「サリエンシー」の版間の差分

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英語名:saliency  
英語名:saliency  


類語・同義語:顕著性。サリエンス(salience)。
類語・同義語:顕著性、サリエンス(salience)。


 感覚刺激が刺激の時間的または空間的配置によってボトムアップ性注意を誘引する特性を「サリエンシー」と呼ぶ。「サリエンシー・マップ」とは、視覚刺激のサリエンシーを計算して特徴に依存したい単一の二次元スカラー量として表現したもののことを指す。これは計算論的概念であって、脳にサリエンシー・マップが表現されている保証はない。しかしながら、サリエンシー・マップが表象されている部分としてこれまでに、V1,、上丘、視床枕、LIP、FEFなどがその候補としてあげられている。
 [[感覚]]刺激が刺激の時間的または空間的配置によって[[ボトムアップ性注意]]を誘引する特性を「サリエンシー」と呼ぶ。「サリエンシー・マップ」とは、視覚刺激のサリエンシーを計算して特徴に依存したい単一の二次元スカラー量として表現したもののことを指す。これは計算論的概念であって、脳にサリエンシー・マップが表現されている保証はない。しかしながら、サリエンシー・マップが表象されている部分としてこれまでに、[[一次視覚野]]([[V1]])、[[上丘]]、[[視床枕]]、[[LIP]]、[[FEF]]などがその候補としてあげられている。


== サリエンシーとは ==
== サリエンシーとは ==
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[[Image:Masatoshiyoshida_fig_1.png|thumb|300px|'''図1.視覚探索''']]
[[Image:Masatoshiyoshida_fig_1.png|thumb|300px|'''図1.視覚探索''']]


 サリエンシーは、心理学的研究においては、視覚探索におけるpop-outという概念と関連している。
 サリエンシーは、心理学的研究においては、[[視覚探索]]における[[pop-out]]という概念と関連している。


 図1の三つの刺激でそれぞれ仲間はずれの要素を見つけなさい、と問われたとしたら、左と真ん中の二つの図ではひとめで見つかるのに対して、右の図ではなかなか難しい。これは左の図では色特徴でpop-outするから、真ん中の図では傾きの特徴でpop-outするから、と表現される。
 図1の三つの刺激でそれぞれ仲間はずれの要素を見つけなさい、と問われたとしたら、左と真ん中の二つの図ではひとめで見つかるのに対して、右の図ではなかなか難しい。これは左の図では色特徴でpop-outするから、真ん中の図では傾きの特徴でpop-outするから、と表現される。


 このような知見を元にしてAnn Triesmanは注意の「特徴統合理論」(feature integration theory)を作り上げた<ref><pubmed> 7351125 </pubmed></ref>。特徴統合理論では、視野像は各特徴(輝度、色、傾きなど)ごとに平行して処理され、それらの特徴が最終的に統合される。よって、図1左の色のpop-out刺激では、色特徴の処理の段階で仲間はずれを検出することが出来るので処理が速いのだが、図1右のconjunction searchでは統合された情報を探索しなければならないために処理が遅くなる、と説明される。
 このような知見を元にしてAnn Triesmanは注意の「[[特徴統合理論]]」(feature integration theory)を作り上げた<ref><pubmed> 7351125 </pubmed></ref>。特徴統合理論では、視野像は各特徴(輝度、色、傾きなど)ごとに並行して処理され、それらの特徴が最終的に統合される。よって、図1左の色のpop-out刺激では、色特徴の処理の段階で仲間はずれを検出することが出来るので処理が速いのだが、図1右のconjunction searchでは統合された情報を探索しなければならないために処理が遅くなる、と説明される。


 同様な現象は他のモダリティー、たとえば音刺激でも見られる。たとえば聴覚でのoddball taskでは、ピ、ピ、ピと連続する純音刺激に違う周波数の純音が混ざったり、または音が鳴らなかった場合にはその時に注意が誘引される。この場合は空間ではなくて、時間的配列がボトムアップ性注意を誘引する例と言える。
 同様な現象は他のモダリティー、たとえば音刺激でも見られる。たとえば聴覚でのoddball taskでは、ピ、ピ、ピと連続する純音刺激に違う周波数の純音が混ざったり、または音が鳴らなかった場合にはその時に注意が誘引される。この場合は空間ではなくて、時間的配列がボトムアップ性注意を誘引する例と言える。
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  [[Image:Masatoshiyoshida_fig_2.png|thumb|300px|'''図2.サリエンシー・マップ''']]
  [[Image:Masatoshiyoshida_fig_2.png|thumb|300px|'''図2.サリエンシー・マップ''']]


 この計算論モデルはC++ソフトウェアとして、[http://ilab.usc.edu/toolkit/ 南カリフォルニア大学Ittiラボ]より、ソースがGNU General Public Licenseに基づいて入手できるようになっている。
 この計算論モデルはC++ソフトウェアとして、[http://ilab.usc.edu/toolkit/ 南カリフォルニア大学Ittiラボ]より、ソースが[[wikipedia:ja:GNU General Public License|GNU General Public License]]に基づいて入手できるようになっている。


 このソフトウェアを使って図1の画像のサリエンシーを計算したのが図2となる。
 このソフトウェアを使って図1の画像のサリエンシーを計算したのが図2となる。
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== サリエンシー・マップの応用  ==
== サリエンシー・マップの応用  ==


 画像や映像を見ているときの視覚探索をサリエンシー・マップによって予測するという一連の研究がある。そのなかではたとえば視覚探索時の眼球運動のデータからADHD患者やパーキンソン病患者を分類することに成功したもの<ref name=ref9><pubmed> 22926163 </pubmed></ref>やマカクザルの視覚探索時の眼球運動のデータから第一次視覚野損傷の影響を解明したもの<ref name=ref10><pubmed> 22748317 </pubmed></ref>などがある。
 画像や映像を見ているときの[[視覚探索]]をサリエンシー・マップによって予測するという一連の研究がある。そのなかではたとえば視覚探索時の[[眼球運動]]のデータから[[ADHD]]患者や[[パーキンソン病]]患者を分類することに成功したもの<ref name=ref9><pubmed> 22926163 </pubmed></ref>や[[wikipedia:ja:マカクザル|マカクザル]]の視覚探索時の眼球運動のデータから第一次視覚野損傷の影響を解明したもの<ref name=ref10><pubmed> 22748317 </pubmed></ref>などがある。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

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