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[[トランスクリプトーム]](transcriptome)は、細胞中に存在する全ての[[転写]]産物(タンパク質をコードする[[mRNA]]、タンパク質をコードしない[[ノンコーディングRNA]]、[[マイクロRNA]]など)の総体である<ref><pubmed>19015660</pubmed></ref><ref><pubmed>31341269</pubmed></ref>。トランスクリプトームは、[[ゲノム]]とは異なり、同一の個体でも、組織ごとに、更には発生段階や細胞外環境や刺激によって変化する。トランスクリプトームは、同質あるいは異質の多数の細胞集団(組織、[[培養細胞]])から[[RNA]]抽出後、[[cDNA]]に変換し、それを1990年代に出現した[[DNAマイクロアレイ]]のように数多くの既知mRNAを識別する技術によって解析されるようになった。その後、[[次世代シーケンサー]]の利用により、希少mRNAやノンコーディングRNAを含めた未知の転写産物の高感度検出が可能になるとともに、[[スプライシング]]で成熟していく過程のmRNAなど、転写産物の種類だけでなく、転写産物の構造的差異(スプライシングバリアント、[[SNPs]]、変異など)の解析もできるようになった。加えて、[[ヒト]]やモデル[[ | [[トランスクリプトーム]](transcriptome)は、細胞中に存在する全ての[[転写]]産物(タンパク質をコードする[[mRNA]]、タンパク質をコードしない[[ノンコーディングRNA]]、[[マイクロRNA]]など)の総体である<ref><pubmed>19015660</pubmed></ref><ref><pubmed>31341269</pubmed></ref>。トランスクリプトームは、[[ゲノム]]とは異なり、同一の個体でも、組織ごとに、更には発生段階や細胞外環境や刺激によって変化する。トランスクリプトームは、同質あるいは異質の多数の細胞集団(組織、[[培養細胞]])から[[RNA]]抽出後、[[cDNA]]に変換し、それを1990年代に出現した[[DNAマイクロアレイ]]のように数多くの既知mRNAを識別する技術によって解析されるようになった。その後、[[次世代シーケンサー]]の利用により、希少mRNAやノンコーディングRNAを含めた未知の転写産物の高感度検出が可能になるとともに、[[スプライシング]]で成熟していく過程のmRNAなど、転写産物の種類だけでなく、転写産物の構造的差異(スプライシングバリアント、[[SNPs]]、変異など)の解析もできるようになった。加えて、[[ヒト]]やモデル[[実験動物]]([[マウス]]、[[ゼブラフィッシュ]]、[[ショウジョウバエ]]、[[線虫]]など)だけでなく、多種多様な生物のトランスクリプトームの把握も可能になった。従来から行われてきた組織全体などの多数の細胞を対象としたRNA-seq(バルクRNA-seq)では、複数の細胞における転写産物の平均を観察しているが、本項目では個々の細胞における転写産物を解析するscRNA-seqの原理とその応用について概説する。 | ||
===開発史=== | ===開発史=== |