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比喩(隠喩)論は、おおまかには、[[wj:相互作用論|相互作用論]]<ref name=Black1962>'''Black, M.'''<br>Models and metaphors<br>''Ithaca, N.Y.: Cornel University Press.'':1962</ref>、[[wj:潜在的隠喩論|潜在的隠喩論]]<ref name=Lakoff1980>'''Lakoff, G. and Johnson, M.'''<br>Metaphors we live by.<br>''Chicago: University of Chicago Press.'':1980</ref>、そして[[wj:使用論|使用論]]<ref name=Davidson1978>'''Davidson, D.'''<br>What metaphors mean.<br>''Critical Inquiry, 5.'':1978 (「隠喩は何を意味するのか」、現代思想、15(6))</ref>の3つに分けることができる。相互作用論は、「AはBだ」という表現には、Aという語からの連想と、Bという語からの連想から、共通する連想内容を見つけるようにヒトを仕向けるという役割があるという考え方である。潜在的隠喩論は、例えば、「心は容器だ」のような普段は意識されない潜在的な隠喩が、「心を満たす」「心が空になる」のような、容器から連想される内容を用いた「心」の言説を生み出しているという考え方である。そして、使用論は、頭の上への一撃のように、ヒトに何かを気づかせる、という役割が一番肝心とする考え方である。 | 比喩(隠喩)論は、おおまかには、[[wj:相互作用論|相互作用論]]<ref name=Black1962>'''Black, M.'''<br>Models and metaphors<br>''Ithaca, N.Y.: Cornel University Press.'':1962</ref>、[[wj:潜在的隠喩論|潜在的隠喩論]]<ref name=Lakoff1980>'''Lakoff, G. and Johnson, M.'''<br>Metaphors we live by.<br>''Chicago: University of Chicago Press.'':1980</ref>、そして[[wj:使用論|使用論]]<ref name=Davidson1978>'''Davidson, D.'''<br>What metaphors mean.<br>''Critical Inquiry, 5.'':1978 (「隠喩は何を意味するのか」、現代思想、15(6))</ref>の3つに分けることができる。相互作用論は、「AはBだ」という表現には、Aという語からの連想と、Bという語からの連想から、共通する連想内容を見つけるようにヒトを仕向けるという役割があるという考え方である。潜在的隠喩論は、例えば、「心は容器だ」のような普段は意識されない潜在的な隠喩が、「心を満たす」「心が空になる」のような、容器から連想される内容を用いた「心」の言説を生み出しているという考え方である。そして、使用論は、頭の上への一撃のように、ヒトに何かを気づかせる、という役割が一番肝心とする考え方である。 | ||
Bottini他<ref name=Bottini1994><pubmed>7820563</pubmed></ref>では、(1)文中の非単語を見つけるという単語課題、(2)文の字義通りの解釈をする字義課題、そして(3)文の比喩的解釈をする比喩課題を設定した。そこで、(2)から(1)を引き算すると文を理解するときの脳活動(左脳の[[前頭前野]]([[ブロードマン8野|8野]]、[[ブロードマン9野|9野]]、[[ブロードマン10野|10野]]、[[ | Bottini他<ref name=Bottini1994><pubmed>7820563</pubmed></ref>では、(1)文中の非単語を見つけるという単語課題、(2)文の字義通りの解釈をする字義課題、そして(3)文の比喩的解釈をする比喩課題を設定した。そこで、(2)から(1)を引き算すると文を理解するときの脳活動(左脳の[[前頭前野]]([[ブロードマン8野|8野]]、[[ブロードマン9野|9野]]、[[ブロードマン10野|10野]]、[[ブロードマン45野|45]]/[[ブロードマン47野|47野]])、[[側頭極]]([[ブロードマン38野|38野]])、中下側頭回([[ブロードマン20野|20野]]、[[ブロードマン21野|21野]]、[[ブロードマン22野|22野]])、[[角回]]([[ブロードマン40野|40野]])、[[楔前部]](31野)、[[膝下野]]([[ブロードマン25野|25野]]);右脳の膝下野(25野)、下[[前頭前野]]([[ブロードマン47野|47野]])、内側前頭前野([[ブロードマン10野|10]]/[[ブロードマン11野|11野]]))、(3)から(2)を引き算すると比喩を理解するときの脳活動(右脳の前頭前野背外側部([[ブロードマン46野|46野]])、中側頭回(21野)、楔前部と背側[[後帯状皮質]]([[ブロードマン31野|31野]]))が残る。これらから、文を字義通りに解釈する際には主に大脳の左半球が関与するのに対して、比喩的解釈をする際には右半球が関与する可能性が示唆された。 | ||
一方、Rapp他<ref name=Rapp2004><pubmed>15268917</pubmed></ref>は、左半球の関与を示す所見を発表し、その後、左半球の関与を示す報告が多く見られた。例えば、柴田他<ref name=Shibata2007><pubmed>17662699</pubmed></ref>では、(1)理解できない文を用いた課題、(2)文の字義通りの解釈をする字義課題、そして(3)文の比喩的解釈をする比喩課題を設定した。そして、(3)から(2)を引き算すると比喩を理解するときの脳活動(内側前頭前野(9野、10野)、左下前頭回([[ブロードマン45野|45野]])、左9野、左40野)が残る。考察として、内側前頭前野は意味関係の一貫性の推論、左下前頭回は意味的な逸脱の検出に関与している可能性が示唆された。 | 一方、Rapp他<ref name=Rapp2004><pubmed>15268917</pubmed></ref>は、左半球の関与を示す所見を発表し、その後、左半球の関与を示す報告が多く見られた。例えば、柴田他<ref name=Shibata2007><pubmed>17662699</pubmed></ref>では、(1)理解できない文を用いた課題、(2)文の字義通りの解釈をする字義課題、そして(3)文の比喩的解釈をする比喩課題を設定した。そして、(3)から(2)を引き算すると比喩を理解するときの脳活動(内側前頭前野(9野、10野)、左下前頭回([[ブロードマン45野|45野]])、左9野、左40野)が残る。考察として、内側前頭前野は意味関係の一貫性の推論、左下前頭回は意味的な逸脱の検出に関与している可能性が示唆された。 |