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<font size="+1">[http://researchmap.jp/ryotahashimoto 橋本 亮太]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/ryotahashimoto 橋本 亮太]</font><br> | ||
''大阪大学''<br> | ''大阪大学''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年9月4日 原稿完成日:2012年11月15日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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=== 神経生理機能 === | === 神経生理機能 === | ||
神経生理機能については、単純な非言語性の刺激を用いるため、年齢、人種、用いる言語に関係なく簡便に施行できるという利点がある。統合失調症では、[[プレパルス抑制テスト]](prepulse Inhibition, PPI)、[[眼球運動]]([[アンチサッケード]]課題)、[[P50]](音刺激に対して50ミリ秒前後で発生する聴覚誘発電位)、[[ミスマッチネガティビティ]]、[[近赤外スペクトロスコピー]] (NIRS)などが用いられるが、遺伝性についても示されているものは[[プレパルス抑制]][[テスト]]と眼球運動である<ref><pubmed>17088422</pubmed></ref> <ref><pubmed>17984393</pubmed></ref> | 神経生理機能については、単純な非言語性の刺激を用いるため、年齢、人種、用いる言語に関係なく簡便に施行できるという利点がある。統合失調症では、[[プレパルス抑制テスト]](prepulse Inhibition, PPI)、[[眼球運動]]([[アンチサッケード]]課題)、[[P50]](音刺激に対して50ミリ秒前後で発生する聴覚誘発電位)、[[ミスマッチネガティビティ]]、[[近赤外スペクトロスコピー]] (NIRS)などが用いられるが、遺伝性についても示されているものは[[プレパルス抑制]][[テスト]]と眼球運動である<ref><pubmed>17088422</pubmed></ref> <ref><pubmed>17984393</pubmed></ref>。その中でも、PPIはマウスなどの[[動物モデル]]においても同様な検査が可能であるため、汎用されており、関連する遺伝子についての知見も多い<ref>'''高橋秀俊、橋本亮太、岩瀬真生、石井良平、武田雅俊'''<br>統合失調症の中間表現型 精神生理学的指標<br>''精神科'':2011; 18: 14-18</ref>。 | ||
=== その他 === | === その他 === | ||
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エンドフェノタイプは、精神疾患における定量的に測定できる神経生物学的な表現型であることから、いわゆる生物学的な診断マーカーとしての期待が持てる。一つ一つの中間表現型(例えば、[[記憶障害]]や脳構造異常)の感度と特異度は十分ではなく、未だ生物学的な診断マーカーは見つかっていない。しかし、精神疾患の病態のうち異なる遺伝子による異常を反映すると考えられるエンドフェノタイプの組み合わせを用いることにより、診断マーカーの開発につながることが期待されている(図2)<ref name="ref11" />。 | エンドフェノタイプは、精神疾患における定量的に測定できる神経生物学的な表現型であることから、いわゆる生物学的な診断マーカーとしての期待が持てる。一つ一つの中間表現型(例えば、[[記憶障害]]や脳構造異常)の感度と特異度は十分ではなく、未だ生物学的な診断マーカーは見つかっていない。しかし、精神疾患の病態のうち異なる遺伝子による異常を反映すると考えられるエンドフェノタイプの組み合わせを用いることにより、診断マーカーの開発につながることが期待されている(図2)<ref name="ref11" />。 | ||
動物モデルの研究への応用可能性も今後期待される分野である。現在、精神疾患の診断は、多くを患者本人の主観的体験の陳述と行動の観察に頼っている。特に、[[幻聴]]や[[妄想]] | 動物モデルの研究への応用可能性も今後期待される分野である。現在、精神疾患の診断は、多くを患者本人の主観的体験の陳述と行動の観察に頼っている。特に、[[幻聴]]や[[妄想]]といった症状は、動物で定義することは不可能である。動物でも定量可能なエンドフェノタイプを用いることで、こうした問題を克服できる可能性がある。実際に、統合失調症においてはプレパルス抑制の障害をヒトと[[モデル動物]]の双方に用いて研究がなされている。また、エンドフェノタイプ概念を、ヒトで直接測定することの困難な、細胞、神経回路レベルにまで拡張できるかどうかは、今後の課題であろう。 | ||
=== 今後の課題 === | === 今後の課題 === |