「学習障害」の版間の差分

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=== 神経心理的立場における分類 ===
=== 神経心理的立場における分類 ===
 神経心理的立場における分類として、森永の分類があげられる('''表2''')。
 神経心理的立場では、学習障害は、全般的知的水準が正常範囲内であるが、知能検査における個人内差が大きい状況を指している。例えば、WISC-III(Wechsler Intelligence Scale for Children-third edition)において、FIQが正常範囲内で言語性IQ(Verbal IQ, VIQ)と動作性IQ(Performance IQ, PIQ)との間で有意な差があれば、LDの可能性が高いと判定する。VIQが低い場合を言語性LD、PIQが低い場合を非言語性LDという[9]。
{| class="wikitable"
|+表2. 森永の分類
|-
|'''1. 言語性LD(Verbal LD, VLD''')<br>
聴覚性言語障害<br>
視覚性言語障害<br>
|-
|'''2. 非言語性LD(Non Verbal LD, NLD)'''<br>
NLD-1(オリエンテーションと運動の障害)<br>
NLD-2(社会的認知障害)<br>
|}


 この分類は[[知能検査]]結果と連動して良く用いられていた。[[WISC-R]]([[Wechsler Intelligence Scale for Children-Revised]])[[WISC-III]]([[Wechsler Intelligence Scale for Children-third edition]])において、結果を[[言語性IQ]](Verbal IQ, VIQ)と[[動作性IQ]](Performance IQ, PIQ)とに分けて算出し、IQ値で13以上の差を有意な差として、LDの可能性が高いと判断できた。
 WISC-III においては言語理解(VC)・知覚統合(PO)・注意記憶(FD)・処理速度(PS)に、WISC-IVにおいては言語理解(VCI)・知覚推理(PRI)・ワーキングメモリー(WMI)・処理速度(PSI)にわけて細分化された能力を評価し、よりよい神経心理学的な判断・支援のために利用されている[10]


=== 教育的立場 ===
=== 教育的立場 ===
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!!!医学的立場!!神経心理的立場!!教育的立場
!!!医学的立場!!神経心理的立場!!教育的立場
|-
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|'''診断・分類基準'''||DSM, ICD||森永の分類など||文部科学省の定義
|'''診断・分類基準'''||DSM, ICD||知能検査の個人内差||文部科学省の定義
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|'''用語の背景'''||機能不全、疾患単位の確立||機能不全、心理機能・法則の確立||学習のしかたの相違・教育的措置の重視
|'''用語の背景'''||機能不全、疾患単位の確立||機能不全、心理機能・法則の確立||学習のしかたの相違・教育的措置の重視
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|'''診断基準運用上の問題'''||鑑別の困難さ||疾患単位の曖昧さ||概念の曖昧さ
|'''診断基準運用上の問題'''||鑑別の困難さ||疾患単位の曖昧さ||概念の曖昧さ
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|'''自閉症スペクトルを含むか'''||合併を認め、並列表記||表記していないが含んでいる(NLD-2)||あいまい
|'''自閉症スペクトラムを含むか'''||合併を認め、並列表記||表記していないが含んでいる(NLD-2)||あいまい
|}
|}


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== 治療 ==
== 治療 ==
 治療的介入は、客観的な証拠に基づいて作成された個別教育計画(Individualized Education Program, IEP)によって教育的介入がなされる。客観的な証拠として、Wechsler 系の知能検査や各種の神経心理検査が用いられる。
 治療的介入は、客観的な証拠に基づいて作成された個別教育計画(Individualized Education Program, IEP)によって教育的介入がなされる。客観的な証拠として、Wechsler 系の知能検査や各種の神経心理検査が用いられるが、これらの検査は努力性の指標(本人が努力していない状況では低い結果となる)であるため、行動観察や学力評価といった裏付けによって、妥当性・信頼性を得る必要がある。また、複数の検査結果を組み合わせて評価することも多い。


 教育的介入の手法は、必ずしも薬物療法のように統計学的な裏付けがなされているわけではない。この背景には、学習障害が必ずしも均一の集団ではないため、統計学的な結果が得られにくいことも考え得る。実際、アルファベット圏におけるdyslexiaは、音素の読み取り・再構成が主たる障害と考え得られる比較的均一な集団であり、単語レベルの音韻指導が有用であり、[[オプトメトリックス]]に代表される[[視力]]訓練が無効であり受講しないように提言している。
 教育的介入の手法は、必ずしも薬物療法のように統計学的な裏付けがなされているわけではない。この背景には、学習障害が必ずしも均一の集団ではないため、統計学的な結果が得られにくいことも考え得る。実際、アルファベット圏におけるdyslexiaは、音素の読み取り・再構成が主たる障害と考え得られる比較的均一な集団であり、単語レベルの音韻指導が有用であり、[[オプトメトリックス]]に代表される[[視力]]訓練が無効であり受講しないように提言している。
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#苦手なところを迂回して学習を進める支援
#苦手なところを迂回して学習を進める支援


 とに大別できる。前者の例としては、dyslexia の治療に用いられる音素の読み取り・再構成の訓練があげられる。日本においても[[発達性読み書き障害]]に対して、同様の手法が開発されている。後者の例としては、dyslexiaにおいては読み取る能力に問題があっても聞きとる能力には問題がないので、読み聞かせがよい支援となり得る。
 とに大別できる。前者の例としては、dyslexia の治療に用いられる音素の読み取り・再構成の訓練があげられる。日本においても[[発達性読み書き障害]]に対して、同様の手法が開発されている。後者の例としては、読み障害においては読み取る能力に問題があっても聞きとる能力には問題がないので学習内容の読み聞かせがよい支援となり得る。


 文部科学省は平成19年度より[[wj:特別支援教育|特別支援教育]]を開始した。特別支援教育の開始にあたって[[wj:学校教育法|学校教育法]]の改訂がなされ、学習障害の子どもも特別支援教育の対象となった。校長の責務を明確化し、[[wj;特別支援コーディネータ|特別支援コーディネータ]]の配置をすすめている。また、[[wj:特別支援学校|特別支援学校]]に地域支援の役割分担を求めている。また、[[wj:日本LD学会|日本LD学会]]は[[特別支援教育士]]の資格を提唱している。
 文部科学省は平成19年度より[[wj:特別支援教育|特別支援教育]]を開始した。特別支援教育の開始にあたって[[wj:学校教育法|学校教育法]]の改訂がなされ、学習障害の子どもも特別支援教育の対象となった。校長の責務を明確化し、[[wj;特別支援コーディネータ|特別支援コーディネータ]]の配置をすすめている。また、[[wj:特別支援学校|特別支援学校]]に地域支援の役割分担を求めている。また、[[wj:日本LD学会|日本LD学会]]は[[特別支援教育士]]の資格を提唱している。

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