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==診断== | ==診断== | ||
===診断基準=== | ===診断基準=== | ||
てんかんは慢性の脳疾患であり、脳神経細胞の異常興奮により惹起され、1回以上の発作を起こし、発作以外の症状も伴う。てんかん発作の症状はけいれん発作だけでなく、種々の程度の[[意識障害]]、[[行動障害]]を示す場合もあるが、重要な点は「発作は同じパターンを繰り返す」ことである。診断の際には、発作時に開眼しているか、[[チアノーゼ]]があるか、意識障害の有無や行動変化とその回復過程はどうなっているか、尿[[失禁]]、[[嘔吐]]、発作後の[[頭痛]]、[[もうろう状態]]などを伴うか否か、などの発作症状の観察や発病年齢の聴取が重要である。 | てんかんは慢性の脳疾患であり、脳神経細胞の異常興奮により惹起され、1回以上の発作を起こし、発作以外の症状も伴う。てんかん発作の症状はけいれん発作だけでなく、種々の程度の[[意識障害]]、[[行動障害]]を示す場合もあるが、重要な点は「発作は同じパターンを繰り返す」ことである。診断の際には、発作時に開眼しているか、[[wj:チアノーゼ|チアノーゼ]]があるか、意識障害の有無や行動変化とその回復過程はどうなっているか、尿[[失禁]]、[[嘔吐]]、発作後の[[頭痛]]、[[もうろう状態]]などを伴うか否か、などの発作症状の観察や発病年齢の聴取が重要である。 | ||
補助診断として[[脳波]]・ビデオ同時記録、[[睡眠ポリグラフィーが]]用いられ、脳[[MRI]]、[[SPECT]]などが検査されるが、最近では[[遺伝子診断]]も試みられている。目撃者がいない場合にはけいれん発作後の[[wj:クレアチンホスホキナーゼ|クレアチンホスホキナーゼ]] (CPK)の上昇、複雑部分発作の30分以内なら血中[[プロラクチン]]濃度などの増加も診断上参考になる。[[複雑部分発作]]などの意識障害の存在が疑われ、脳波異常がなければ、[[wj:心電図|心電図]]検査、[[wj:ホルター心電図|ホルター心電図]]検査も必要となる。これらの所見を基に、てんかんか否かを判断し、てんかんと診断されれば次にてんかん発作型を分類することになる。 | 補助診断として[[脳波]]・ビデオ同時記録、[[睡眠ポリグラフィーが]]用いられ、脳[[MRI]]、[[SPECT]]などが検査されるが、最近では[[遺伝子診断]]も試みられている。目撃者がいない場合にはけいれん発作後の[[wj:クレアチンホスホキナーゼ|クレアチンホスホキナーゼ]] (CPK)の上昇、複雑部分発作の30分以内なら血中[[プロラクチン]]濃度などの増加も診断上参考になる。[[複雑部分発作]]などの意識障害の存在が疑われ、脳波異常がなければ、[[wj:心電図|心電図]]検査、[[wj:ホルター心電図|ホルター心電図]]検査も必要となる。これらの所見を基に、てんかんか否かを判断し、てんかんと診断されれば次にてんかん発作型を分類することになる。 | ||
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====循環器疾患に伴う失神==== | ====循環器疾患に伴う失神==== | ||
一過性の意識消失を失神というが、[[不整脈]]、[[自律神経調節性失神]] | 一過性の意識消失を失神というが、[[不整脈]]、[[自律神経調節性失神]](NMS)がある。 | ||
不整脈には[[wj:徐脈性不整脈|徐脈性不整脈]]([[wj:洞不全症候群|洞不全症候群]]、[[wj:AVブロック|AVブロック]])、[[wj:頻拍性不整脈|頻拍性不整脈]]([[wj:上室性頻拍|上室性頻拍]]、[[wj:心室性不整脈|心室性不整脈]])があり、[[wj:心電図|心電図]]検査を要する。 | |||
自律神経調節性失神には[[迷走神経緊張性失神]](前駆症状は発汗、あくび、吐き気、腹痛)、[[頸動脈洞症候群]](振り向くような動作で起こる)、[[状況失神]](排尿、排便、咳、嚥下などが原因となる)がある。病歴の聴取が重要である。 | |||
==== 一過性脳虚血発作 ==== | ==== 一過性脳虚血発作 ==== | ||
33行目: | 37行目: | ||
==== 片頭痛 ==== | ==== 片頭痛 ==== | ||
(<u>編集部コメント:一言で、片頭痛とは何かをお願いします。</u>)予兆として[[閃光]]、[[暗転]](<u>編集部コメント:暗点でしょうか?</u>),[[視野欠損]]、[[錯視]] | (<u>編集部コメント:一言で、片頭痛とは何かをお願いします。</u>)予兆として[[閃光]]、[[暗転]](<u>編集部コメント:暗点でしょうか?</u>),[[視野欠損]]、[[錯視]]としての視覚の変形や大小の変化を示す[[片頭痛]]「[[不思議の国のアリス現象]]」などがある。片頭痛とてんかんの両者の特徴を持つ[[てんかん性片頭痛症候群]]の存在に留意する必要がある<ref name=ref15><pubmed>7964814</pubmed></ref>。 | ||
==== 一過性健忘 ==== | ==== 一過性健忘 ==== | ||
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==== レム睡眠行動障害 ==== | ==== レム睡眠行動障害 ==== | ||
レム睡眠期に一致して手足を動かし、叫ぶ、泣く、笑う、動き回るなどの異常行動が見られ、レム睡眠期が終わると終了する。 | |||
==== 夜驚症、夢中遊行、錯乱性覚醒 ==== | ==== 夜驚症、夢中遊行、錯乱性覚醒 ==== | ||
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[[入眠時ミオクローヌス]]とは、入眠期に起こる短い不規則な筋の収縮であり、発生機序は不明である。[[ミオクロニー発作]]、[[単純部分発作]]との鑑別に重要である。[[周期性四肢運動障害]]は睡眠中に起こる足関節の背屈進展を伴う運動が頻回に出現する状態であり、入眠時ミオクローヌスとは異なる。 | [[入眠時ミオクローヌス]]とは、入眠期に起こる短い不規則な筋の収縮であり、発生機序は不明である。[[ミオクロニー発作]]、[[単純部分発作]]との鑑別に重要である。[[周期性四肢運動障害]]は睡眠中に起こる足関節の背屈進展を伴う運動が頻回に出現する状態であり、入眠時ミオクローヌスとは異なる。 | ||
==== 周期性四肢運動障害 ==== | ==== 周期性四肢運動障害 ==== | ||
[[周期性四肢運動障害]]とは睡眠中に起こる常同的四肢の運動で、[[むずむず脚症候群]]とオーバーラップする症候群として捉えられる。下肢に多く見られ、重症になると入眠が困難になる。病態として[[視床下部]] | [[周期性四肢運動障害]]とは睡眠中に起こる常同的四肢の運動で、[[むずむず脚症候群]]とオーバーラップする症候群として捉えられる。下肢に多く見られ、重症になると入眠が困難になる。病態として[[視床下部]]A11の[[ドーパミン]](DA)細胞の機能低下が考えられている<ref name=ref9>'''稲見康司、他'''<br>むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害<br>''日本臨床'' 71(増刊号5);485-490, 2013.</ref>。 | ||
==== 発作性ジスキネジア ==== | ==== 発作性ジスキネジア ==== | ||
[[発作性ジスキネジア]](PD)は[[ジストニア]]、[[アテトーゼ]]、[[バリスムス]]、[[舞踏病]]が単独あるいは複合して出現する。[[発作性運動誘発性ジスキネジア]](paroxysmal kinesigenic dyskinesia: OKD)は男性に多く、家族性症例が多い。[[Proline-rich transmembrane protein 2]]が責任遺伝子の1つとして報告された<ref name=ref8><pubmed>22752065</pubmed></ref>。意識障害はなく、発作間欠期は無症候性である。発作は数十秒で毎日のように頻回に出現する。[[随意運動]]の開始、[[ストレス]] | [[発作性ジスキネジア]](PD)は[[ジストニア]]、[[アテトーゼ]]、[[バリスムス]]、[[舞踏病]]が単独あるいは複合して出現する。[[発作性運動誘発性ジスキネジア]](paroxysmal kinesigenic dyskinesia: OKD)は男性に多く、家族性症例が多い。[[Proline-rich transmembrane protein 2]]が責任遺伝子の1つとして報告された<ref name=ref8><pubmed>22752065</pubmed></ref>。意識障害はなく、発作間欠期は無症候性である。発作は数十秒で毎日のように頻回に出現する。[[随意運動]]の開始、[[ストレス]]、緊張などにより誘発され、[[前兆]](感覚異常など)がある症例が多い。特発性発作性運動性ジスキネジアでは発作時脳波にも異常は見られない。症候性の場合には画像所見で異常が見いだされることもある。 | ||
==== 非運動誘発性ジスキネジア ==== | ==== 非運動誘発性ジスキネジア ==== | ||
[[非運動誘発性ジスキネジア]](paroxysmal non-kinesigenic dyskinesia: PNKD)は男性にやや多く、家族性の症例の多くでは[[myofibrillogenesis regulator 1]] (MR-1)遺伝子が責任遺伝子として報告されている<ref name=ref3><pubmed>17515540</pubmed></ref>。MR-1遺伝子変異がない症例の発病は12歳ころで、変異のある症例の発病は平均4歳である。症状はPKD(<u>編集部コメント:何の略でしょうか?</u>)とほぼ同様であるが、MR- | [[非運動誘発性ジスキネジア]](paroxysmal non-kinesigenic dyskinesia: PNKD)は男性にやや多く、家族性の症例の多くでは[[myofibrillogenesis regulator 1]] (MR-1)遺伝子が責任遺伝子として報告されている<ref name=ref3><pubmed>17515540</pubmed></ref>。MR-1遺伝子変異がない症例の発病は12歳ころで、変異のある症例の発病は平均4歳である。症状はPKD(<u>編集部コメント:何の略でしょうか?</u>)とほぼ同様であるが、MR-1変異がある症例ではジストニアあるいはジストニアと舞踏病の組み合わせで、変異がない症例ではジストニア、舞踏病、両者の組み合わせ、[[バリスム]]が観察される。発作は主に体肢に起こり、発作は週単位で10分から1時間の持続時間が多い。[[カフェイン]]、[[アルコール]]、情動変化、疲労、空腹などで誘発される。MR-1変異のない症例ではてんかんと合併することもあり、変異を有する症例では片頭痛を約半数が合併する。前兆には体肢の硬直、ふらふら感、しびれ感、などがある。 | ||
==分類== | ==分類== | ||
てんかんの遺伝子解析の最近の進歩で、国際抗てんかん連盟(ILAE)は新たな分類を提案しているが、現実的にはてんかん発作型の分類が抗てんかん薬選択に用いれるため、てんかん発作の国際分類(1981年)<ref name=ref4><pubmed>6790275</pubmed></ref>が多く使われている(表1)。 | てんかんの遺伝子解析の最近の進歩で、国際抗てんかん連盟(ILAE)は新たな分類を提案しているが、現実的にはてんかん発作型の分類が抗てんかん薬選択に用いれるため、てんかん発作の国際分類(1981年)<ref name=ref4><pubmed>6790275</pubmed></ref>が多く使われている(表1)。 | ||
この分類では発作は[[全般発作]]と[[部分発作]]に | この分類では発作は[[全般発作]]と[[部分発作]]に 分類され、それぞれ(<u>編集部コメント:前者は?</u>)[[欠神発作]]、[[ミオクロニー発作]]、[[間代発作]]、[[強直発作]]、[[強直間代発作]]、[[脱力発作]]に分けられ、後者は[[単純部分発作]]、[[複雑部分発作]]と[[2次性全般化発作]]に分けられる。これらの分類に従って治療のための抗てんかん薬が選択される。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|+表1.てんかん発作型国際分類(1981年) | |+表1.てんかん発作型国際分類(1981年) | ||
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| rowspan="3" style="background-color:#d3d3d3" |部分発作(焦点性、局在性発作) | | rowspan="3" style="background-color:#d3d3d3" |'''部分発作(焦点性、局在性発作)''' | ||
|A.[[単純部分発作]](意識減損はない) | |'''A.[[単純部分発作]](意識減損はない)''' | ||
#運動徴候を呈するもの | #運動徴候を呈するもの | ||
#体性感覚または特殊感覚症状を呈するもの | #体性感覚または特殊感覚症状を呈するもの | ||
73行目: | 77行目: | ||
(多くは“複雑部分発作”として経験される) | (多くは“複雑部分発作”として経験される) | ||
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|B.[[複雑部分発作]] | |'''B.[[複雑部分発作]]''' | ||
#単純部分発作で始まり意識減損に移行するもの<br> a.単純部分発作で始まるもの<br> b.自動症を伴うもの | #単純部分発作で始まり意識減損に移行するもの<br> a.単純部分発作で始まるもの<br> b.自動症を伴うもの | ||
#意識減損で始まるもの | #意識減損で始まるもの | ||
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|C.二次的に全般化する部分発作 | |'''C.二次的に全般化する部分発作''' | ||
#単純部分発作(A.)が全般発作に進展するもの | #単純部分発作(A.)が全般発作に進展するもの | ||
#複雑部分発作(B.)が全般発作に進展するもの | #複雑部分発作(B.)が全般発作に進展するもの | ||
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| rowspan="6" style="background-color:#d3d3d3" |全般発作 | | rowspan="6" style="background-color:#d3d3d3" |全般発作 | ||
|A.[[欠神発作]]<br> a.意識減損のみのもの<br> b.軽度の[[間代要素]]を伴うもの<br> c.[[脱力要素]]を伴うもの<br> d.[[強直要素]]を伴うもの<br> e.[[自動症]]を伴うもの<br> f.[[自律神経要素]]を伴うもの<br> (b~fは単独でも組み合わせでもあり得る) | |'''A.[[欠神発作]]'''<br> a.意識減損のみのもの<br> b.軽度の[[間代要素]]を伴うもの<br> c.[[脱力要素]]を伴うもの<br> d.[[強直要素]]を伴うもの<br> e.[[自動症]]を伴うもの<br> f.[[自律神経要素]]を伴うもの<br> (b~fは単独でも組み合わせでもあり得る) | ||
#[[非定型欠神発作]]<br> a.筋緊張の変化はA.1.よりも明瞭<br> b.発作の起始/終末は急激ではない | #[[非定型欠神発作]]<br> a.筋緊張の変化はA.1.よりも明瞭<br> b.発作の起始/終末は急激ではない | ||
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|B.[[ミオクロニー発作]] | |'''B.[[ミオクロニー発作]]''' | ||
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|C.[[間代発作]] | |'''C.[[間代発作]]''' | ||
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|D.[[強直発作]] | |'''D.[[強直発作]]''' | ||
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|E.[[強直間代発作]] | |'''E.[[強直間代発作]]''' | ||
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|F.脱力(失立)発作 | |'''F.脱力(失立)発作''' | ||
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| style="background-color:#d3d3d3" |未分類てんかん発作 | | style="background-color:#d3d3d3" |'''未分類てんかん発作''' | ||
| 不適切あるいは不完全なデータのため分類できないものや上記カテゴリーに分類できないすべてのものを含む。 | | 不適切あるいは不完全なデータのため分類できないものや上記カテゴリーに分類できないすべてのものを含む。 | ||
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#'''ミオクロニー発作''':突然に両側同時に強い筋の[[れん縮]]が出現する。瞬間的なので意識障害を伴わず、光刺激により誘発されやすい。思春期に好発し、覚醒直後、入眠期に起こりやすい。発作時の脳波では両側同期性の棘徐波結合が出現し、棘波に一致し筋れん縮が起こる。 | #'''ミオクロニー発作''':突然に両側同時に強い筋の[[れん縮]]が出現する。瞬間的なので意識障害を伴わず、光刺激により誘発されやすい。思春期に好発し、覚醒直後、入眠期に起こりやすい。発作時の脳波では両側同期性の棘徐波結合が出現し、棘波に一致し筋れん縮が起こる。 | ||
#'''間代発作''':意識消失とともに数秒から1分以上の左右対称性の全身の律動的な筋の痙攣を起こす。発作時脳波では10Hz以上の速波と徐派から構成され、棘徐派結合も出現する。 | #'''間代発作''':意識消失とともに数秒から1分以上の左右対称性の全身の律動的な筋の痙攣を起こす。発作時脳波では10Hz以上の速波と徐派から構成され、棘徐派結合も出現する。 | ||
#'''強直間代発作''':突然の叫び(初期叫声)から始まることがあり、意識を突然消失し、左右対称性の全身の強直性けいれん(約30秒)が出現し、次いで間代性けいれん(30から90秒)に移行する。強直けいれんでは体幹・四肢近位が屈曲強直し、[[眼球]]が上転、口をかみしめ、呼吸筋も強直しているため呼吸できず顔面蒼白、[[チアノーゼ]]が出現する。その他発作中には[[唾液]][[分泌]]、[[尿失禁]] | #'''強直間代発作''':突然の叫び(初期叫声)から始まることがあり、意識を突然消失し、左右対称性の全身の強直性けいれん(約30秒)が出現し、次いで間代性けいれん(30から90秒)に移行する。強直けいれんでは体幹・四肢近位が屈曲強直し、[[眼球]]が上転、口をかみしめ、呼吸筋も強直しているため呼吸できず顔面蒼白、[[チアノーゼ]]が出現する。その他発作中には[[唾液]][[分泌]]、[[尿失禁]]をすることもある。間代性けいれんは次第に収束するが、睡眠([[終末睡眠]])に移行し、あるいは発作後朦朧状態に移行する場合もある。この間の意識は無く、朦朧状態から回復しても頭痛、[[筋肉]]痛、[[嘔吐]]などを示すこともある。発作時脳波は強直けいれん時には筋電図やアーチファクトが入るが、間代けいれんに入ると次第に筋電図の間から見える脳波が読めるようになる。脳波は9Hz以上の低電位放電から始まり次第に周波数が減り振幅が増大化するが、発作前の脳波律動になるまでには数分間を要する。 | ||
#'''脱力発作''':一瞬(数秒以内)の全身の姿勢保持筋の緊張低下あるいは消失により起こるため、起立時に起これば[[転倒]]する。発作抑制は困難な症例もある。発作時脳波では多棘徐派結合、平坦化、[[低電位速波]]から構成される。 | #'''脱力発作''':一瞬(数秒以内)の全身の姿勢保持筋の緊張低下あるいは消失により起こるため、起立時に起これば[[転倒]]する。発作抑制は困難な症例もある。発作時脳波では多棘徐派結合、平坦化、[[低電位速波]]から構成される。 | ||
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脳波上の異常波が脳の一定部位から始まり、発作症状も脳の一定部位から始まる。部分発作は1)意識障害を伴わない単純部分発作、2)意識障害を伴う複雑部分発作、3)、二次性全般か発作に分類される。これらの単純部分発作は複雑部分発作、二次性全般化発作の初期症状として出現することも少なくない。 | 脳波上の異常波が脳の一定部位から始まり、発作症状も脳の一定部位から始まる。部分発作は1)意識障害を伴わない単純部分発作、2)意識障害を伴う複雑部分発作、3)、二次性全般か発作に分類される。これらの単純部分発作は複雑部分発作、二次性全般化発作の初期症状として出現することも少なくない。 | ||
#'''単純部分発作''':意識障害を示さず、発作時脳波は脳皮質の局所性の放電である。これは発作症状から4種類に分けられる。<br> '''[[運動徴候を伴う発作]]'''は[[焦点性運動発作]]、[[ジャクソン型発作]]、[[回転発作]]、[[姿勢発作]]、[[音声発作]]がある。焦点性運動発作は[[前中心回]]の[[運動領野]]に焦点があり、その脳部位に関連する身体部位のけいれんが出現する。ジャクソン型発作は前中心回の一部に始まった発作発射が周囲の脳部位に波及するため手ー腕ー下肢などのように同側の身体部位を巻き込んで発作が拡大してゆく。発作後に足などの麻痺が残ることがあり、これを[[トッドの麻痺]]という。<br> '''[[回転発作]]'''は脳皮質焦点の反対側へ眼球、顔、躯幹を向ける発作である。<br> '''[[姿勢発作]]'''は[[補足運動野]]に焦点がある場合、反対側の上肢を挙上し、それを見上げるように頭部、眼球を回転させる。音声発作は前中心回の発作発射により同じ言葉を反復する、叫ぶ、あるいは言葉を話せなくなる発作である。<br> '''[[体性感覚ないし特殊感覚症状を伴う発作]]'''には[[体性感覚発作]]、[[視覚発作]]、[[聴覚発作]]、[[めまい発作]]がある。体性感覚発作は[[後中心回]]の発作発射によりその部位がつかさどる体の一部にしびれ感などの[[知覚]]異常が出現する。視覚発作は[[後頭葉]]にてんかん焦点があるとき、閃光、渦巻く雲が見えたり視野が狭くなったりする。<br> '''[[聴覚発作]]'''はてんかん焦点が側頭葉上部にあると、発作として音が聞こえあるいは逆に聞こえなくなる。鉤回に焦点があると匂いを感ずる発作が、焦点が島、弁蓋部にあると苦味、酸味などの味覚発作が出現する。側頭葉上回にあるとめまい発作が出現すると考えられている。<br> '''[[自律神経症状ないし兆候を伴う発作]]'''は、数分以内の自律神経系症状(悪心、嘔吐、頭痛、腹部不快感など)を示す発作で、血圧の上昇、[[瞳孔]]散大、くしゃみなどもみられる。成人の場合には多彩な自律神経症状は発作症状の一部として出現する。<br> '''[[精神症状を伴う発作]]''' 発作発射は[[側頭葉]]皮質から[[辺縁系]]の一部に限局するため、意識は失われない。発作症状は多彩であり、[[情動発作]]が多い。これは側頭葉下面皮質に焦点があるとき、[[不安]]、[[恐怖]]、[[怒り]]、[[多幸感]]、を感ずるものである。[[言語中枢]]付近に焦点がある場合、言葉を話せなくなる([[運動性失語]])あるいは言葉を理解できなくなる([[感覚性失語]])を起こす。[[記憶障害発作]](<u> | #'''単純部分発作''':意識障害を示さず、発作時脳波は脳皮質の局所性の放電である。これは発作症状から4種類に分けられる。<br> '''[[運動徴候を伴う発作]]'''は[[焦点性運動発作]]、[[ジャクソン型発作]]、[[回転発作]]、[[姿勢発作]]、[[音声発作]]がある。焦点性運動発作は[[前中心回]]の[[運動領野]]に焦点があり、その脳部位に関連する身体部位のけいれんが出現する。ジャクソン型発作は前中心回の一部に始まった発作発射が周囲の脳部位に波及するため手ー腕ー下肢などのように同側の身体部位を巻き込んで発作が拡大してゆく。発作後に足などの麻痺が残ることがあり、これを[[トッドの麻痺]]という。<br> '''[[回転発作]]'''は脳皮質焦点の反対側へ眼球、顔、躯幹を向ける発作である。<br> '''[[姿勢発作]]'''は[[補足運動野]]に焦点がある場合、反対側の上肢を挙上し、それを見上げるように頭部、眼球を回転させる。音声発作は前中心回の発作発射により同じ言葉を反復する、叫ぶ、あるいは言葉を話せなくなる発作である。<br> '''[[体性感覚ないし特殊感覚症状を伴う発作]]'''には[[体性感覚発作]]、[[視覚発作]]、[[聴覚発作]]、[[めまい発作]]がある。体性感覚発作は[[後中心回]]の発作発射によりその部位がつかさどる体の一部にしびれ感などの[[知覚]]異常が出現する。視覚発作は[[後頭葉]]にてんかん焦点があるとき、閃光、渦巻く雲が見えたり視野が狭くなったりする。<br> '''[[聴覚発作]]'''はてんかん焦点が側頭葉上部にあると、発作として音が聞こえあるいは逆に聞こえなくなる。鉤回に焦点があると匂いを感ずる発作が、焦点が島、弁蓋部にあると苦味、酸味などの味覚発作が出現する。側頭葉上回にあるとめまい発作が出現すると考えられている。<br> '''[[自律神経症状ないし兆候を伴う発作]]'''は、数分以内の自律神経系症状(悪心、嘔吐、頭痛、腹部不快感など)を示す発作で、血圧の上昇、[[瞳孔]]散大、くしゃみなどもみられる。成人の場合には多彩な自律神経症状は発作症状の一部として出現する。<br> '''[[精神症状を伴う発作]]''' 発作発射は[[側頭葉]]皮質から[[辺縁系]]の一部に限局するため、意識は失われない。発作症状は多彩であり、[[情動発作]]が多い。これは側頭葉下面皮質に焦点があるとき、[[不安]]、[[恐怖]]、[[怒り]]、[[多幸感]]、を感ずるものである。[[言語中枢]]付近に焦点がある場合、言葉を話せなくなる([[運動性失語]])あるいは言葉を理解できなくなる([[感覚性失語]])を起こす。<br> '''[[記憶障害発作]]'''(<u>編集部コメント:これは、精神症状を伴う発作のひとつでしょうか?それとも改行すべき?</u>)は一過性の[[健忘]]、[[既視体験]]、[[未視体験]]などの発作症状を示し、[[認知発作]]には[[夢幻様体験]]、[[強制思考]]などがある。[[錯覚]]発作の症状として[[変形視]]、[[巨視症]]、[[小視症]]などの視覚症状と音が大きくあるいは小さく聞こえるなどの聴覚性症状がある。[[構成幻覚発作]]は人の声、動作が意味を持ち、情景が見え、音楽が聞こえるなどの複雑な幻覚を感ずる発作である。 | ||
#'''複雑発作''':発作時に意識障害を認め、発作後に健忘を残す。発作の始めから意識障害を示す発作と単純部分発作から複雑部分発作へと移行する発作があり、それぞれ意識障害のみを示す発作と自働症を伴う発作に細分化される。意識障害は数十秒から数分間に及び、意識障害の始まりと終わりは欠神発作に比較し、よりゆっくりとしている。発作中は動作が止まるときと体を奇妙に動かす自働症を示すこともある。側頭葉起源の自働症は運動を伴わない凝視と意識の断絶で始まり、噛む、嚥下する、衣類をなでるなどの、単純かつ定型的な自働症が続発する。側頭葉以外に起始場合には[[凝視]]を欠き、[[歩行性自働症]]、両側四肢の持続的運動および強直性の反体側への頭部、眼球の運動を特徴とする場合、あるいは転倒発作で開始され、[[錯乱]]と健忘を伴い、徐々に回復するタイプがある<ref name=ref5><pubmed> 7092181</pubmed></ref>。<br> 前葉性の複雑部分発作の特徴は蹴ったり叩いたりする複雑な運動性自働症、奇妙な発語、軽症の発作後もうろう状態と急速な回復とがある。複雑部分発作時の脳波所見は側頭部、前頭部ないしは広範性の一側性ないしは両側性放電を示すが、脳波異常を記録できない場合もあり、心因性発作と誤診されることもある。 | #'''複雑発作''':発作時に意識障害を認め、発作後に健忘を残す。発作の始めから意識障害を示す発作と単純部分発作から複雑部分発作へと移行する発作があり、それぞれ意識障害のみを示す発作と自働症を伴う発作に細分化される。意識障害は数十秒から数分間に及び、意識障害の始まりと終わりは欠神発作に比較し、よりゆっくりとしている。発作中は動作が止まるときと体を奇妙に動かす自働症を示すこともある。側頭葉起源の自働症は運動を伴わない凝視と意識の断絶で始まり、噛む、嚥下する、衣類をなでるなどの、単純かつ定型的な自働症が続発する。側頭葉以外に起始場合には[[凝視]]を欠き、[[歩行性自働症]]、両側四肢の持続的運動および強直性の反体側への頭部、眼球の運動を特徴とする場合、あるいは転倒発作で開始され、[[錯乱]]と健忘を伴い、徐々に回復するタイプがある<ref name=ref5><pubmed> 7092181</pubmed></ref>。<br> 前葉性の複雑部分発作の特徴は蹴ったり叩いたりする複雑な運動性自働症、奇妙な発語、軽症の発作後もうろう状態と急速な回復とがある。複雑部分発作時の脳波所見は側頭部、前頭部ないしは広範性の一側性ないしは両側性放電を示すが、脳波異常を記録できない場合もあり、心因性発作と誤診されることもある。 | ||
#'''[[二次性全般化発作]]''':単純部分発作から、複雑部分発作から、単純部分から複雑部分発作を経て二次性全般化発作にいたる3経路がある。強直・間代発作が多いが、強直あるいは間代だけの場合もある。発作時脳波は焦点性発射が全般化することが多く、発作間歇期には焦点性異常波が記録される。しかし、異常所見が記録されないこともある。 | #'''[[二次性全般化発作]]''':単純部分発作から、複雑部分発作から、単純部分から複雑部分発作を経て二次性全般化発作にいたる3経路がある。強直・間代発作が多いが、強直あるいは間代だけの場合もある。発作時脳波は焦点性発射が全般化することが多く、発作間歇期には焦点性異常波が記録される。しかし、異常所見が記録されないこともある。 |