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<font size="+1">[http://researchmap.jp/N-Hayashi55 林 直樹]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/N-Hayashi55 林 直樹]</font><br> | ||
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==はじめに== | ==はじめに== | ||
(<u>編集部コメント:イントロは、初学者がパーソナリティ障害が何か容易に理解できる解説から開始してください。</u>) | |||
パーソナリティ障害の概念は、近年、大きく変化してきており、今後も変貌することが見込まれている。それゆえ、本項目では、その概念の歴史を概説した後に、その概念の現状を示す。さらにここでは、パーソナリティ障害の定義や診断、基本的特徴、病因論や病態論、治療の現状について記すこととする。 | パーソナリティ障害の概念は、近年、大きく変化してきており、今後も変貌することが見込まれている。それゆえ、本項目では、その概念の歴史を概説した後に、その概念の現状を示す。さらにここでは、パーソナリティ障害の定義や診断、基本的特徴、病因論や病態論、治療の現状について記すこととする。 | ||
== | ==概念についての歴史的概観== | ||
ここでは、パーソナリティ障害概念の歴史を、1980年に刊行された米国精神医学会(American Psychiatric Association (APA))の診断基準第1版(Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 3rd edition ([[DSM-III]])) <ref name=ref1>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Third Edition (DSM-III)<br> ''Washington D.C.: American Psychiatric Association''; 1980<br> 髙橋三郎監訳 <br>DSM-III精神障害の分類と診断の手引<br>''医学書院、東京''、1982</ref>を区切りとして概説する。 | ここでは、パーソナリティ障害概念の歴史を、1980年に刊行された米国精神医学会(American Psychiatric Association (APA))の診断基準第1版(Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 3rd edition ([[DSM-III]])) <ref name=ref1>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Third Edition (DSM-III)<br> ''Washington D.C.: American Psychiatric Association''; 1980<br> 髙橋三郎監訳 <br>DSM-III精神障害の分類と診断の手引<br>''医学書院、東京''、1982</ref>を区切りとして概説する。 | ||
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<ref name=ref02>'''林 直樹'''<br>パーソナリティ障害概念の歴史 DSM-III以前<br>In: 神庭重信、池田学、ed. DSM-5を読み解く<br>''東京: 中山書店''; 2014:138-150.</ref> | <ref name=ref02>'''林 直樹'''<br>パーソナリティ障害概念の歴史 DSM-III以前<br>In: 神庭重信、池田学、ed. DSM-5を読み解く<br>''東京: 中山書店''; 2014:138-150.</ref> | ||
精神医学の教科書の幾つかでは、Pinel, P. (1801)の[[妄想]]なき狂気(manie sans délire)や理性的狂気(la folie raisonnante)がパーソナリティ障害概念の濫觴だとされている。それは、例えば「妄想を伴わずに周期的に起る、患者がなお理性の力で行動を抑えられる怒りの発作(理性的狂気)」に見られるように、病的行動の背後に幻覚・妄想や気分症状がないことを特徴とする[[精神障害]]であった。その弟子であるEsquirol, J.É. | 精神医学の教科書の幾つかでは、Pinel, P. (1801)の[[妄想]]なき狂気(manie sans délire)や理性的狂気(la folie raisonnante)がパーソナリティ障害概念の濫觴だとされている。それは、例えば「妄想を伴わずに周期的に起る、患者がなお理性の力で行動を抑えられる怒りの発作(理性的狂気)」に見られるように、病的行動の背後に幻覚・妄想や気分症状がないことを特徴とする[[精神障害]]であった。その弟子であるEsquirol, J.É.などによる[[モノマニー]] ([[monomania]])についての議論では、[[殺人モノマニー]]、[[窃盗モノマニー]]といった特定の衝動に支配された行動を示す症例が記述されている。 | ||
19世紀後半におけるドイツで[[中間者概念]]として包括される諸議論もパーソナリティ障害を捉えたものと考えられる。その代表的提唱者であるKoch, J.L.A.は、彼のいう[[精神病質低格]] (psychopathische Minderwertigkeit)(1888)を「精神的な異常を持ってはいるが、もっとも不良な場合でも精神病と見ることはできず、もっとも軽い場合でも正常とは考えられない」精神状態と定義した。このような見方は、Kraepelin, E.などの論じる精神病質概念に引き継がれた。 | |||
パーソナリティ障害の病態が初めて独自の精神病理として積極的に(~ではないという否定文によってでなく)定義されたのは、Schneider, K.の精神病質論<ref name=ref2>'''Schneider K.'''<br>Die Psychopathischen Persönlichkeiten.<br>''Wien: Franz Deuticke''; 1923<br>懸田克躬他訳<br>精神病質人格<br>''みすず書房''、 東京、 1954</ref> | パーソナリティ障害の病態が初めて独自の精神病理として積極的に(~ではないという否定文によってでなく)定義されたのは、Schneider, K.の精神病質論<ref name=ref2>'''Schneider K.'''<br>Die Psychopathischen Persönlichkeiten.<br>''Wien: Franz Deuticke''; 1923<br>'''懸田克躬他訳'''<br>精神病質人格<br>''みすず書房''、 東京、 1954</ref>であった。この業績のためにSchneiderは、多くの教科書で、現代に通じるパーソナリティ障害概念を最初に規定した精神科医とされている。彼はまず、その上位概念となる[[異常パーソナリティ]] (abnorme Persönlichkeit)を平均的なパーソナリティからの変異として規定し、さらに精神病質パーソナリティを異常パーソナリティの一部として「そのパーソナリティの異常さのゆえに自らが悩む(leiden)か、または、社会が苦しむ(を苦しませる(stören))異常」であると定義した。 | ||
パーソナリティ障害はその後、[[wj:世界保健機構|世界保健機構]] (World Health Organization, WHO))の国際疾病分類第6版(The international classification of diseases, 6th revision (ICD-6))(1948)や、APAのDSM-I (1952)以降、当時広く使われていたパーソナリティ障害のタイプを包括する診断として取り上げられるようになった。 | |||
===DSM-IIIの変革とその後=== | ===DSM-IIIの変革とその後=== | ||
DSM-III<ref name=ref1 />は、パーソナリティ障害の概念や診断の枠組みが現在の形となる重要な契機となった。そこで行われた改革の中で特に重要なのは、Millon, | DSM-III<ref name=ref1 />は、パーソナリティ障害の概念や診断の枠組みが現在の形となる重要な契機となった。そこで行われた改革の中で特に重要なのは、Millon, Tの理論に基づくタイプ分類の採用と、その診断における[[多神論的記述的症候論モデル]] (Polythetic descriptive syndromal model)の導入である。 | ||
====Millonの理論に基づくタイプ分類==== | ====Millonの理論に基づくタイプ分類==== | ||
DSM-IIIのパーソナリティ障害のタイプは、Millonの作成した臨床多軸目録から理論的に導かれたものとして規定されている。この理論では、2種の行動パターン(能動・受動)と4種の対人関係(依存・独立・両価・分離)の組み合わせで8 (2×4) | DSM-IIIのパーソナリティ障害のタイプは、Millonの作成した臨床多軸目録から理論的に導かれたものとして規定されている。この理論では、2種の行動パターン(能動・受動)と4種の対人関係(依存・独立・両価・分離)の組み合わせで8 (2×4)種のタイプが規定されている。 | ||
例えば[[依存性パーソナリティ障害]]は受動・依存によって特徴づけられるタイプとされる。また、[[回避性パーソナリティ障害]]は、従来規定されていなかったのであるが、能動・分離を特徴とするものとして新たに作成されたタイプであった。従来の診断基準(例えばICD-9<ref name=ref04>'''World Health Organization (WHO)'''<br>The international classification of diseases, 9th revision, clinical modification. <br>''Geneva: World Health Organization (WHO)''; 1978</ref>)では、パーソナリティ障害がそこに属する臨床でよく使われているタイプを集めて構成されていたのに対して、ここでは、一つの理論で包括されるものとして捉えられている点に大きな進歩が認められる。 | |||
====多神論的記述的症候論モデルの導入==== | ====多神論的記述的症候論モデルの導入==== | ||
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====ディメンジョナルモデルの提唱==== | ====ディメンジョナルモデルの提唱==== | ||
元々パーソナリティ心理学では、[[因子分析]]などの統計学的方法を使って信頼性の高いパーソナリティ傾向のディメンジョナルな評価が確立されていた。他方、パーソナリティ障害の診断では、DSM-IIIの多神論的記述的症候論モデルが導入されても、まだ信頼性が他の精神障害のレベルに達しないなどの問題点が残されていた。それは、当時[[ICD-10]] (1992)<ref name=ref4>'''World Health Organization (WHO)'''<br>The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders. Clinical Descriptions and Diagnostical Guidlines.<br>''Geneva: WHO''; 1992<br>'''融道男、中根允文、小見山実、他''' 監訳 <br>ICD-10 精神および行動の障害:臨床記述と診断ガイドライン、新訂版<br>''医学書院''、2005</ref>やDSM-III-R (1987)で採用されていたカテゴリカルモデルによる診断が原因だと主張されていた。そこで、[[DSM-IV]]<ref name=ref5>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fourth Edition (DSM-IV)<br>''Washington DC: American Psychiatric Association''; 1994<br>'''髙橋三郎、大野裕、染矢俊幸'''監訳<br>DSM-IV精神疾患の診断・統計マニュアル<br>''医学書院、東京''、1996</ref>では、これへの対策として、Widigerら(1996)の見解に基づいて、DSMの新版でのディメンジョナルモデルの導入が提唱された。 | |||
その後、Costa, P.T. & McCrae, R.R.の主要5因子モデル(Five Factor Model(1990))から発展した5次元モデルや、Trull, T.J.ら(2007)による4次元モデルなどの診断モデルの検討が進められた。 | |||
==現在のパーソナリティ障害の概念・定義== | ==現在のパーソナリティ障害の概念・定義== | ||
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その要点は、 | その要点は、 | ||
*パーソナリティ障害の偏った内的体験および行動の持続的パターンは、(1) | *パーソナリティ障害の偏った内的体験および行動の持続的パターンは、(1)[[認知]]、(2)[[感情]]、(3)[[対人関係機能]]、(4)[[衝動]]コントロールの4領域の内2つ以上に表れている(ICD-10 DCRの基準G1、DSM-5の基準A) | ||
*そのパターンには、柔軟性がなく、個人的および社会的状況の幅広い範囲に広がっている(ICD-10 DCRの基準G2、DSM-5の基準B) | *そのパターンには、柔軟性がなく、個人的および社会的状況の幅広い範囲に広がっている(ICD-10 DCRの基準G2、DSM-5の基準B) | ||
*そのパターンは、長期間安定して持続しており、その始まりは遅くとも青年期もしくは成人期早期までさかのぼる(ICD-10 DCRの基準G4、DSM-5の基準D)、などである。 | *そのパターンは、長期間安定して持続しており、その始まりは遅くとも青年期もしくは成人期早期までさかのぼる(ICD-10 DCRの基準G4、DSM-5の基準D)、などである。 | ||
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さらに、DSM-5の第2部におけるパーソナリティ障害タイプの診断は、該当する診断基準項目の数が規定数(域値)以上であるかどうかによって検討される。 | さらに、DSM-5の第2部におけるパーソナリティ障害タイプの診断は、該当する診断基準項目の数が規定数(域値)以上であるかどうかによって検討される。 | ||
診断基準の例として[[境界性パーソナリティ障害]]を示そう。その診断基準の項目は、 | 診断基準の例として[[境界性パーソナリティ障害]]を示そう。その診断基準の項目は、 | ||
#見捨てられ体験を避ける努力 | |||
#不安定な対人関係 | |||
#同一性障害 | |||
# 2種以上の衝動的行動 (但し5.を含まず) | |||
#[[自殺]]の脅かし、[[自殺未遂]]または[[自傷行為]]の繰り返し | |||
#著明な感情的不安定さ | |||
#慢性的な空虚感、退屈 | |||
#不適切で激しい怒り | |||
#[[ストレス]]に関連した妄想的念慮もしくは重症の[[解離症]]状 | |||
であり、その5つ以上が当てはまるならそれが診断されることになる。 | |||
他のパーソナリティ障害タイプの診断でも、7~9項目の診断基準が準備され、それぞれに定められた3~5の域値以上の診断基準項目が該当するなら、そのタイプの診断を考慮するという手続きが進められる。 | 他のパーソナリティ障害タイプの診断でも、7~9項目の診断基準が準備され、それぞれに定められた3~5の域値以上の診断基準項目が該当するなら、そのタイプの診断を考慮するという手続きが進められる。 | ||
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DSM-5の第3部「新しい尺度とモデル」に記述されている代替診断基準は、ディメンジョナルモデルとカテゴリカルモデルを融合させたハイブリッドモデルと称されている。このようにDSM-5では、第2部と第3部とで異なるパーソナリティ障害の診断基準が収載されている。前者は従来のDSM-IVのものをほとんど変更せずに載せたものであり、後者は新たに開発されたが、フィールドトライアルで採用が時期尚早と判断され、今後、大幅な修正が行われる予定のものである。ここには、パーソナリティ障害概念の混乱が如実に表れている。他方、後述するようにこの代替診断基準には、理論的に優れた考え方が多く組み入れられている。 | DSM-5の第3部「新しい尺度とモデル」に記述されている代替診断基準は、ディメンジョナルモデルとカテゴリカルモデルを融合させたハイブリッドモデルと称されている。このようにDSM-5では、第2部と第3部とで異なるパーソナリティ障害の診断基準が収載されている。前者は従来のDSM-IVのものをほとんど変更せずに載せたものであり、後者は新たに開発されたが、フィールドトライアルで採用が時期尚早と判断され、今後、大幅な修正が行われる予定のものである。ここには、パーソナリティ障害概念の混乱が如実に表れている。他方、後述するようにこの代替診断基準には、理論的に優れた考え方が多く組み入れられている。 | ||
DSM- | DSM-5第3部の代替診断基準の全般的診断基準では、パーソナリティ障害がパーソナリティ機能の障害であることが明快に規定されている。これは、従来の定義と比較すると大きな進歩である。そのパーソナリティ機能とは、表1に示されているように[[自己機能]]、[[対人関係機能]]であり、さらにそれぞれが2つに分類されている。 | ||
{|class="wikitable" | {|class="wikitable" | ||
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DSM-5第3部の代替診断基準では、これらのパーソナリティ機能の4領域の2つ以上に中等度以上の障害があることがパーソナリティ障害の診断の条件とされている。 | DSM-5第3部の代替診断基準では、これらのパーソナリティ機能の4領域の2つ以上に中等度以上の障害があることがパーソナリティ障害の診断の条件とされている。 | ||
代替診断基準ではさらに、病的パーソナリティ特性が認められることが診断に必要とされる。それらは、[[否定的感情]]、[[離脱]]、[[対立]]、[[脱抑制]]、および[[精神病性]]の5つの特性である。それぞれの特性には、総計25種の特性側面が含まれている。病的パーソナリティ特性とその特性側面を表2に示す。 | |||
{|class="wikitable" | {|class="wikitable" | ||
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|- | |- | ||
|否定的感情 (vs 感情安定) | |否定的感情 (vs 感情安定) | ||
| | |[[不安]]、[[抑うつ]]、[[罪悪感]]、[[羞恥心]]、[[怒り]]といった否定的感情が広範囲で高度である。さらにそれに基づく自傷行為などの行動や依存などの対人関係が見られる。 | ||
| | |[[不安傾向]]、[[分離不安]]、従順さ、敵意、[[固執]]、[[抑うつ傾向]]、[[猜疑心]]、[[感情不安定]](制限された感情の欠如) | ||
|- | |- | ||
|離脱 (vs 外向性) | |離脱 (vs 外向性) | ||
|社会的感情的関わりの忌避。引きこもる、楽しみなどの感情体験を避ける。 | |社会的感情的関わりの忌避。引きこもる、楽しみなどの感情体験を避ける。 | ||
| | |親密さ回避、[[アンヘドニア]]、抑うつ傾向、制限された感情、猜疑心 | ||
|- | |- | ||
|対立 (vs 協調) | |対立 (vs 協調) | ||
|自己イメージが尊大で、自分に特別な取り計らいを求める、他者に嫌悪感・反感を抱く、他者に配慮せず他者を自分のために利用する。 | |自己イメージが尊大で、自分に特別な取り計らいを求める、他者に嫌悪感・反感を抱く、他者に配慮せず他者を自分のために利用する。 | ||
| | |[[虚偽性]]、[[誇大性]]、[[注意喚起]]、[[冷淡]]、[[敵意]] | ||
|- | |- | ||
|脱抑制 (vs 誠実性) | |[[脱抑制]] (vs 誠実性) | ||
|直接的に欲求の充足を求めて、その場の考えや感情、状況からの刺激に反応して衝動的な行動に走る。 | |直接的に欲求の充足を求めて、その場の考えや感情、状況からの刺激に反応して衝動的な行動に走る。 | ||
| | |衝動性、[[転導性]]、無謀さ、硬直した完璧主義(の欠如) | ||
|- | |- | ||
|精神病性 (vs 明晰性) | |精神病性 (vs 明晰性) | ||
119行目: | 140行目: | ||
DSM-5第3部の代替診断基準でも、パーソナリティ障害タイプごとに設定された診断基準に従って操作的に診断手続きが行われる。次に境界性パーソナリティ障害の例を示す。 | DSM-5第3部の代替診断基準でも、パーソナリティ障害タイプごとに設定された診断基準に従って操作的に診断手続きが行われる。次に境界性パーソナリティ障害の例を示す。 | ||
診断の過程は2つの段階から構成されている。まず、パーソナリティ機能(表1参照)の2項目以上における中等度またはそれ以上の障害があることが条件になる。次いで、3つの病的パーソナリティ特性(否定的感情、脱抑制、対立 (表2参照))に属する7つの特性側面: | 診断の過程は2つの段階から構成されている。まず、パーソナリティ機能(表1参照)の2項目以上における中等度またはそれ以上の障害があることが条件になる。次いで、3つの病的パーソナリティ特性(否定的感情、脱抑制、対立 (表2参照))に属する7つの特性側面: | ||
#情動不安定(否定的感情の一側面) | |||
#不安傾向(否定的感情の一側面) | |||
#分離不安(否定的感情の一側面) | |||
#抑うつ傾向(否定的感情の一側面) | |||
#衝動性(脱抑制の一側面) | |||
#無謀さ(脱抑制の一側面) | |||
#敵意(対立の一側面) | |||
のうち4つ以上があり、そのうちの少なくとも1つは 5、6、7のいずれか(脱抑制と敵対のどちらか)である必要があるとされる。 | |||
他のタイプの診断でも、この例のようにパーソナリティ機能の評価と病的パーソナリティ特性側面の評価の両方が実施される。 | 他のタイプの診断でも、この例のようにパーソナリティ機能の評価と病的パーソナリティ特性側面の評価の両方が実施される。 | ||
139行目: | 169行目: | ||
|- | |- | ||
| rowspan="3" |A群・奇妙で風変わり | | rowspan="3" |A群・奇妙で風変わり | ||
|妄想性パーソナリティ障害 | |[[妄想性パーソナリティ障害]] | ||
|他者への疑念や不信から、危害が加えられることや裏切りを恐れること。 | |他者への疑念や不信から、危害が加えられることや裏切りを恐れること。 | ||
| | |[[妄想性障害]]、[[妄想型統合失調症]]を発症しやすい。男性に多い。 | ||
|- | |- | ||
| 統合失調質パーソナリティ障害 | |[[統合失調質パーソナリティ障害]] | ||
|非社交的、孤立しがちで、他者への関心が希薄のように見えること。 | |非社交的、孤立しがちで、他者への関心が希薄のように見えること。 | ||
| | |かつて[[統合失調症]]の[[病前性格]]と言われていた。 | ||
|- | |- | ||
|統合失調型パーソナリティ障害 | |[[統合失調型パーソナリティ障害]] | ||
|思考が曖昧で過度に抽象的で脱線する、感情が狭くて適切さを欠き、対人関係で孤立しやすいこと。 | |思考が曖昧で過度に抽象的で脱線する、感情が狭くて適切さを欠き、対人関係で孤立しやすいこと。 | ||
|統合失調症に発展しやすい。 | |統合失調症に発展しやすい。 | ||
|- | |- | ||
| rowspan="4" | | | rowspan="4" |B群・[[演技的感情的]]で移り気 | ||
|境界性パーソナリティ障害 | |境界性パーソナリティ障害 | ||
|感情や対人関係の不安定さ、衝動をうまく制御することができないこと。 | |感情や対人関係の不安定さ、衝動をうまく制御することができないこと。 | ||
| | |[[うつ病]]などの精神障害を合併。臨床現場で高頻度。女性に多い。 | ||
|- | |- | ||
|自己愛性パーソナリティ障害 | |[[自己愛性パーソナリティ障害]] | ||
|周囲の人々を軽視し、周囲の注目と賞賛を求め、傲慢、尊大な態度を見せること。 | |周囲の人々を軽視し、周囲の注目と賞賛を求め、傲慢、尊大な態度を見せること。 | ||
| | |うつ病や[[物質使用障害]]が多く合併。男性に多い。 | ||
|- | |- | ||
|反(非)社会性パーソナリティ障害 | |[[反社会性パーソナリティ障害|反(非)社会性パーソナリティ障害]] | ||
|他者の権利を無視・侵害する行動や、向こう見ずで思慮に欠け、暴力などの攻撃的行動に走ること。 | |他者の権利を無視・侵害する行動や、向こう見ずで思慮に欠け、暴力などの攻撃的行動に走ること。 | ||
| | |物質使用障害の合併が多い。[[素行症]]から多く発展する。男性に多い。 | ||
|- | |- | ||
|演技性パーソナリティ障害 | |[[演技性パーソナリティ障害]] | ||
|他者の注目や関心を集める派手な外見や大げさな行動。 | |他者の注目や関心を集める派手な外見や大げさな行動。 | ||
|女性に多い。 | |女性に多い。 | ||
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| rowspan="3" |C群・不安で内向的 | | rowspan="3" |C群・不安で内向的 | ||
|依存性パーソナリティ障害 | |[[依存性パーソナリティ障害]] | ||
|他者への過度の依存。自らの行動や決断に他者の助言や指示を求めること。 | |他者への過度の依存。自らの行動や決断に他者の助言や指示を求めること。 | ||
| | |うつ病、[[パニック障害]]に多く合併。女性に多い。 | ||
|- | |- | ||
|強迫性パーソナリティ障害 | |[[強迫性パーソナリティ障害]] | ||
|一定の秩序を保つことへの固執、融通性に欠けること、几帳面、完全主義や細部への拘泥。 | |一定の秩序を保つことへの固執、融通性に欠けること、几帳面、完全主義や細部への拘泥。 | ||
|男性に多い。 | |男性に多い。 | ||
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|回避性(不安性) パーソナリティ障害 | |[[回避性パーソナリティ障害|回避性(不安性) パーソナリティ障害]] | ||
|周囲からの拒絶や失敗することを恐れ、強い刺激をもたらす状況を避けること。 | |周囲からの拒絶や失敗することを恐れ、強い刺激をもたらす状況を避けること。 | ||
| | |[[社交不安]]の合併が多い。 | ||
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|} | |} | ||
240行目: | 270行目: | ||
この表4に見られるように、例えば、反社会性パーソナリティ障害は対立と脱抑制というように、パーソナリティ障害タイプのそれぞれは、5種の病的パーソナリティ特性の高低によって特徴づけられる。 | この表4に見られるように、例えば、反社会性パーソナリティ障害は対立と脱抑制というように、パーソナリティ障害タイプのそれぞれは、5種の病的パーソナリティ特性の高低によって特徴づけられる。 | ||
=== | ===疫学=== | ||
パーソナリティ障害は、一般の人々に高い比率で見出される。Coid. J. (2003)の総説によると、構造化面接を用いた研究において一般人口の10-15%に何らかのパーソナリティ障害が見いだされており、個々のタイプでは、それぞれが一般人口の1-2 %に認められるとされる。プライマリーケアの場や精神科臨床では、有病率が25% | パーソナリティ障害は、一般の人々に高い比率で見出される。Coid. J. (2003)の総説によると、構造化面接を用いた研究において一般人口の10-15%に何らかのパーソナリティ障害が見いだされており、個々のタイプでは、それぞれが一般人口の1-2 %に認められるとされる。プライマリーケアの場や精神科臨床では、有病率が25%程度に上昇する。 | ||
ただし、疫学研究の所見は、研究ごとに大きなばらつきがあることに注意が必要である。その理由の一つは、先に指摘したように、パーソナリティ障害が一般人口との間に連続性があり、比較的の軽症の精神疾患なので、診断域値や評価の変化が大きな有病率の違いを引き起こすことであろう。 | |||
==パーソナリティ障害の病態・病因の理解== | ==パーソナリティ障害の病態・病因の理解== | ||
247行目: | 279行目: | ||
===生物学的要因=== | ===生物学的要因=== | ||
精神障害の生物学的要因の基底には、遺伝的要因がある。パーソナリティ障害の遺伝的要因は、その特性が同じ家系の人に見出されることが多い、[[一卵性双生児]]で[[二卵性双生児]]よりも一致しやすい、といった臨床遺伝学的研究によって確認されている。Torgersen, S.らの[[双生児研究]](2000)では、パーソナリティ障害の遺伝性が0.5~0.6であると算出されている。Silverman, J.M.らの家族研究(1991)では、境界性パーソナリティ障害の感情不安定と衝動性とに家族集積性のあることが認められている<ref name=ref8><pubmed>18638645</pubmed></ref>。 | |||
神経生理学的研究でもパーソナリティ障害と生物学的特性との間の様々な関連が見いだされている<ref name=ref8 /> | 神経生理学的研究でもパーソナリティ障害と生物学的特性との間の様々な関連が見いだされている<ref name=ref8 />。例えば、反社会性、境界性パーソナリティ障害では、その衝動性が[[セロトニン]]系の機能低下と関連しているという知見の報告がある。中枢神経系の画像研究でも多くの知見がもたらされている。例えば、境界性パーソナリティ障害では、[[帯状束]]のセロトニン系の反応低下といった[[辺縁系]]と[[前頭葉]]の回路の機能低下の報告が多くなされている。また、虐待を受けてきた境界性パーソナリティ障害患者において[[脳下垂体]]、[[海馬]]が小さいという所見も注目されている。 | ||
===生育環境・社会文化的要因=== | ===生育環境・社会文化的要因=== | ||
パーソナリティ障害の成り立ちにおいては、発達過程や生育環境も重視されなければならない。例えば、境界性、反社会性パーソナリティ障害では、劣悪な養育環境(発達期の虐待、貧困や施設での生育など)が発生要因として関与していると考えられている。1990年代には、境界性パーソナリティ障害の生育史(虐待、親子関係) | パーソナリティ障害の成り立ちにおいては、発達過程や生育環境も重視されなければならない。例えば、境界性、反社会性パーソナリティ障害では、劣悪な養育環境(発達期の虐待、貧困や施設での生育など)が発生要因として関与していると考えられている。1990年代には、境界性パーソナリティ障害の生育史(虐待、親子関係)についての[[後方視的研究]]が行われ、養育環境要因の確認が進められた<ref name=ref10>'''林 直樹'''<br>境界性パーソナリティ障害の生活歴・現病歴・家族関係<br>''精神科治療学''. 2010;25(11):1459-1463.</ref>。 | ||
パーソナリティ障害は、特に社会文化的要因の影響を受けやすいと考えられている。例えば、境界性パーソナリティ障害の増加は繰り返し指摘されてきたが、その原因は社会文化的な影響によるものと考えられている。 | パーソナリティ障害は、特に社会文化的要因の影響を受けやすいと考えられている。例えば、境界性パーソナリティ障害の増加は繰り返し指摘されてきたが、その原因は社会文化的な影響によるものと考えられている。 | ||
== | ==治療== | ||
パーソナリティ障害についての理解は、暴力、自殺関連行動、物質使用、ひきこもりなど、さまざまな問題行動を把握する上でなくてはならないものである。さらに、気分障害や精神病性障害、物質使用障害などの他の精神障害の背後にパーソナリティ障害があり、臨床像や経過に影響を与えていることはごく一般的である。 | パーソナリティ障害についての理解は、暴力、自殺関連行動、物質使用、ひきこもりなど、さまざまな問題行動を把握する上でなくてはならないものである。さらに、気分障害や精神病性障害、物質使用障害などの他の精神障害の背後にパーソナリティ障害があり、臨床像や経過に影響を与えていることはごく一般的である。 | ||
262行目: | 294行目: | ||
===社会心理的治療(心理療法) === | ===社会心理的治療(心理療法) === | ||
パーソナリティ障害の治療では、[[支持的精神療法]]([[精神療法的管理]])、[[認知療法]]、[[精神分析的精神療法]]といった[[心理社会的治療]]の主要な方法がほとんどすべて実践されてきた。この他にも、[[家族療法]]、デイケア、[[集団療法]]などのさまざまな種類の治療法が患者の特性に合わせて用いられている。 | |||
====効果が確認された心理社会的治療==== | ====効果が確認された心理社会的治療==== | ||
近年の動きで特に注目されるのは、境界性パーソナリティ障害に対する心理社会的治療の効果についての[[wj:無作為化対照比較試験|無作為化対照比較試験]] (Randomized Controlled Trial (RCT))による研究が次々に発表されていることである。 | |||
RCTで効果が確認された最初の心理療法は、1991年に発表された米国のLinehan, M. | RCTで効果が確認された最初の心理療法は、1991年に発表された米国のLinehan, M.らの[[弁証法的行動療法]] (Dialectic behavior therapy (DBT))<ref name=ref11>'''Linehan MM.'''<br>Cognitive-behavioral treatment of borderline personality disorder. <br''>New York: Guilford Press''; 1993<br>大野裕、岩坂彰、井沢功一朗、松岡律、石井留美、阿佐美雅弘訳<br>境界性パーソナリティ障害の弁証法的行動療法―DBTによるBPDの治療<br''>誠信書房、東京''、2007</ref>である。DBTでは、① マインドフルネス(現実的で冷静な自己観察、現実認識の技能)、② 感情統御技能、 ③ 実際的な対人関係技能が修得されるべき基本的技能だとされている。この治療は、週2回の教育的技能訓練と行動リハーサルの行われる集団技能訓練と、週1回の個人面接から構成され、1年間以上続けられる。 | ||
次に効果が実証されたのは、英国のBateman, A. & Fonagy, P.が開発した[[メンタライゼーション療法]] (Mentalisation-based treatment (MBT))<ref name=ref12>'''Bateman A、 Fonagy P.''' <br>Psychotherapy for borderline personality disorder: Mentalization-based treatment. <br>''New York: Oxford University Press USA''; 2004. <br>狩野力八郎、白波瀬丈一郎訳 <br>メンタライゼーションと境界パーソナリティ障害―MBTが拓く精神分析的精神療法の新たな展開<br>''岩崎学術出版社、東京''、2008</ref>である。その治療の目標は、メンタライゼーション(自分やまわりの人の行動がその考えや気持ちといった心理的過程から起こることを理解する能力)を高めることである。MBTでは、さまざまな対人関係や出来事の体験から自分自身の心理状態を理解し、自分や他者の行動についての学びを深める訓練が行われる。 | |||
その後、2000年代には、Young, J.の[[スキーマ療法]]、Clarkin, J.らの[[転移]]に焦点づけられた精神分析的治療などのプログラムの効果研究が実施され、十分な効果があることが実証されている。これらの治療では、自傷行為や自殺未遂といった境界性パーソナリティ障害の症状を大幅に軽減させることが確認されている。 | |||
====地域における対応、治療==== | ====地域における対応、治療==== | ||
パーソナリティ障害に関連する自殺・自殺関連行動や暴力といった行動は、地域で問題になるのが通例である。それゆえその対応は、地域や学校、[[wj: 救急医療|救急医療]]の現場で行われる必要がある。 | |||
英国において実践されている地域精神保健活動では、危機介入チーム、小児思春期精神保健チーム、早期介入チームなどの多職種チームによってパーソナリティ障害の対応、治療の導入が担われている。これらの活動の概要を知るには、それが依拠している英国の国立最適医療研究所(National Institute for Health and Clinical Excellence (NICE))によってまとめられた、境界性パーソナリティ障害患者の評価や治療の導入のための地域や救急医療機関で用いられるガイドライン<ref name=ref13>'''National Institute for Health and Clinical Excellence (NICE)'''<br>Borderline personality disorder: Treatment and management: NICE clinical guideline 78. <br>''London: National Institute for Health and Clinical Excellence''; 2009.</ref>、反社会性パーソナリティ障害の暴力を主な対象とするガイドライン<ref name=ref14>'''National Institute for Health and Care Excellence (NICE)''' <br>Antisocial personality disorder: Treatment, management and prevention, NICE clinical guideline 77. <br>''London: National Institute for Health and Care Excellence''; 2009.</ref>、自殺関連行動を見せる人々の評価や治療の導入のための地域や救急医療機関で用いられるガイドライン<ref name=ref15>'''National Institute for Health and Clinical Excellence (NICE)'''<br>Self-harm: The short-term physical and psychological management: NICE clinical guideline 16. <br>''London: National Institute for Health and Clinical Excellence''; 2004.</ref>が有用である。 | |||
ここではまた、[[予防医学]]的視点から、地域や学校、救急医療の場において早期の介入、治療の導入治療を行うことがパーソナリティ障害の問題の拡大防止に貢献することが強調されている。 | |||
===薬物療法=== | ===薬物療法=== | ||
薬物療法は、やはり有力な治療法の一つである。めざましい効果が期待できない性質ではあるものの、薬物療法によって精神症状を一時的にでも軽快させることができるなら、それが患者にとって大きな便益となることは稀でない。 | 薬物療法は、やはり有力な治療法の一つである。めざましい効果が期待できない性質ではあるものの、薬物療法によって精神症状を一時的にでも軽快させることができるなら、それが患者にとって大きな便益となることは稀でない。 | ||
従来の薬物療法についての知見をまとめるなら、統合失調型パーソナリティ障害などの受動的なタイプには少量の[[抗精神病薬]]、境界性、反社会性パーソナリティ障害の衝動性や感情不安定には[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]([[SSRI]])や[[感情調整薬]]、回避性パーソナリティ障害の不安や抑うつにはSSRIや[[モノアミン酸化酵素阻害薬]] (MAOI)がそれぞれ有効だとされる。さらに最近では、境界性、統合失調型、反社会性パーソナリティ障害に対する[[非定型抗精神病薬]]の有効性が確認されている<ref name=ref16><pubmed> 20556762</pubmed></ref>。 | |||
==予後== | |||
近年、パーソナリティ障害の特徴は、従来考えられていたほど持続的でないことが指摘されている。従来から多くの経過研究が行われていたのは、境界性パーソナリティ障害においてであるが、近年の研究では、相当部分が改善するが、再発も多いという結果になっている。 | |||
Zanarini, M. et al. (2012)は、患者の退院後16年の経過報告(2012)では、2年以上の寛解、回復(全般的機能評価尺度(GAS) > 60となること)をそれぞれ99%、60%が経験するけれども、2年以上の寛解の後に36%が再発する、2年以上の回復の後に44%が回復の状態を失うと報告されている。パーソナリティ障害診断が経過中に変化することは、他のタイプでも報告されている。 | |||
神経症のパーソナリティ障害患者の12年間の変化を調査したSievewright, H.らの研究(2002)では、その期間の中で同じタイプにとどまっている率が低いことが報告されている(境界性パーソナリティ障害患者が、それが含まれる演技的・感情的で移り気なB群クラスターにとどまっている率でさえわずか30%であった)。これらの所見は、パーソナリティ障害が経過の中で改善しうる精神障害であることを示唆している。 | |||
==おわりに== | ==おわりに== | ||
現在、パーソナリティ障害の概念は、大きな変化の波に洗われている。2017年に刊行が予定されている[[ICD-11]]でも大きな変革が盛り込まれることが予想されている。これは、研究の急速な進歩によってもたらされている変化であり、今後ともその潮流が変わることはないであろう。わが国の現況に目を向けると、パーソナリティ障害についての研究は他国に大きく後れを取っているし、治療についても必要な医療体制が十分に整えられていないことを認めざるをえない。しかしそのような状況でも、否、そのような状況にあるからこそ一層、われわれは、パーソナリティ障害の患者のための研究と治療を進める努力を続けなくてはならない。 | |||
==関連項目== | |||
*[[境界性パーソナリティ障害]] | |||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |