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Takumitsutsui (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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==== 自記式質問紙法 ==== | ==== 自記式質問紙法 ==== | ||
<pre>====自記式質問紙法====</pre> | <pre>====自記式質問紙法====</pre> | ||
1.Impact of Event Scale-Revised (IES-R) :改訂出来事インパクト尺度<br> Horowitsにより開発された出来事インパクト尺度をWeissらが改訂し作成した<ref>'''Weiss DS、Marmar CR'''<br>The Impact of Event Scale-revised<br>''Assessing Psychological Trauma and OTSD (2nd edition)'':168-189,2004</ref>自記式質問紙で、世界的に広く用いられている。最近1週間の22項目の症状についてその強度を0-4点で評価しする。飛鳥井らによって日本語版が作成され、信頼性と妥当性が検証されている<ref><pubmed>11923652</ref>。心理検査として診療報酬点数80点が認められている。 | 1.Impact of Event Scale-Revised (IES-R) :改訂出来事インパクト尺度<br> Horowitsにより開発された出来事インパクト尺度をWeissらが改訂し作成した<ref>'''Weiss DS、Marmar CR'''<br>The Impact of Event Scale-revised<br>''Assessing Psychological Trauma and OTSD (2nd edition)'':168-189,2004</ref>自記式質問紙で、世界的に広く用いられている。最近1週間の22項目の症状についてその強度を0-4点で評価しする。飛鳥井らによって日本語版が作成され、信頼性と妥当性が検証されている<ref><pubmed>11923652</ref>。心理検査として診療報酬点数80点が認められている。 | ||
2.The PTSD checkkist (PCL) :PTSDチェックリスト | 2.The PTSD checkkist (PCL) :PTSDチェックリスト | ||
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1.Clinician-Administered PTSD Scale (CAPS) :PTSD臨床診断面接尺度 | 1.Clinician-Administered PTSD Scale (CAPS) :PTSD臨床診断面接尺度 | ||
CAPSはアメリカのNational Center for PTSDの研究グループによって開発された構造化診断面接法<ref><pubmed>7712061</ref>で、最も精度の高い診断法として世界的に広く用いられている。一定のトレーニングを受けた面接者がDSM-Ⅳで示される17症状について既定の質問をし、症状の頻度と強度の両方をアンカーポイントにそって評価するものである。日本語版は飛鳥井らが作成し、その信頼性と妥当性が検証<ref>'''飛鳥井望、廣幡小百合、加藤寛ほか'''<br>CAPS(PTSD臨床診断面接尺度)日本語版の尺度特性<br>''トラウマティック・ストレス1'':47-53,2003</ref>されている。心理検査として診療報酬点数450点が認められている。 | CAPSはアメリカのNational Center for PTSDの研究グループによって開発された構造化診断面接法<ref><pubmed>7712061</ref>で、最も精度の高い診断法として世界的に広く用いられている。一定のトレーニングを受けた面接者がDSM-Ⅳで示される17症状について既定の質問をし、症状の頻度と強度の両方をアンカーポイントにそって評価するものである。日本語版は飛鳥井らが作成し、その信頼性と妥当性が検証<ref>'''飛鳥井望、廣幡小百合、加藤寛ほか'''<br>CAPS(PTSD臨床診断面接尺度)日本語版の尺度特性<br>''トラウマティック・ストレス1'':47-53,2003</ref>されている。心理検査として診療報酬点数450点が認められている。 | ||
2.Structured Clinical Interview for DSM-Ⅳ(SCID) : DSM-Ⅳのための構造化臨床面接 | 2.Structured Clinical Interview for DSM-Ⅳ(SCID) : DSM-Ⅳのための構造化臨床面接 | ||
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== 治療 == | == 治療 == | ||
<pre> | <pre>==治療==</pre> | ||
PTSDに対して、これまでさまざまな治療法が試みられてきた。ランダム化比較試験(RCT:Randomized Contorolled Trial)で有効性を証明された治療法に認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法:Eye Movement Desensitization and Reprocessing)、薬物療法がある。2005年のNICE(英国国立医療技術評価機構:National Institute for Health and Clinical Excellence)のガイドラインでは、心理療法( | PTSDに対して、これまでさまざまな治療法が試みられてきた。ランダム化比較試験(RCT:Randomized Contorolled Trial)で有効性を証明された治療法に認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法:Eye Movement Desensitization and Reprocessing)、薬物療法がある。2005年のNICE(英国国立医療技術評価機構:National Institute for Health and Clinical Excellence)のガイドラインでは、心理療法(CBTないしはEMDRを基本的な第一選択としている。薬物療法が推奨されるのは、心理療法を患者が望まない時や実施が困難は場合としている。また、2007年に示された全米アカデミーズ医学院PTSD治療評価委員のレポートでは、PTSDへの治療的有効性が確立されているのは曝露療法のみで、その他の心理療法、薬物療法の有効性に関するエビデンスは不十分と結論づけられている。<br> | ||
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=== 心理療法<br> === | |||
<pre>===心理療法=== | |||
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==== トラウマ焦点化認知行動療法 ==== | ==== トラウマ焦点化認知行動療法 ==== | ||
<pre>====トラウマ焦点化認知行動療法====</pre> | <pre>====トラウマ焦点化認知行動療法====</pre> | ||
トラウマ焦点化認知行動療法にはPE療法(長時間曝露療法ないし持続エクスポージャー療法と訳されている:prolonged exposure therapy)、認知処理療法(cognitive processing therapy:CPT)、認知療法(cognitive therapy:CT)、子供へのトラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBTと呼称している)などが含まれている。これら代表的なトラウマ焦点化認知行動療法について以下に解説する。 | |||
===== PE療法 ===== | ===== PE療法 ===== | ||
<pre>=====PE療法===== | <pre>=====PE療法===== | ||
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Foaが開発したPE療法は感情処理理論に基づいたPTSDの治療法である。週1回90-120分のセッションを10-15週で、 | Foaが開発したPE療法は感情処理理論に基づいたPTSDの治療法である。週1回90-120分のセッションを10-15週で、 心理教育、不安に対するための呼吸法、実生活内曝露、イメージ曝露、プロセッシング(非機能的認知の修正)を行う。多数のランダム化比較試験で有効性が証明されており、飛鳥井らが行った日本国内のランダム化比較試験においても有効性が証明されている<ref><pubmed>21171135 </ref>。 | ||
===== CPT ===== | ===== CPT ===== | ||
<pre>=====CPT===== | <pre>=====CPT===== | ||
</pre> | </pre> | ||
Resikらによって考案されたPTSDに特化した治療で、認知療法の技法に加えて、筆記と朗読による暴露が特徴とされる。レイプ被害者のPTSDを中心にエビデンスが蓄積され、現在はアメリカの復員軍人局でPE療法と共に推奨される治療法となっている。ランダム化比較試験でPE療法と比較して同等の治療効果が確認されている<ref><pubmed>12182270</ref>。 | |||
===== CT ===== | ===== CT ===== | ||
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<pre>=====子供へのトラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)===== | <pre>=====子供へのトラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)===== | ||
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子供のPTSDに対してエビデンスが最も蓄積されているのがTF-CBTである。これは曝露や対話を通じて記憶や状況などのトラウマ想起刺激に安全下に直面することを促し、また、PTSDの背景に存在している非機能的認知の修正を目指す治療である。心理教育、リラクゼーション、感情の同定と表出、トラウマナラティブ、非機能的認知の修正、親子セッションなどを行う。PE療法と比べてトラウマ記憶への曝露はゆるやかに行うことが特徴とされる。<br> | |||
==== EMDR ==== | ==== EMDR ==== | ||
<pre>====EMDR====</pre> | <pre>====EMDR====</pre> | ||
Shapiroが開発したEMDRはCBTと並び効果のある治療法で、海外での複数のランダム化比較試験でPTSDに対する有効性が証明されている。 8つの段階から構成され、1セッションは60-90分で実施される。状態の確認、心理教育の後、治療者が指をリズミックに左右に動かし、患者はそれを追視しながら、トラウマ体験の想起、肯定的な認知の想起、身体感覚の確認を行う。海外での複数のランダム化比較試験でPTSDに対する有効性が証明されている。 | |||
=== 薬物療法 === | === 薬物療法 === |
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