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核内受容体は通常2量体、ホモダイマー(ステロイド受容体)あるいはヘテロダイマー(RXRとPPARs, LXR, FXRなど)を形成して転写調節を行う(図2)。単量体でDNAに結合するもの(ERR, LRH1, SF1, NGFIB)もある。HNF4sやNGFIBは、リガンド結合とは無関係に活性化されており、これらはオーファン核内受容体と呼ばれる。 | 核内受容体は通常2量体、ホモダイマー(ステロイド受容体)あるいはヘテロダイマー(RXRとPPARs, LXR, FXRなど)を形成して転写調節を行う(図2)。単量体でDNAに結合するもの(ERR, LRH1, SF1, NGFIB)もある。HNF4sやNGFIBは、リガンド結合とは無関係に活性化されており、これらはオーファン核内受容体と呼ばれる。 | ||
== 核内受容体スーパーファミリー == | |||
== | ===分子系統樹に基づく分類=== | ||
ヒトで48の遺伝子(表1)、マウスで49の遺伝子にコードされる。分子系統樹から7つのサブファミリー(NR0~6)に分類され、個々の慣用名に対応する正式名がある<ref name="ref4"><pubmed>10219237</pubmed></ref>。サブファミリー0 (NR0)は、DNA結合領域(DBD, C領域)またはリガンド結合領域(LBD, E領域)の一方しか持たないもので、例えばSHPはLBDしか持たずNR0B2と呼ばれる。各サブファミリーはさらにA, B,,,のグループに分けられ、1つのグループはパラログによって構成される。例えば、甲状腺ホルモン受容体 (TR) はサブファミリー1グループA (NR1A)で、TRαはNR1A1, TRβはNR1A2となる。また、例えばNR5A1a (=SF1)とNR5A1b(ELP)とは、同じ遺伝子からスプライシングの違いによってできた異なったアイソフォームである。 | |||
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'''表1. ヒト核内受容体ファミリー''' 文献<ref name="ref3"><pubmed>18023286</pubmed></ref> <ref name="ref4"><pubmed>10219237</pubmed></ref>、[http://en.wikipedia.org/wiki/Nuclear_receptor Nuclear receptor Wikipedia 核内受容体]から作成。 | '''表1. ヒト核内受容体ファミリー''' 文献<ref name="ref3"><pubmed>18023286</pubmed></ref> <ref name="ref4"><pubmed>10219237</pubmed></ref>、[http://en.wikipedia.org/wiki/Nuclear_receptor Nuclear receptor Wikipedia 核内受容体]から作成。 | ||
=== 組織特異的発現パターンや生理的機能による分類 === | |||
組織特異的発現パターンや生理的機能から6群(クラスター)に分けられる(表2)<ref name="ref5"><pubmed>16923397</pubmed></ref> <ref name="ref6"><pubmed>22411605</pubmed></ref>。 | |||
== リガンド == | |||
リガンドからNRを分類すると、(1)ホルモンやビタミンをリガンドとする内分泌受容体、(2)配列相同性から発見され、後に生体内でのリガンドが同定されたもの、(3)リガンドの生体での機能が明らかでないもの、(4)リガンドの同定されていないものがある。 | |||
*カテゴリー(1):内分泌受容体 | |||
**ステロイドホルモン [ER, GR, MR, PR, AR](略称は表1を参照) | |||
**ビタミンD(ステロイドから生成)[VDR] | |||
**昆虫脱皮ホルモン(エクダイソンecdysone)(ステロイド骨格をもつ) | |||
**甲状腺ホルモン(tyrosineから生成)[TR] | |||
**レチノイド(ビタミンA):レチノイン酸など [RAR] | |||
*カテゴリー(2):脂質センサー | |||
**9-シスレチノイン酸:RXRのリガンド。RXRはVDR, TR, RAR, LXR, PPARなどとヘテロダイマーをつくる。 | |||
**oxysterols (コレステロール酸化物):LXRのリガンド。 | |||
**胆汁酸(胆汁中のステロイド誘導体):FXRのリガンド。 | |||
**脂肪酸、細胞内脂質代謝物:PPARs のリガンド。 | |||
**生体異物 (xenobiotics):CAR, PXRのリガンド。薬物代謝物で、肝臓のチトクローム酵素P450によって生成される。 | |||
*カテゴリー(3) | |||
**androstane(男性ホルモン代謝中間体):CARに結合。 | |||
**脂肪酸:HNF-4a, gに結合。 | |||
**リン酸化脂質(ホスファチジルイノシトール類):SF1/LRH1に結合。 | |||
**コレステロール、レチノイン酸:RORa,b,gに結合。 | |||
*カテゴリー(4):オーファン受容体<br> SHP, DAX1, TLX, PNR, GCNF, TR2,4, NGF1B, Rev-ErbAa,b, COUP-TFI,II,III | |||
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核内受容体のリガンドは、輸送蛋白質に結合して血中や体液中を運搬され、標的細胞の中へは単独で入り、細胞質に存在する核内受容体に結合する。例えば、グルココルチコイド受容体 (GR) は、細胞質でシャペロン蛋白質であるhsp90やp23と結合しており、リガンドが結合するとシャペロンから離れて核内に移行し、標的遺伝子の「グルココルチコイド応答エレメント(glucocorticoid response element: GRE)」と呼ばれるDNA配列に結合する<ref name="ref1" />(後述)。リガンドおよびDNAと結合したNRは、コアクチベーター蛋白質などと結合して、クロマチンの構造を変えて転写を調節する大きな複合体としてはたらく。また、細胞核内でリガンドと結合していないNRはコリプレッサー蛋白質と結合しており、標的遺伝子の転写を抑制している(図3)。NRは、細胞質蛋白質であるSMAD3やJNKとも相互作用する。AF-1領域にはリン酸化部位があり、リン酸化による活性調節を受ける。 | 核内受容体のリガンドは、輸送蛋白質に結合して血中や体液中を運搬され、標的細胞の中へは単独で入り、細胞質に存在する核内受容体に結合する。例えば、グルココルチコイド受容体 (GR) は、細胞質でシャペロン蛋白質であるhsp90やp23と結合しており、リガンドが結合するとシャペロンから離れて核内に移行し、標的遺伝子の「グルココルチコイド応答エレメント(glucocorticoid response element: GRE)」と呼ばれるDNA配列に結合する<ref name="ref1" />(後述)。リガンドおよびDNAと結合したNRは、コアクチベーター蛋白質などと結合して、クロマチンの構造を変えて転写を調節する大きな複合体としてはたらく。また、細胞核内でリガンドと結合していないNRはコリプレッサー蛋白質と結合しており、標的遺伝子の転写を抑制している(図3)。NRは、細胞質蛋白質であるSMAD3やJNKとも相互作用する。AF-1領域にはリン酸化部位があり、リン酸化による活性調節を受ける。 | ||
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