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[[image:アクアポリン2.png|thumb|300px|'''図2.NMO患者脊髄の血管中心性のアクアポリン4の脱落病変'''<br>脊髄では、血管中心性に補体(赤)の沈着を認めており、周囲のアクアポリン4(緑)の染色性が血管中心性に低下ないし消失している。血管周囲性に炎症とアストロサイト傷害があり、同部位では脱髄が比較的軽いことから、アストロサイト一次性の病態であることが示唆されている。]] | [[image:アクアポリン2.png|thumb|300px|'''図2.NMO患者脊髄の血管中心性のアクアポリン4の脱落病変'''<br>脊髄では、血管中心性に補体(赤)の沈着を認めており、周囲のアクアポリン4(緑)の染色性が血管中心性に低下ないし消失している。血管周囲性に炎症とアストロサイト傷害があり、同部位では脱髄が比較的軽いことから、アストロサイト一次性の病態であることが示唆されている。]] | ||
視神経脊髄炎Neuromyelitis optica (NMO)は、視神経と脊髄を病変の主座とする炎症性疾患であり、多発性硬化症(MS)の亜型と考えられてきた<ref name=ref42>< | 視神経脊髄炎Neuromyelitis optica (NMO)は、視神経と脊髄を病変の主座とする炎症性疾患であり、多発性硬化症(MS)の亜型と考えられてきた<ref name=ref42>'''Kuroiwa, Y.'''<br>Neuromyelitis optica (Devic's disease, Devic's syndrome). Demyelinating diseases. <br>''Handbook of Clinical Neurology'', 1985. 3(47): p. 397-417.</ref>。2004年にNMOに極めて特異性の高い抗体(NMO-IgG)が発見され、2005年にその対応抗原がAQP4であることが報告された<ref name=ref43><pubmed>16087714</pubmed></ref>。NMOの早期炎症性病変においては、補体であるC9neoの沈着する血管周囲でAQP4は欠落し、同部位ではアストロサイトの脱落も確認され脱髄に先行してアストロサイトが障害される病態である事を明らかとなっている<ref name=ref44><pubmed>17405762</pubmed></ref>(図2)。また、NMO患者血清から抽出したヒトIgGをラットに投与すると、特にヒトIgGや補体が沈着する血管周囲でAQP4やアストロサイトの脱落が見られ、実際に生体内で補体介在性(CDC)ないし抗体介在性(ADCC)に病原性を有する抗体であることが明らかとなっている<ref name=ref17 />、一方で発症と同時に始まると思われる修復機転(グリオーシス)においてもAQP4は細胞移動や接着といった多様な機能でその病態の強く関わっていると考えられる<ref name=ref26 />。 | ||
NMOの病態は、初めに血管中心性に病変を来すことが特徴と考えられている(図2)。これは、血中にある抗AQP4抗体は、まずは炎症等をきっかけに血管周囲から神経系へ漏れ出し、血管周囲のアストロサイト足突起に反応して病変が血管中心性に進行すると推察されるためである<ref name=ref44 /> <ref name=ref45><pubmed></pubmed></ref>。病態が血管中心性であり血管性浮腫を来すことが特徴の1つと考えられているが、組織の広範なアストロサイトの脱落や広範な脱落や壊死を呈するなど、細胞傷害性浮腫が先行する脳虚血などとの共通点も多い<ref name=ref44 /> <ref name=ref46><pubmed></pubmed></ref>。前述した細胞膜上でAQP4の格子状構造を呈するM23アイソフォームに対する自己抗体が、従来考えられたM1-AQP4抗体より血清抗体価が非常に高く親和性が高い事<ref name=ref47><pubmed></pubmed></ref>、M23-AQP4抗体によって補体介在性アストロサイトパチーが起きやすく疾患促進的に働くことが報告されている<ref name=ref48><pubmed></pubmed></ref>。これは、[[脂質ラフト]]構造が元来補体活性を来しやすいこと、抗体自体の結合能が高いこと等も関与している。また、このAQP4抗体は、細胞膜上でAQP4四量体を立体的かつ架橋的に認識している可能性が示唆されている<ref name=ref49><pubmed></pubmed></ref>。本来のAQP4機能の中核の一つである水輸送機能をAQP4抗体が抑えるかどうかは賛否両論があるが、水輸送には関わらないという立場の論文がやや多い<ref name=ref50><pubmed></pubmed></ref>。AQP4の細胞膜上における特異な局在や機能の理解が進むとともに、NMOがその本質的な部分に関わる事が判明しており、その病態の理解も飛躍的な進歩を遂げている。 | NMOの病態は、初めに血管中心性に病変を来すことが特徴と考えられている(図2)。これは、血中にある抗AQP4抗体は、まずは炎症等をきっかけに血管周囲から神経系へ漏れ出し、血管周囲のアストロサイト足突起に反応して病変が血管中心性に進行すると推察されるためである<ref name=ref44 /> <ref name=ref45><pubmed>19937948</pubmed></ref>。病態が血管中心性であり血管性浮腫を来すことが特徴の1つと考えられているが、組織の広範なアストロサイトの脱落や広範な脱落や壊死を呈するなど、細胞傷害性浮腫が先行する脳虚血などとの共通点も多い<ref name=ref44 /> <ref name=ref46><pubmed>18509235</pubmed></ref>。前述した細胞膜上でAQP4の格子状構造を呈するM23アイソフォームに対する自己抗体が、従来考えられたM1-AQP4抗体より血清抗体価が非常に高く親和性が高い事<ref name=ref47><pubmed>20007705</pubmed></ref>、M23-AQP4抗体によって補体介在性アストロサイトパチーが起きやすく疾患促進的に働くことが報告されている<ref name=ref48><pubmed>23677744</pubmed></ref>。これは、[[脂質ラフト]]構造が元来補体活性を来しやすいこと、抗体自体の結合能が高いこと等も関与している。また、このAQP4抗体は、細胞膜上でAQP4四量体を立体的かつ架橋的に認識している可能性が示唆されている<ref name=ref49><pubmed>25239624</pubmed></ref>。本来のAQP4機能の中核の一つである水輸送機能をAQP4抗体が抑えるかどうかは賛否両論があるが、水輸送には関わらないという立場の論文がやや多い<ref name=ref50><pubmed>22987455</pubmed></ref>。AQP4の細胞膜上における特異な局在や機能の理解が進むとともに、NMOがその本質的な部分に関わる事が判明しており、その病態の理解も飛躍的な進歩を遂げている。 | ||
==おわりに== | ==おわりに== |