「遠心性コピー」の版間の差分

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== 遠心性コピーと随伴発射の機能的役割 ==  
== 遠心性コピーと随伴発射の機能的役割 ==  
 種々の感覚器官を通して入力される感覚信号の変化は、環境が変化したために生じる場合だけでなく、自分自身の行なった運動の結果として生じる場合があるが、生体はどちらの原因によって感覚信号の変化が引き起こされたかを区別する能力を有している。例えば、視野内にある物体が動けば、我々はその物体が動いたという知覚を得るが、我々が自分自身で視線を動かした場合、物体位置が網膜上で変化したにもかかわらず、物体が動いたという知覚は生じない。von HolstとMittelstaedtは、遠心性である運動指令信号のコピー(遠心性コピー: efference copy)が感覚情報処理系に送られることによって、自己運動の結果として生ずる感覚信号成分が消去あるいは補正されると考えた。Sperryは随伴発射(corollary discharge)という言葉を用いて、感覚情報処理に影響を与える自身の運動に関連した信号を表現した。概念的には遠心性コピーと随伴発射は同様の信号を意味しているが、遠心性コピーは運動ニューロンから筋に向けた運動指令信号の実際のコピーの意を持ち、随伴発射は運動実行系の高次、低次のレベルあるいは運動ニューロンに由来する信号を幅広く表現する<ref name=ref3><pubmed> 18641666 </pubmed></ref>。(Crapse & Sommer, 2008) 。今日では、運動実行系の階層的情報処理の様々な段階から、感覚情報処理系の階層の様々な階層に向けて運動関連信号が送られていると考えられている。また、線虫、コオロギ、ザリガニ、弱電気魚、コウモリ、サル等様々な動物種において、このような神経機構が備わっていることが知られている<ref name=ref3 /> <ref><pubmed> 18848626 </pubmed></ref>。以下にサルの例について説明する。
 種々の感覚器官を通して入力される感覚信号の変化は、環境が変化したために生じる場合だけでなく、自分自身の行なった運動の結果として生じる場合があるが、生体はどちらの原因によって感覚信号の変化が引き起こされたかを区別する能力を有している。例えば、視野内にある物体が動けば、我々はその物体が動いたという知覚を得るが、我々が自分自身で視線を動かした場合、物体位置が網膜上で変化したにもかかわらず、物体が動いたという知覚は生じない。von HolstとMittelstaedtは、遠心性である運動指令信号のコピー(遠心性コピー: efference copy)が感覚情報処理系に送られることによって、自己運動の結果として生ずる感覚信号成分が消去あるいは補正されると考えた。Sperryは随伴発射(corollary discharge)という言葉を用いて、感覚情報処理に影響を与える自身の運動に関連した信号を表現した。概念的には遠心性コピーと随伴発射は同様の信号を意味しているが、遠心性コピーは運動ニューロンから筋に向けた運動指令信号の実際のコピーの意を持ち、随伴発射は運動実行系の高次、低次のレベルあるいは運動ニューロンに由来する信号を幅広く表現する<ref name=ref3><pubmed> 18641666 </pubmed></ref>>。今日では、運動実行系の階層的情報処理の様々な段階から、感覚情報処理系の階層の様々な階層に向けて運動関連信号が送られていると考えられている。また、線虫、コオロギ、ザリガニ、弱電気魚、コウモリ、サル等様々な動物種において、このような神経機構が備わっていることが知られている<ref name=ref3 /> <ref><pubmed> 18848626 </pubmed></ref>。以下にサルの例について説明する。


== サッケード眼球運動と視野安定性 ==  
== サッケード眼球運動と視野安定性 ==  
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