66
回編集
Keijiimoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Keijiimoto (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
7行目: | 7行目: | ||
HodgkinとHuxleyの業績の意義は次のように要約できる。 | HodgkinとHuxleyの業績の意義は次のように要約できる。 | ||
#活動電位発生時に、ナトリウムイオン(Na<sup>+</sup>)とカリウムイオン(K<sup>+</sup>) | #活動電位発生時に、ナトリウムイオン(Na<sup>+</sup>)とカリウムイオン(K<sup>+</sup>)が、細胞膜の別々の通路を通ることを示した。この発見はイオンチャネルの存在を予測するものであり、その後のイオンチャネル研究の源となった。なお、当時の論文では、イオンチャネル・チャネルといった用語は用いられておらず、コンダクタンスという用語が使用されている。 | ||
#Na<sup>+</sup>チャネル、K<sup>+</sup>チャネルがが開閉する非線形な動態を微分方程式を含む数式で表した。これらの式はまとめてHodgkin-Huxley方程式と呼ばれている。 | #Na<sup>+</sup>チャネル、K<sup>+</sup>チャネルがが開閉する非線形な動態を微分方程式を含む数式で表した。これらの式はまとめてHodgkin-Huxley方程式と呼ばれている。 | ||
#Na<sup>+</sup>チャネル、K<sup>+</sup>チャネルおよびleakチャネルを示す数式を組み合わせ、活動電位の発生・伝播を数値的に再現した。現在行われている興奮性細胞の電位シミュレーションは、要素が増えるなどして複雑になっているが基本は変わらない。 | #Na<sup>+</sup>チャネル、K<sup>+</sup>チャネルおよびleakチャネルを示す数式を組み合わせ、活動電位の発生・伝播を数値的に再現した。現在行われている興奮性細胞の電位シミュレーションは、要素が増えるなどして複雑になっているが基本は変わらない。 | ||
17行目: | 17行目: | ||
== Two-state model: 基礎的な考え方* == | == Two-state model: 基礎的な考え方* == | ||
2つの状態1と2をとる事の出来る系を考え、それぞれの状態にある確率を<math>\ | 2つの状態1と2をとる事の出来る系を考え、それぞれの状態にある確率を<math>p1\, </math>と<math>p2\, </math> とする。<math>\textstyle p1</math>と<math>\textstyle p2</math>は時刻<math>\textstyle t</math>の関数であり、<math>\textstyle p1(t)</math>と<math>\textstyle p2(t)</math>と表わされる。<math>\textstyle p1(t)</math>と<math>\textstyle p2(t)</math>は確率であるから、 | ||
::< | ::<math>p1(t) + p2(t) = 1\, </math> | ||
の関係にある。いま状態1から状態2へ移っていく単位時間での割合(遷移率)をαとし、状態2から状態1への遷移率をβとする。 <math>\textstyle p1(t)</math>と<math>\textstyle p2(t)</math>の時間的経過を表わす微分方程式は、 | <br> の関係にある。いま状態1から状態2へ移っていく単位時間での割合(遷移率)をαとし、状態2から状態1への遷移率をβとする。 <math>\textstyle p1(t)</math>と<math>\textstyle p2(t)</math>の時間的経過を表わす微分方程式は、 | ||
::<math> \frac{dp1(t)}{dt} = -\alpha p1(t) + \beta p2(t)</math> | ::<math> \frac{dp1(t)}{dt} = -\alpha p1(t) + \beta p2(t)</math> | ||
47行目: | 47行目: | ||
::<math>p2(t) = \left(p2(0)-\frac{\alpha}{\alpha+\beta}\right) e^{-(\alpha+\beta)t} + \frac{\alpha}{\alpha+\beta} </math> | ::<math>p2(t) = \left(p2(0)-\frac{\alpha}{\alpha+\beta}\right) e^{-(\alpha+\beta)t} + \frac{\alpha}{\alpha+\beta} </math> | ||
となる。これらの式は、<math> | となる。これらの式は、<math>p1(t)\, </math>と<math>p2(t)\, </math>はそれぞれ指数関数的に<math>p1(\infty)\, </math>と<math>p2(\infty)\, </math>に近づいていき、その時定数τは<math>\frac{1}{\alpha+\beta}\, </math>であること、およびこれらの値<math>p1(\infty)\, </math>、<math>p2(\infty)\, </math>、τは、初期値<math>p1(0)\, </math>、<math>p2(0)\, </math>には依存しないことを示している。さらに、<br> | ||
::<math>q1(t) = p1(t) - \frac{\beta}{\alpha+\beta} </math> | ::<math>q1(t) = p1(t) - \frac{\beta}{\alpha+\beta} </math> | ||
54行目: | 54行目: | ||
とすると、 | とすると、 | ||
::< | ::<math> q1(t) = q1(0)e^{-(\alpha + \beta)}\, </math> | ||
::< | ::<math> q2(t) = q2(0)e^{-(\alpha + \beta)}\, </math> | ||
とより単純な形式となる。この関係は微分方程式の数値計算でよく用いられる。 | とより単純な形式となる。この関係は微分方程式の数値計算でよく用いられる。 | ||
65行目: | 65行目: | ||
::<math>\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{C}\left(\sum_X G_{X}(v-E_X) - I_{ext}\right)</math> | ::<math>\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{C}\left(\sum_X G_{X}(v-E_X) - I_{ext}\right)</math> | ||
となり、実験データの解釈は単純ではない。電位をコントロールして行う実験方法であるvoltage clamp(電位固定法)は、1940年代にアメリカの生物物理学者Kenneth Cole (1900 - 1984)らにより開発された。HodgkinとHuxleyはこのvoltage-clampを巧みに利用して大きな成果を得る事が出来たと言える。上記の式で | となり、実験データの解釈は単純ではない。電位をコントロールして行う実験方法であるvoltage clamp(電位固定法)は、1940年代にアメリカの生物物理学者Kenneth Cole (1900 - 1984)らにより開発された。HodgkinとHuxleyはこのvoltage-clampを巧みに利用して大きな成果を得る事が出来たと言える。上記の式で''v''が一定となるように外部電流を''I''<sub>clamp</sub>を流すと、左辺は0となるため、 | ||
::<math> I_{clamp} = \sum G_X (v - E_x) </math> | ::<math> I_{clamp} = \sum G_X (v - E_x)\, </math> | ||
という関係が得られる。もし溶液の組成を工夫しチャネルのブロッカーなどを用いて、イオンチャネル''A''を流れる電流が測れたとすると、 | という関係が得られる。もし溶液の組成を工夫しチャネルのブロッカーなどを用いて、イオンチャネル''A''を流れる電流が測れたとすると、 | ||
::< | ::<math>I = G_A (v - E_A)\, </math> | ||
となる。ここで''I''<sub>clamp</sub>は実験の測定値、''v''は実験の設定値、''E''<sub>A</sub>は実験条件で定まる定数なので、イオンチャネル''A''のコンダクタンス''G''<sub>A</sub>を、 | となる。ここで''I''<sub>clamp</sub>は実験の測定値、''v''は実験の設定値、''E''<sub>A</sub>は実験条件で定まる定数なので、イオンチャネル''A''のコンダクタンス''G''<sub>A</sub>を、 | ||
::<math>G_{A} = \frac{I_{clamp}}{v-E_A}</math> | ::<math>G_{A} = \frac{I_{clamp}}{v-E_A}\, </math> | ||
と算出できることになる。 | と算出できることになる。 |
回編集