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RNAプロセシングを経て成熟したmRNAは、5’キャップ構造(m7Gppp)、5’非翻訳領域(5’ untranslated region, 5’UTR; 翻訳開始コドンより前の配列)、 コーディング領域 (coding sequence, CDS; アミノ酸配列をコードする配列)、3’ 非翻訳領域 (3’UTR; 翻訳終始コドンより後ろの配列)、ポリA配列によって構成される (図1)。成熟したmRNAは、核内から核膜孔を通って細胞質に運び出される。細胞質の成熟mRNAはタンパク質合成装置リボソームによって読み取られ、タンパク質が合成される。神経細胞では、多くのmRNAは細胞質から軸索・樹状突起・シナプス等の細胞小器官に運ばれ、局所翻訳を受ける。 | RNAプロセシングを経て成熟したmRNAは、5’キャップ構造(m7Gppp)、5’非翻訳領域(5’ untranslated region, 5’UTR; 翻訳開始コドンより前の配列)、 コーディング領域 (coding sequence, CDS; アミノ酸配列をコードする配列)、3’ 非翻訳領域 (3’UTR; 翻訳終始コドンより後ろの配列)、ポリA配列によって構成される (図1)。成熟したmRNAは、核内から核膜孔を通って細胞質に運び出される。細胞質の成熟mRNAはタンパク質合成装置リボソームによって読み取られ、タンパク質が合成される。神経細胞では、多くのmRNAは細胞質から軸索・樹状突起・シナプス等の細胞小器官に運ばれ、局所翻訳を受ける。 | ||
== | == 細胞内局在 == | ||
神経細胞では、分子と小器官の輸送メカニズムが高度に発達して、細胞体とシナプスを繋ぐ細胞内輸送システムがミトコンドリア・シナプス小胞・脂質・タンパク質等を両方向に運んでいる。mRNAの細胞内輸送に関しては、RNAとタンパク質から成る膜に囲まれない複合体である「RNA輸送顆粒」の状態で、微小管等の細胞骨格上を通って輸送される<ref name=Elvira2006><pubmed>16352523</pubmed></ref><ref name=Kanai2004><pubmed>15312650</pubmed></ref><ref name=Kar2018><pubmed>28593814</pubmed></ref><ref name=Krichevsky2001><pubmed>11719208</pubmed></ref> 。 | 神経細胞では、分子と小器官の輸送メカニズムが高度に発達して、細胞体とシナプスを繋ぐ細胞内輸送システムがミトコンドリア・シナプス小胞・脂質・タンパク質等を両方向に運んでいる。mRNAの細胞内輸送に関しては、RNAとタンパク質から成る膜に囲まれない複合体である「RNA輸送顆粒」の状態で、微小管等の細胞骨格上を通って輸送される<ref name=Elvira2006><pubmed>16352523</pubmed></ref><ref name=Kanai2004><pubmed>15312650</pubmed></ref><ref name=Kar2018><pubmed>28593814</pubmed></ref><ref name=Krichevsky2001><pubmed>11719208</pubmed></ref> 。 | ||
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=== 軸索におけるmRNA制御 === | === 軸索におけるmRNA制御 === | ||
1960年代には既に、軸索においてmRNA局在やタンパク質合成が起きているという示唆がなされていた<ref name= | 1960年代には既に、軸索においてmRNA局在やタンパク質合成が起きているという示唆がなされていた<ref name=Koenig1965a><pubmed>14333291</pubmed></ref><ref name=Koenig1965b><pubmed>14333292</pubmed></ref> 。しかし、1980-90年代における電子顕微鏡を用いた観察では、成熟した中枢神経系神経細胞の軸索内部にポリリボソームが認められなかった。ポリリボソームは翻訳に必須であるため、当時は、「哺乳動物の中枢神経系では成熟した軸索からは局所翻訳メカニズムが排除される」と結論づけられた<ref name=Steward1997><pubmed>9010200</pubmed></ref> 。 | ||
しかしその後、損傷した軸索の修復過程において軸索内でmRNAの局所翻訳が起きることがわかり、軸索修復におけるその重要性が示された。さらに、蛍光イメージング手法の発展に伴い、成熟した軸索における局所翻訳のin vivoでの証拠も多く報告されてきた。これらの発見から、軸索におけるmRNAの局所制御メカニズムと軸索損傷・修復とのつながりが改めて議論されている<ref name=Kalinski2015><pubmed>26180210</pubmed></ref><ref name=Shigeoka2016><pubmed>27321671</pubmed></ref><ref name=Taliaferro2016><pubmed>26907613</pubmed></ref> 。 | しかしその後、損傷した軸索の修復過程において軸索内でmRNAの局所翻訳が起きることがわかり、軸索修復におけるその重要性が示された。さらに、蛍光イメージング手法の発展に伴い、成熟した軸索における局所翻訳のin vivoでの証拠も多く報告されてきた。これらの発見から、軸索におけるmRNAの局所制御メカニズムと軸索損傷・修復とのつながりが改めて議論されている<ref name=Kalinski2015><pubmed>26180210</pubmed></ref><ref name=Shigeoka2016><pubmed>27321671</pubmed></ref><ref name=Taliaferro2016><pubmed>26907613</pubmed></ref> 。 |