilドメイン、PDZリガンドはシナプス可塑性(長期増強)の発現に必要である<ref name=Araki2015><pubmed>25569349</pubmed></ref><ref name=Zeng2016><pubmed>27565345</pubmed></ref> 。
 N末端側から、PHドメイン、C2ドメイン、GAPドメイン、SH3 結合配列、コイルドコイルドメイン、PDZリガンド(&alpha;1アイソフォームのみ)を持つ('''図1''') <ref name=Chen1998><pubmed>9620694</pubmed></ref><ref name=Kim1998><pubmed>9581761</pubmed></ref> 。SH3結合配列とコイルドコイルドドメインの間の配列、およびコイルドコイルドドメインは、[[CaMKII]]、Plk2、[[cdk5]]等によりリン酸化される<ref name=Lee2011><pubmed>21382555</pubmed></ref><ref name=Oh2004><pubmed>14970204</pubmed></ref> 。コイルドコイルドドメイン、PDZリガンドはPSD-95との液体―液体相転移現象に必須である<ref name=Zeng2016><pubmed>27565345</pubmed></ref> 。これらのCaMKIIリン酸化サイト、コイルドコイルドドメイン、PDZリガンドはシナプス可塑性(長期増強)の発現に必要である<ref name=Araki2015><pubmed>25569349</pubmed></ref><ref name=Zeng2016><pubmed>27565345</pubmed></ref> 。


=== PH-C2ドメイン ===
=== PH-C2ドメイン ===
一般的にはリン脂質等の生体膜脂質への結合部位と考えられているが、SYNGAPにおいて特定の分子は同定されていない。C2ドメインはRapGAP活性に必須である<ref name=Pena2008><pubmed>18323856</pubmed></ref> 。
 一般的にはリン脂質等の生体膜脂質への結合部位と考えられているが、SYNGAPにおいて特定の分子は同定されていない。C2ドメインはRapGAP活性に必須である<ref name=Pena2008><pubmed>18323856</pubmed></ref> 。


=== GAPドメイン ===
=== GAPドメイン ===
RasおよびRapGAP活性を持つと考えられている<ref name=Chen1998><pubmed>9620694</pubmed></ref><ref name=Kim1998><pubmed>9581761</pubmed></ref> 。その基質特異性はCaMKIIによるリン酸化により制御されている<ref name=Walkup2015><pubmed>25533468</pubmed></ref> 。神経細胞内でRacGAPを制御しているという報告もあるが、その活性はRasGAP活性を介するものであるとされている(Ras-Tiam1-[[Rac]]1経路)<ref name=Carlisle2008><pubmed>19074040</pubmed></ref> 。
 RasおよびRapGAP活性を持つと考えられている<ref name=Chen1998><pubmed>9620694</pubmed></ref><ref name=Kim1998><pubmed>9581761</pubmed></ref> 。その基質特異性はCaMKIIによるリン酸化により制御されている<ref name=Walkup2015><pubmed>25533468</pubmed></ref> 。神経細胞内でRacGAPを制御しているという報告もあるが、その活性はRasGAP活性を介するものであるとされている(Ras-Tiam1-[[Rac]]1経路)<ref name=Carlisle2008><pubmed>19074040</pubmed></ref> 。


=== Coiled-coil領域 ===
=== コイルドコイルド領域 ===
PSD-95との液体-液体相転移に必須の領域で、他の液体-液体相転移を引き起こすタンパクと同様、決まった3次構造を取りにくいIntrinsically disordered regionで、他のタンパクと多価結合を引き起こす。SYNGAP 3分子はこの領域でβヘリックスが絡み合ったようなトライマーを形成する。ゲルろ過法を用いた解析によりin vitroでここに2分子のPSD-95が結合することが分かっている<ref name=Zeng2016><pubmed>27565345</pubmed></ref> 。
 PSD-95との液-液相分離に必須の領域で、他の液-液相分離を引き起こすタンパクと同様、決まった3次構造を取りにくい天然変性領域で、他のタンパクと多価結合を引き起こす。SYNGAP 3分子はこの領域でβヘリックスが絡み合ったような三量体を形成する。ゲルろ過法を用いた解析によりin vitroでここに2分子のPSD-95が結合することが分かっている<ref name=Zeng2016><pubmed>27565345</pubmed></ref> 。


=== PDZ ligand ===  
=== PDZ ligand ===  
1 isoformのみ、-FPPWVQQTRVというPDZリガンドを含むC末端を持ち、[[PSD-95]], SAP-97等のMAGUK family proteinsと結合することが知られている。
 &alpha;1アイソフォームのみ、-FPPWVQQTRVというPDZリガンドを含むC末端を持ち、[[PSD-95]]、SAP-97等のMAGUKファミリータンパク質と結合することが知られている。
In vitroの結果によると、PSD-95のPDZ1,2ドメインより、PDZ3ドメインに強く結合する。これは、PSD-95 PDZ3のC末のαCへリックスが結合を安定化するからだとされている。SYNGAP1の(-3)T-V(0)が、PSD-95のPDZ3ドメイン(B/ B groove)と通常のPDZ結合をするのに加え、 SYNGAP1(-9)F-V(-5)がPSD-95のαCへリックスが作る疎水性ポケットに入り、結合が安定化される<ref name=Zeng2016><pubmed>27565345</pubmed></ref> 。
In vitroの結果によると、PSD-95のPDZ1、2ドメインより、PDZ3ドメインに強く結合する。これは、PSD-95 PDZ3のC末のαCへリックスが結合を安定化するからだとされている。SYNGAP1の(-3)T-V(0)が、PSD-95のPDZ3ドメイン(&alpha;B/ &beta;B groove)と通常のPDZ結合をするのに加え、 SYNGAP1(-9)F-V(-5)がPSD-95のαCへリックスが作る疎水性ポケットに入り、結合が安定化される<ref name=Zeng2016><pubmed>27565345</pubmed></ref> 。


=== スプライシングアイソフォーム ===
=== スプライシングアイソフォーム ===
N末端に長いほうから順にA, B, Cの3つのアイソフォームがあり、一番短いCアイソフォームはPHドメインの一部が欠失している (Fig.1)。
N末端に長いほうから順にA, B, Cの3つのアイソフォームがあり、一番短いCアイソフォームはPHドメインの一部が欠失している (図1)。
C末端には1, 2, ,  の4つのアイソフォームがある<ref name=Li2001><pubmed>11278737</pubmed></ref><ref name=McMahon2012><pubmed>22692543</pubmed></ref> 。1だけがPDZ ligandを有し、前述したCaMKIIを介したシナプス可塑性制御や、液体ー液体相転移現象にかかわっている。
C末端には&alpha;1、&alpha;2、&beta;、&gamma;の4つのアイソフォームがある<ref name=Li2001><pubmed>11278737</pubmed></ref><ref name=McMahon2012><pubmed>22692543</pubmed></ref> 。&alpha;1だけがPDZ ligandを有し、前述したCaMKIIを介したシナプス可塑性制御や、液-液相分離現象にかかわっている。


== ファミリー ==
== ファミリー ==

案内メニュー