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 2000年になり、ApoER2とVLDLRのダブルノックアウトマウスが、リーラーフェノタイプになること<ref name="ref2"><pubmed>10380922</pubmed></ref>が明らかになり、さらに生化学的結合実験等により、ApoER2とVLDLRがReelinの[[wikipedia:ja:受容体|レセプター]]であることが示された<ref><pubmed>10571241</pubmed></ref><ref><pubmed>10571240</pubmed></ref>。またApoER2とVLDLRの細胞内ドメインのNPxYモチーフにDab1のPTBドメインを介して結合出来る事が示され、Dab1はApoER2、VLDLRを介してReelinシグナルを受け取る事が示唆された<ref name="ref2" />。また同年、活性化型Srcによってチロシンリン酸化を受ける可能性のある5つのチロシンが同定され、この5つのチロシンリン酸化部位全てをフェニルアラニンに変異させた[[wikipedia:Gene knockin|ノックインマウス]]が、リーラーフェノタイプになる事が示された<ref name="5F"><pubmed>10959835</pubmed></ref>。この実験結果により、Dab1のチロシンリン酸化はReelinシグナルにとって必須であることが示された。  
 2000年になり、ApoER2とVLDLRのダブルノックアウトマウスが、リーラーフェノタイプになること<ref name="ref2"><pubmed>10380922</pubmed></ref>が明らかになり、さらに生化学的結合実験等により、ApoER2とVLDLRがReelinの[[wikipedia:ja:受容体|レセプター]]であることが示された<ref><pubmed>10571241</pubmed></ref><ref><pubmed>10571240</pubmed></ref>。またApoER2とVLDLRの細胞内ドメインのNPxYモチーフにDab1のPTBドメインを介して結合出来る事が示され、Dab1はApoER2、VLDLRを介してReelinシグナルを受け取る事が示唆された<ref name="ref2" />。また同年、活性化型Srcによってチロシンリン酸化を受ける可能性のある5つのチロシンが同定され、この5つのチロシンリン酸化部位全てをフェニルアラニンに変異させた[[wikipedia:Gene knockin|ノックインマウス]]が、リーラーフェノタイプになる事が示された<ref name="5F"><pubmed>10959835</pubmed></ref>。この実験結果により、Dab1のチロシンリン酸化はReelinシグナルにとって必須であることが示された。  


 2003年以降、チロシンリン酸化されたDab1に結合する様々なタンパク質が報告され、現在までに[[wikipedia:ja:PI3キナーゼ|Phosphoinositide 3-kinase (PI3K)]]<ref><pubmed>12882964</pubmed></ref>、[[wikipedia:SOCS3|SOCS3]]<ref><pubmed>17974915</pubmed></ref>、[[wikipedia:NCK2|Nck&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;lt;math&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;gt;\beta&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;lt;/math&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;gt;]]<ref><pubmed>14517291</pubmed></ref>、[[wikipedia:PAFAH1B1|Lis1]]<ref><pubmed>14578885</pubmed></ref>、[[wikipedia:Src family kinase|Src family kinase]]<ref name="ref1" /><ref><pubmed>18981215</pubmed></ref>、Crkファミリータンパク質(Crk、CrkL)<ref name="crk"><pubmed>15062102</pubmed></ref><ref><pubmed>15316068</pubmed></ref><ref><pubmed>15110774</pubmed></ref>がDab1のチロシンリン酸化依存的に結合することが報告されている。このうち''crk''と''crkl''ダブルノックアウトマウス<ref name="crk"><pubmed>19074029</pubmed></ref>、''c3g''の[[wikipedia:ja:ジーントラップ法|ジーントラップ]]系統マウス<ref name="c3g"><pubmed>18506028</pubmed></ref>、及び''src''と[[wikipedia:FYN|''fyn'']]のダブルノックアウトマウス<ref><pubmed>16162939</pubmed></ref>においてはリーラーフェノタイプ様の異常が生じることが報告されている。  
 2003年以降、チロシンリン酸化されたDab1に結合する様々なタンパク質が報告され、現在までに[[wikipedia:ja:PI3キナーゼ|Phosphoinositide 3-kinase (PI3K)]]<ref><pubmed>12882964</pubmed></ref>、[[wikipedia:SOCS3|SOCS3]]<ref><pubmed>17974915</pubmed></ref>、[[wikipedia:NCK2|Nck&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;lt;math&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;gt;\beta&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;lt;/math&amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;amp;gt;]]<ref><pubmed>14517291</pubmed></ref>、[[wikipedia:PAFAH1B1|Lis1]]<ref><pubmed>14578885</pubmed></ref>、[[wikipedia:Src family kinase|Src family kinase]]<ref name="ref1" /><ref><pubmed>18981215</pubmed></ref>、Crkファミリータンパク質(Crk、CrkL)<ref name="crk"><pubmed>15062102</pubmed></ref><ref><pubmed>15316068</pubmed></ref><ref><pubmed>15110774</pubmed></ref>がDab1のチロシンリン酸化依存的に結合することが報告されている。このうち''crk''と''crkl''ダブルノックアウトマウス<ref name="crk"><pubmed>19074029</pubmed></ref>、''c3g''の[[wikipedia:ja:ジーントラップ法|ジーントラップ]]系統マウス<ref name="c3g"><pubmed>18506028</pubmed></ref>、及び''src''と[[wikipedia:FYN|''fyn'']]のダブルノックアウトマウス<ref><pubmed>16162939</pubmed></ref>においてはリーラーフェノタイプ様の異常が生じることが報告されている。  


 2004年には、''dab1''欠損マウスの[[wikipedia:Dentate gyrus|海馬歯状回]]の[[wikipedia:Granule cell|顆粒細胞]]の樹状突起が野生型に比べて突起の数が減少していること<ref name="Niu"><pubmed>14715136</pubmed></ref>、''dab1''欠損マウス由来の海馬神経細胞を培養した場合でも、樹状突起が短くなり、枝分かれの数も減少すること<ref name="Niu" />が報告された。また、2006年、''dab1''のノックダウン実験により、神経細胞の樹状突起形成が阻害されること<ref name="dab1KD"><pubmed>16467525</pubmed></ref>、生後、時期特異的に''dab1''にノックアウトした場合、海馬の樹状突起形成が阻害される<ref name="matsuki"><pubmed>18477607</pubmed></ref>ことが、報告され、Dab1は神経細胞の移動過程以外にも、樹状突起の発達にも関与することが示唆された。  
 2004年には、''dab1''欠損マウスの[[wikipedia:Dentate gyrus|海馬歯状回]]の[[wikipedia:Granule cell|顆粒細胞]]の樹状突起が野生型に比べて突起の数が減少していること<ref name="Niu"><pubmed>14715136</pubmed></ref>、''dab1''欠損マウス由来の海馬神経細胞を培養した場合でも、樹状突起が短くなり、枝分かれの数も減少すること<ref name="Niu" />が報告された。また、2006年、''dab1''のノックダウン実験により、神経細胞の樹状突起形成が阻害されること<ref name="dab1KD"><pubmed>16467525</pubmed></ref>、生後、時期特異的に''dab1''にノックアウトした場合、海馬の樹状突起形成が阻害される<ref name="matsuki"><pubmed>18477607</pubmed></ref>ことが、報告され、Dab1は神経細胞の移動過程以外にも、樹状突起の発達にも関与することが示唆された。  
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[[Image:Fig1 Dab1 primary structure.png|thumb|500px|<b>図1 Dab1のドメイン構造</b><br>p80とp45、二つのスプライスバリアントを示す。オレンジ色の領域がPhosphotyrosine-binding (PTB)ドメイン、赤色の領域が核移行シグナル(Nuclear Localization Signal (NLS))、青色の領域が核外移行シグナル(Nuclear Export Signal(NES))、Yがチロシンリン酸化部位を示す。p45の灰色部分はp45特有の配列を示す。]]  
[[Image:Fig1 Dab1 primary structure.png|thumb|500px|<b>図1 Dab1のドメイン構造</b><br>p80とp45、二つのスプライスバリアントを示す。オレンジ色の領域がPhosphotyrosine-binding (PTB)ドメイン、赤色の領域が核移行シグナル(Nuclear Localization Signal (NLS))、青色の領域が核外移行シグナル(Nuclear Export Signal(NES))、Yがチロシンリン酸化部位を示す。p45の灰色部分はp45特有の配列を示す。]]  


 マウスでは[[wikipedia:ja選択的スプライシング|選択的スプライシング]]により13種のスプライスバリアントが存在することが報告されている<ref name="crk" />が、発達過程の中枢神経系では555アミノ酸を持つスプライスバリアント、''dab1'' p80(図1、p80)が最も多く発現している<ref name="ncad" />。  
 マウスでは[[wikipedia:ja選択的スプライシング|選択的スプライシング]]により13種のスプライスバリアントが存在することが報告されている<ref name="crk" />が、発達過程の中枢神経系では555アミノ酸を持つスプライスバリアント、''dab1'' p80(図1、p80)が最も多く発現している<ref name=ref1 />。  


 Dab1(p80)はN末端側にPTBドメイン、続く領域にチロシンリン酸化部位を持つ細胞内タンパク質である(図1)。PTBドメインは、細胞内ドメインにNPxYモチーフを持つ膜タンパク質と結合する。これまでに、ApoER2<ref name="integrin" />、VLDLR<ref><pubmed>22586277</pubmed></ref>、マウス[[wikipedia:PCDH18|Pcdh18]]<ref name="ref1" />(Pcdh18の場合はNPTS配列を持つ)、[[wikipedia:Amyloid precursor protein|Amyloid precursor protein (APP)]]<ref name="ref2" />、[[wikipedia:APLP1|Amyloid-like protein 1 (APLP1)]]<ref name="ref2" />、 [[wikipedia:APLP2|Amyloid-like protein 2 (APLP2)]]<ref><pubmed>11716507</pubmed></ref>との結合が報告されている。これらの結合にはNPxYモチーフのチロシン残基のリン酸化は必要としない。PTBドメインには[[wikipedia:Pleckstrin homology domain|plekstrin homology (PH)ドメイン]]様構造が含まれており、リン脂質([[wikipedia:Phosphatidylinositol 4-phosphate|Phosphatidylinositol 4-phosphate]]と[[wikipedia:Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate|Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate]])に結合することが出来る<ref name="app"><pubmed>10373567</pubmed></ref>。また、PTBドメインのN末端側には[[wikipedia:Nuclear localization sequence|核移行シグナル(Nuclear localization Signal: NLS)]]、PTBドメインのC末端側に二つの[[wikipedia:Nuclear export signal|核外移行シグナル(Nuclear Export Signal: NES)]]を持っており、核と細胞質間を移行する能力を有している<ref name="app"><pubmed>10460257</pubmed></ref>。PTBドメインのC末端側、分子の中程にチロシンリン酸化を受ける部位が5カ所(Y185、Y198、Y200、Y220、Y232)同定されており<ref name="app" />、このうちの4つがシグナルの伝達に重要な役割を果たしている事が明らかにされている<ref name="app" /><ref><pubmed>17062576</pubmed></ref>。4つのチロシンリン酸化サイトは配列の相同性からYQXI配列を持つ2つ(Y185、Y198)とYXVP配列を持つ二つ(Y220、Y232)に分けられる。 神経細胞の移動に関しては、YQXI配列を持つY185とY198の間、およびYXVP配列を持つY220とY232の間で冗長性を持つ。一方、両方の[[wikipedia:ja:対立遺伝子|対立遺伝子]]にY185・Y198変異を持つマウスと、Y220・Y232に変異を持つマウスではそれぞれリーラーフェノタイプを示す。一方、片方の対立遺伝子でY185・Y198に変異を持ち、もう片方の対立遺伝子でY220・Y232に変異を持つ変異マウスではリーラーフェノタイプを示さないことから、Y185・Y198とY220・Y232はそれぞれ独立の機能を持ち、さらに相互依存する関係であることが示されている<ref name="5F" />。Y200の生理的役割は不明である。  
 Dab1(p80)はN末端側にPTBドメイン、続く領域にチロシンリン酸化部位を持つ細胞内タンパク質である(図1)。PTBドメインは、細胞内ドメインにNPxYモチーフを持つ膜タンパク質と結合する。これまでに、ApoER2<ref name="integrin" />、VLDLR<ref><pubmed>22586277</pubmed></ref>、マウス[[wikipedia:PCDH18|Pcdh18]]<ref name="ref1" />(Pcdh18の場合はNPTS配列を持つ)、[[wikipedia:Amyloid precursor protein|Amyloid precursor protein (APP)]]<ref name="ref2" />、[[wikipedia:APLP1|Amyloid-like protein 1 (APLP1)]]<ref name="ref2" />、 [[wikipedia:APLP2|Amyloid-like protein 2 (APLP2)]]<ref><pubmed>11716507</pubmed></ref>との結合が報告されている。これらの結合にはNPxYモチーフのチロシン残基のリン酸化は必要としない。PTBドメインには[[wikipedia:Pleckstrin homology domain|plekstrin homology (PH)ドメイン]]様構造が含まれており、リン脂質([[wikipedia:Phosphatidylinositol 4-phosphate|Phosphatidylinositol 4-phosphate]]と[[wikipedia:Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate|Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate]])に結合することが出来る<ref name="app"><pubmed>10373567</pubmed></ref>。また、PTBドメインのN末端側には[[wikipedia:Nuclear localization sequence|核移行シグナル(Nuclear localization Signal: NLS)]]、PTBドメインのC末端側に二つの[[wikipedia:Nuclear export signal|核外移行シグナル(Nuclear Export Signal: NES)]]を持っており、核と細胞質間を移行する能力を有している<ref name="app"><pubmed>10460257</pubmed></ref>。PTBドメインのC末端側、分子の中程にチロシンリン酸化を受ける部位が5カ所(Y185、Y198、Y200、Y220、Y232)同定されており<ref name="app" />、このうちの4つがシグナルの伝達に重要な役割を果たしている事が明らかにされている<ref name="app" /><ref><pubmed>17062576</pubmed></ref>。4つのチロシンリン酸化サイトは配列の相同性からYQXI配列を持つ2つ(Y185、Y198)とYXVP配列を持つ二つ(Y220、Y232)に分けられる。 神経細胞の移動に関しては、YQXI配列を持つY185とY198の間、およびYXVP配列を持つY220とY232の間で冗長性を持つ。一方、両方の[[wikipedia:ja:対立遺伝子|対立遺伝子]]にY185・Y198変異を持つマウスと、Y220・Y232に変異を持つマウスではそれぞれリーラーフェノタイプを示す。一方、片方の対立遺伝子でY185・Y198に変異を持ち、もう片方の対立遺伝子でY220・Y232に変異を持つ変異マウスではリーラーフェノタイプを示さないことから、Y185・Y198とY220・Y232はそれぞれ独立の機能を持ち、さらに相互依存する関係であることが示されている<ref name="5F" />。Y200の生理的役割は不明である。  
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