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1960年以降、認知心理学(cognitive psychology)の登場により、脳をある種の情報処理装置としてモデル化し、外からは直接観測できないような注意・感情・記憶などの精神現象をも研究対象とし、どのような内部プロセスがこれらを支えられているかが研究されるようになった。しかし、その後も数十年の間、意識を科学的に研究する動きは出てこなかった。 | 1960年以降、認知心理学(cognitive psychology)の登場により、脳をある種の情報処理装置としてモデル化し、外からは直接観測できないような注意・感情・記憶などの精神現象をも研究対象とし、どのような内部プロセスがこれらを支えられているかが研究されるようになった。しかし、その後も数十年の間、意識を科学的に研究する動きは出てこなかった。 | ||
1980年代後半の脳イメージング技術の発達が契機となって、1990年序盤には、著名な脳科学者が意識研究に積極的に参加するようになった。現在でも続く二つの大きな国際意識研究学会、[http://www.consciousness.arizona.edu/ Toward a Science of Consciousness(2016年以降はThe science of | 1980年代後半の脳イメージング技術の発達が契機となって、1990年序盤には、著名な脳科学者が意識研究に積極的に参加するようになった。現在でも続く二つの大きな国際意識研究学会、[http://www.consciousness.arizona.edu/ Toward a Science of Consciousness(2016年以降はThe science of Consciousness)]および[http://www.theassc.org/ Association for Scientific Study of Consciousness (ASSC)]は、この頃に創設された 。意識研究の代表的な専門誌[http://www.imprint.co.uk/product/journal-of-consciousness-studies/ Journal of Consciousness Studies]と[http://www.journals.elsevier.com/consciousness-and-cognition/ Consciousness and Cognition]が創刊したのも同時期である<sup>*1</sup>。 | ||
脳科学による意識研究の成立にインパクトが大きかったのは、1990年代にクリックとコッホによって提唱された意識研究の枠組みである(C Koch, 2004)。この枠組みでは、特にヒトとサルの視覚系に注目して、特定の視覚意識を生み出すのに十分な最小限の神経細胞集団、いわゆる「意識の神経相関(the neural correlates of consciousness; NCC)」を同定することが大きな目的とされた。この目的のもとに、数多くの実証的脳科学意識研究が生み出された(NCC研究については4.3章を参照)。これらの研究は、多くの脳科学者に意識が具体的な研究対象となることを確信させ、現在の意識研究の基礎となっている。 | 脳科学による意識研究の成立にインパクトが大きかったのは、1990年代にクリックとコッホによって提唱された意識研究の枠組みである(C Koch, 2004)。この枠組みでは、特にヒトとサルの視覚系に注目して、特定の視覚意識を生み出すのに十分な最小限の神経細胞集団、いわゆる「意識の神経相関(the neural correlates of consciousness; NCC)」を同定することが大きな目的とされた。この目的のもとに、数多くの実証的脳科学意識研究が生み出された(NCC研究については4.3章を参照)。これらの研究は、多くの脳科学者に意識が具体的な研究対象となることを確信させ、現在の意識研究の基礎となっている。 |