「グルタミン酸仮説」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
66行目: 66行目:
 我々もCN関連遺伝子を日本人統合失調症で網羅的に調べており、現在までに染色体8p上のCN関連遺伝子の関与を確認している(未発表)。CNのノックアウトマウスでは、NMDA型グルタミン酸受容体を介した[[海馬]]の[[長期抑圧現象]]が低下しており<ref name=ref36><pubmed>11733061</pubmed></ref>、CNもグルタミン酸神経系に機能的関連が示唆されている。
 我々もCN関連遺伝子を日本人統合失調症で網羅的に調べており、現在までに染色体8p上のCN関連遺伝子の関与を確認している(未発表)。CNのノックアウトマウスでは、NMDA型グルタミン酸受容体を介した[[海馬]]の[[長期抑圧現象]]が低下しており<ref name=ref36><pubmed>11733061</pubmed></ref>、CNもグルタミン酸神経系に機能的関連が示唆されている。


==急性致死性緊張病==
==抗NMDA受容体脳炎==
 緊張病の一部に、高熱、チアノーゼ、昏迷をともない急速に死に至る場合があることが19世紀から知られていた。Stauderは、18歳から26歳の若年者に生じる致死性緊張病として27例を報告している<ref>'''Stauder KH.'''<br>Die todliche Katatonie. <br>''Arch Psychiatr'' 102: 614 1934</ref>。2011年にDalmauは、辺縁系脳炎でNMDA(N-methyl D-aspartate)受容体に対する抗体を検出する病態を抗NMDA受容体脳炎と提唱した<ref><pubmed>21163445</pubmed></ref>。脳炎なので様々な精神症状も呈するが、発熱、チアノーゼ、てんかん発作などから死に至る場合もある。腫瘍をもった個体が腫瘍を非自己として抗体を産生し、腫瘍を標的とした抗体が中枢神経を抗原と誤認して交叉免疫を生じる神経症状を傍腫瘍症候群と呼ぶ。当初、抗NMDA受容体脳炎も卵巣奇形腫を合併する症例で報告されたので傍腫瘍性脳炎と考えられていた。しかし、腫瘍を伴わない自己免疫症例も報告された。2013年、Steinerらは統合失調症と診断された12例から抗NMDA受容体抗体を検出し注目された<ref><pubmed>23344076</pubmed></ref>。それは、急性致死性緊張病の一部が抗NMDA受容体脳炎だった可能性が浮上したからである。グルタミン酸仮説は、緊張病の一部にあてはまる可能性が示唆されている。
 統合失調症の一型とされている「緊張病」の一部に、高熱、チアノーゼ、昏迷をともない急速に死に至る場合があることが19世紀から知られていた。Stauderは、18歳から26歳の若年者に生じる致死性緊張病として27例を報告している<ref>'''Stauder KH.'''<br>Die todliche Katatonie. <br>''Arch Psychiatr'' 102: 614 1934</ref>。2011年にDalmauは、辺縁系脳炎でNMDA(N-methyl D-aspartate)受容体に対する抗体を検出する病態を抗NMDA受容体脳炎と提唱した<ref><pubmed>21163445</pubmed></ref>。脳炎なので様々な精神症状も呈するが、発熱、チアノーゼ、てんかん発作などから死に至る場合もある。腫瘍をもった個体が腫瘍を非自己として抗体を産生し、腫瘍を標的とした抗体が中枢神経を抗原と誤認して交叉免疫を生じる神経症状を傍腫瘍症候群と呼ぶ。当初、抗NMDA受容体脳炎も卵巣奇形腫を合併する症例で報告されたので傍腫瘍性脳炎と考えられていた。しかし、腫瘍を伴わない自己免疫症例も報告された。2013年、Steinerらは統合失調症と診断された12例から抗NMDA受容体抗体を検出し注目された<ref><pubmed>23344076</pubmed></ref>。それは、急性致死性緊張病の一部が抗NMDA受容体脳炎だった可能性が浮上したからである。<br>このように、抗NMDA受容体脳炎が統合失調症と診断されうる状態を引き起こすことは、統合失調症のグルタミン酸仮説を支持する。


==参考文献==
==参考文献==

案内メニュー