「液-液相分離」の版間の差分

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== タンパク質の液-液相分離 ==
== タンパク質の液-液相分離 ==
 タンパク質の液-液相分離は、分子間での静電相互作用やπ-π相互作用、カチオン-π相互作用、疎水性相互作用、水素結合など多様な相互作用によって起こる。しかもタンパク質は温度などの溶液条件によって立体構造が変わることも多く、また、他のタンパク質やRNAと特異的に結合することもある。そのため、タンパク質の液-液相分離は温度やpH、塩濃度、他のタンパク質やRNAなどの存在など、多様な条件に影響を受ける。熱力学的な視点からは、エントロピー的にもエンタルピー的にも液-液相分離が駆動されるケースがある。複数のタンパク質やRNAからなる液滴は、液滴の中に液滴が形成されるようなケースもある<ref name=Lafontaine2021><pubmed>32873929</pubmed></ref>[18]。
 タンパク質の液-液相分離は、分子間での静電相互作用や[[π-π相互作用]]、[[カチオン-π相互作用]]、[[疎水性相互作用]]、[[水素結合]]など多様な相互作用によって起こる。しかもタンパク質は温度などの溶液条件によって立体構造が変わることも多く、また、他のタンパク質や[[RNA]]と特異的に結合することもある。そのため、タンパク質の液-液相分離は温度やpH、塩濃度、他のタンパク質やRNAなどの存在など、多様な条件に影響を受ける。熱力学的な視点からは、[[エントロピー]]的にも[[エンタルピー]]的にも液-液相分離が駆動されるケースがある。複数のタンパク質やRNAからなる液滴は、液滴の中に液滴が形成されるようなケースもある<ref name=Lafontaine2021><pubmed>32873929</pubmed></ref>[18]。


 天然変性タンパク質(Natively Unfolded Protein)は、明確な立体構造を持たずに柔軟なコンフォメーションをとるタンパク質のことをいう<ref name=Uversky2002><pubmed>11910019</pubmed></ref>[19]。天然変性タンパク質は本質的に無秩序なタンパク質(intrinsically disordered proteins)ということもある<ref name=Dunker2001><pubmed>11381529</pubmed></ref>[20]。タンパク質の立体構造を形成しない領域は天然変性領域(intrinsically disordered region, IDR)や低複雑性ドメイン(low complexity domain)と呼ばれることがある。天然変性領域はタンパク質の液-液相分離のために機能する領域である。
 [[天然変性タンパク質]](natively unfolded protein)は、明確な立体構造を持たずに柔軟なコンフォメーションをとるタンパク質のことをいう<ref name=Uversky2002><pubmed>11910019</pubmed></ref>[19]。天然変性タンパク質は本質的に無秩序なタンパク質([[intrinsically disordered proteins]])ということもある<ref name=Dunker2001><pubmed>11381529</pubmed></ref>[20]。タンパク質の立体構造を形成しない領域は[[天然変性領域]]([[intrinsically disordered region]], [[IDR]])や[[低複雑性ドメイン]](low complexity domain)と呼ばれることがある。天然変性領域はタンパク質の液-液相分離のために機能する領域である。


 天然変性タンパク質は、真核生物の持つタンパク質に多くみられる。30残基以上の天然変性領域を持つタンパク質は、ヒトの場合、30残基以上の天然変性領域を持つタンパク質は約44%と推定されている<ref name=van der Lee2014><pubmed>24773235</pubmed></ref>[21]。一方、天然変性タンパク質は真正細菌やアーキアにはあまり存在しない。
 天然変性タンパク質は、[[真核生物]]の持つタンパク質に多くみられる。30残基以上の天然変性領域を持つタンパク質は、[[ヒト]]の場合、約44%と推定されている<ref name=van der Lee2014><pubmed>24773235</pubmed></ref>[21]。一方、天然変性タンパク質は[[真正細菌]]や[[アーキア]]にはあまり存在しない。
 
 天然変性領域は荷電残基や[[極性アミノ酸]]に富んでおり、類似した配列が繰り返し存在するのが特徴である<ref name=Chong2018><pubmed>29913160</pubmed></ref>[22]。例えば、[[フェニルアラニン]]と[[グリシン]]が繰り返し現れる[[FGリピート]]や、[[アルギニン]]とグリシンが繰り返し現れる[[RGGリピート]]などのモチーフが知られている。天然変性タンパク質にはRNA結合ドメインを持っているものも多く、RNAと共に液-液相分離を形成するものがある。


 天然変性領域は荷電残基や極性アミノ酸に富んでおり、類似した配列が繰り返し存在するのが特徴である<ref name=Chong2018><pubmed>29913160</pubmed></ref>[22]。例えば、フェニルアラニンとグリシンが繰り返し現れるFGリピートや、アルギニンとグリシンが繰り返し現れるRGGリピートなどのモチーフが知られている。天然変性タンパク質にはRNA結合ドメインを持っているものも多く、RNAと共に液-液相分離を形成するものがある。
== 機能 ==
== 機能 ==
=== 代謝との関連 ===
=== 代謝との関連 ===

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