12
回編集
Ntakahashi (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Ntakahashi (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
1行目: | 1行目: | ||
英語名:Hebb's rule | |||
1949年カナダの心理学者であったDonald Hebb(ドナルド・ヘブ)が自らの著書『The Organization of Behavior』の中で唱えた仮説。同書の該当箇所には、 | 1949年カナダの心理学者であったDonald Hebb(ドナルド・ヘブ)が自らの著書『The Organization of Behavior』の中で唱えた仮説。同書の該当箇所には、 | ||
12行目: | 14行目: | ||
1997年にMarkramらによって発見されたspike timing-dependent plasticity (STDP)という学習法則は、ヘブ則とLTPとの関係をより深く理解するために重要である。というのも、ヘブ則はしばしば簡略化されて、「ニューロンAとニューロンBが同時に発火することによりシナプスが増強される」と解釈される。ところが彼らの研究では、(厳密には同時ではなく)ニューロンAがニューロンBに対して少しだけ先行して発火した場合にのみLTPが誘導されることが明らかとなった。この点についても、本来のヘブの仮説は正確であったと言える。ヘブ則には「ニューロンAがニューロンBを発火させると…」という2細胞間での発火の因果関係が明確に記されているからである。 | 1997年にMarkramらによって発見されたspike timing-dependent plasticity (STDP)という学習法則は、ヘブ則とLTPとの関係をより深く理解するために重要である。というのも、ヘブ則はしばしば簡略化されて、「ニューロンAとニューロンBが同時に発火することによりシナプスが増強される」と解釈される。ところが彼らの研究では、(厳密には同時ではなく)ニューロンAがニューロンBに対して少しだけ先行して発火した場合にのみLTPが誘導されることが明らかとなった。この点についても、本来のヘブの仮説は正確であったと言える。ヘブ則には「ニューロンAがニューロンBを発火させると…」という2細胞間での発火の因果関係が明確に記されているからである。 | ||
一方で、ヘブ則に従わない可塑性ルールも多数発見されていることも事実であり、ヘブ則が唯一の学習理論であるわけではない。そうしたヘブ則に従わない一部の学習ルールは反ヘブ則(anti- | 一方で、ヘブ則に従わない可塑性ルールも多数発見されていることも事実であり、ヘブ則が唯一の学習理論であるわけではない。そうしたヘブ則に従わない一部の学習ルールは反ヘブ則(anti-Hebbian)や非ヘブ則(non-Hebbian)とも呼ばれ、重要な研究対象となっている。 | ||
最後に、ヘブ則が広まったのは実験科学の分野だけではない。1957年アメリカのRosenblattは、ヘブ則を学習関数として組み込んだパーセプトロンというパターン認識アルゴリズムを考案した。その後も、計算機シミュレーションを用いたニューラルネットワークの研究に大きな影響を与えている。 | 最後に、ヘブ則が広まったのは実験科学の分野だけではない。1957年アメリカのRosenblattは、ヘブ則を学習関数として組み込んだパーセプトロンというパターン認識アルゴリズムを考案した。その後も、計算機シミュレーションを用いたニューラルネットワークの研究に大きな影響を与えている。 | ||
同義語:ヘッブ則、Hebb's postulate、Hebbian learning | |||
重要な関連語:長期増強(LTP) | |||
(執筆者:高橋直矢、池谷裕二、松木則夫、担当編集委員:林康紀) | (執筆者:高橋直矢、池谷裕二、松木則夫、担当編集委員:林康紀) |
回編集