「アダプタータンパク質複合体」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0164591 松田 信爾]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0164591 松田 信爾]</font><br>
''電気通信大学大学院 情報理工学研究科 先進理工学専攻''<br>
''電気通信大学大学院 情報理工学研究科 基盤理工学専攻''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年6月12日 原稿完成日:201X年X月XX日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年6月12日 原稿完成日:201X年X月XX日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)<br>
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英略語:AP complex
英略語:AP complex


{{box|text= アダプタータンパク質複合体は4種類のポリペプチド鎖からなるヘテロ4量体で、2種類のlarge subunit, 1種類のmedium subunit, 1種類のsmall subunitから構成されている。このタンパク質複合体ファミリーにはAP-1からAP-5の5つのメンバー―が含まれており、それぞれが積み荷となる膜貫通タンパク質を細胞内の特定の膜領域へと輸送する機能を持っている<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref><ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。積荷タンパク質の認識はmedium subunitが積荷タンパク質の細胞内領域に存在するシグナル配列に結合することにより行われるのが一般的である。アダプタータンパク質複合体のメンバーは全て図1に示すような共通の高次構造をとっていると考えられている。2つのlarge subunitのC末領域は”Ear domain”を形成し、”Head domain”はlarge subunitのN末領域とmedium subunitとsmall subunitからなっている。}}
{{box|text= アダプタータンパク質複合体は4種類のポリペプチド鎖からなるヘテロ4量体で、2種類のlarge subunit, 1種類のmedium subunit, 1種類のsmall subunitから構成されている。このタンパク質複合体はファミリーを形成し、 AP-1からAP-5の5つのメンバーが報告されている。AP-1からAP-5はいずれも、それぞれが積み荷となる膜貫通タンパク質を細胞内の特定の膜領域へと輸送する機能を持っている 。積荷タンパク質の認識はmedium subunitが積荷タンパク質の細胞内領域に存在するシグナル配列に結合することにより行われるのが一般的である。アダプタータンパク質複合体のメンバーは全て図1に示すような共通の高次構造をとっていると考えられている。2つのlarge subunitのC末領域は”Ear domain”を形成し、”Head domain”はlarge subunitのN末領域とmedium subunitとsmall subunitからなっている。}}


== アダプタータンパク質複合体とは==
== アダプタータンパク質複合体とは==
<u>編集部コメント 抄録とは別に、全体に対するイントロをお願いいたします。抄録との重複が有っても構いません。また、抄録の内容が必ずしも本文に無いようです。</u>
 真核細胞は細胞をつつむ細胞膜と共に、様々な細胞内膜系を有しており、それぞれの膜が特有の機能を果たしている。これらの膜機能は、細胞膜と細胞内膜系、あるいは細胞内膜系間での厳密に制御されたタンパク質輸送に大きく依存していることから、その輸送機構が盛んに研究されてきている。


== AP-1 ==
 これまでに膜タンパク質の輸送に中心的な役割を果たす分子として、AP-1からAP-5の5種類アダプタータンパク質複合体が報告されている('''''')。これら5種類のアダプタータンパク質は、全て、2種類のlarge subunit, 1種類のmedium subunit, 1種類のsmall subunitからなるヘテロ4量体構造をとっており、'''図1'''に示すような共通の高次構造を持つと考えられている。2つのlarge subunitのC末領域は”Ear domain”を形成し、”Head domain”はlarge subunitのN末領域とmedium subunitとsmall subunitからなっている。5種類のアダプタータンパク質はいずれも、それぞれが積み荷となる膜貫通タンパク質を細胞内の特定の膜領域から別の膜領域へと輸送する機能を持っている<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref><ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref>('''図2''')。
[[ファイル:Matsuda Fig 1.png|300px|サムネイル|右|'''図1 アダプタータンパク質複合体の構造''']]
[[ファイル:AdaptorsOverviewc.jpg|300px|サムネイル|'''図2 各アダプタータンパク質複合体の細胞内機能'''<br><ref name=Hirst2011><pubmed>22022230</pubmed></ref>より引用。]]
=== 機能 ===
 AP-1は[[エンドソーム]]と[[トランスゴルジネットワーク]]との間で[[膜タンパク質]]の[[膜輸送|輸送]]を行うアダプタータンパク質複合体である<ref name=Robinson2004><pubmed>15066634</pubmed></ref>
 
 [[神経細胞]]や[[wj:上皮細胞|上皮細胞]]といった極性をもつ細胞においては、ある種の膜タンパク質を[[樹状突起]]や[[側基底膜]]へと輸送することも知られている<ref name=Dwyer2001><pubmed>11502258</pubmed></ref><ref name=Folsch1999><pubmed>10535737</pubmed></ref><ref name=Folsch2001><pubmed>11157985</pubmed></ref><ref name=Jain2015><pubmed>25378584</pubmed></ref> 。
 
 AP-1は[[クラスリン]]を[[細胞内膜]]上に集積させると共に[[積荷タンパク質]]を認識することで積荷タンパク質を含んだクラスリン被覆小胞を形成し、積荷タンパク質を輸送する。AP-1の細胞内膜への集積は[[低分子量Gタンパク質]]である[[ARF]]に依存している。ARFによって[[ホスファチジルイノシトール4リン酸]]が細胞内膜上に合成されることによりAP-1がリクルートされると考えられている<ref name=Robinson1992><pubmed>1555237</pubmed></ref><ref name=Wang2003><pubmed>12914695</pubmed></ref> 。また、AP-1がホスファチジルイノシトール4リン酸と結合することも報告されている<ref name=Wang2003><pubmed>12914695</pubmed></ref> 。
 
 こうして細胞内膜上にリクルートされたAP-1は積荷タンパク質のYXX&Phi;配列や[DE]XXXL[LI]配列、あるいはこれら以外の非典型的な配列を認識して結合する<ref name=Bonifacino2003><pubmed>12651740</pubmed></ref><ref name=Ohno1995><pubmed>7569928</pubmed></ref> 。同時にAP-1はクラスリンに対する結合能も有することから細胞内膜系に存在する積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞へと運びこむことができる<ref name=Keen1987><pubmed>2890644</pubmed></ref> 。


=== サブユニット構造 ===
 アダプタータンパク質が司る膜輸送にはクラスリン依存性のものと非依存性のものがあり、AP-1およびAP-2は主にβサブユニットを介してクラスリンに結合し、膜タンパク質のクラスリン依存的な輸送を司る。これに対して、AP-3, AP-4, AP-5はクラスリン非依存的に膜タンパク質の輸送を行うと考えられている。
 AP-1は2つのlarge subunit (&beta;1と&gamma;)、1つのmedium subunit (&mu;1)、1つのsmall subunit (&sigma;1)からなる<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。


 主なクラスリン結合部位は&beta;1サブユニットに存在する<ref name=Gallusser1993><pubmed>8262066</pubmed></ref> が、&gamma;サブユニットもクラスリン結合に関与していることが報告されている<ref name=Doray2001><pubmed>11451993</pubmed></ref> 。積荷タンパク質との結合は主に&mu;サブユニットによって行われている。&gamma;サブユニットには&gamma;1と&gamma;2の2つのisoformが、&mu;1サブユニットには&mu;1Aと&mu;1Bの2つ、&sigma;1サブユニットには&sigma;1A~&sigma;1Cの3つのisoformが存在する<ref name=Folsch1999><pubmed>10535737</pubmed></ref><ref name=Setta-Kaffetzi2014><pubmed>24791904</pubmed></ref><ref name=Takatsu1998><pubmed>9733768</pubmed></ref> 。
 いずれのアダプタータンパク質の場合も、積荷タンパク質の認識はmedium subunitが積荷タンパク質の細胞内領域に存在するシグナル配列に結合することにより行われるのが一般的である。


{| class="wikitable" style="text-align: center;  
{| class="wikitable" style="text-align: center;  
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| ζ || β5 || μ5 || σ5
| ζ || β5 || μ5 || σ5
|}
|}
== AP-1 ==
[[ファイル:Matsuda Fig 1.png|300px|サムネイル|右|'''図1 アダプタータンパク質複合体の構造''']]
[[ファイル:AdaptorsOverviewc.jpg|300px|サムネイル|'''図2 各アダプタータンパク質複合体の細胞内機能'''<br><ref name=Hirst2011><pubmed>22022230</pubmed></ref>より引用。]]
=== 機能 ===
 AP-1は[[エンドソーム]]と[[トランスゴルジネットワーク]]との間で[[膜タンパク質]]の[[膜輸送|輸送]]を行うアダプタータンパク質複合体である<ref name=Robinson2004><pubmed>15066634</pubmed></ref> 。
 [[神経細胞]]や[[wj:上皮細胞|上皮細胞]]といった極性をもつ細胞においては、ある種の膜タンパク質を[[樹状突起]]や[[側基底膜]]へと輸送することも知られている<ref name=Dwyer2001><pubmed>11502258</pubmed></ref><ref name=Folsch1999><pubmed>10535737</pubmed></ref><ref name=Folsch2001><pubmed>11157985</pubmed></ref><ref name=Jain2015><pubmed>25378584</pubmed></ref> 。
 AP-1は[[クラスリン]]を[[細胞内膜]]上に集積させると共に[[積荷タンパク質]]を認識することで積荷タンパク質を含んだクラスリン被覆小胞を形成し、積荷タンパク質を輸送する。AP-1の細胞内膜への集積は[[低分子量Gタンパク質]]である[[ARF]]に依存している。ARFによって[[ホスファチジルイノシトール4リン酸]]が細胞内膜上に合成されることによりAP-1がリクルートされると考えられている<ref name=Robinson1992><pubmed>1555237</pubmed></ref><ref name=Wang2003><pubmed>12914695</pubmed></ref> 。また、AP-1がホスファチジルイノシトール4リン酸と結合することも報告されている<ref name=Wang2003><pubmed>12914695</pubmed></ref> 。
 こうして細胞内膜上にリクルートされたAP-1は積荷タンパク質のYXX&Phi;配列や[DE]XXXL[LI]配列、あるいはこれら以外の非典型的な配列を認識して結合する<ref name=Bonifacino2003><pubmed>12651740</pubmed></ref><ref name=Ohno1995><pubmed>7569928</pubmed></ref> 。同時にAP-1はクラスリンに対する結合能も有することから細胞内膜系に存在する積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞へと運びこむことができる<ref name=Keen1987><pubmed>2890644</pubmed></ref> 。
=== サブユニット構造 ===
 AP-1は2つのlarge subunit (&beta;1と&gamma;)、1つのmedium subunit (&mu;1)、1つのsmall subunit (&sigma;1)からなる<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。
 主なクラスリン結合部位は&beta;1サブユニットに存在する<ref name=Gallusser1993><pubmed>8262066</pubmed></ref> が、&gamma;サブユニットもクラスリン結合に関与していることが報告されている<ref name=Doray2001><pubmed>11451993</pubmed></ref> 。積荷タンパク質との結合は主に&mu;サブユニットによって行われている。&gamma;サブユニットには&gamma;1と&gamma;2の2つのisoformが、&mu;1サブユニットには&mu;1Aと&mu;1Bの2つ、&sigma;1サブユニットには&sigma;1A~&sigma;1Cの3つのisoformが存在する<ref name=Folsch1999><pubmed>10535737</pubmed></ref><ref name=Setta-Kaffetzi2014><pubmed>24791904</pubmed></ref><ref name=Takatsu1998><pubmed>9733768</pubmed></ref> 。
=== 発現パターンおよび欠損マウス ===
 μ1Aはユビキタスに発現しているが、μ1Bの発現は[[wj:上皮細胞|上皮細胞]]特異的であることが報告されている<ref name=Ohno1999><pubmed>10338135</pubmed></ref> 。つまり、μ1Aを含むAP-1(AP-1A)はユビキタスに発現しており、μ1Bを含むAP-1(AP-1B)は上皮細胞特異的に発現している。
 [[ゼブラフィッシュ]]では、μ1Bは[[wj:受精|受精]]直後の2細胞期には多く発現するものの、その後一時的に大きく減少し、受精後24時間から再び発現し始めることも報告されている<ref name=Zizioli2010><pubmed>20652956</pubmed></ref> 。またσ1サブユニットはどれもユビキタスに発現しているが、σ1Aとσ1Bの発現は脳で最も強いことが知られている<ref name=Glyvuk2010><pubmed>20203623</pubmed></ref> 。
 σ1Bの欠損マウスでは[[運動失調]]並びに[[空間記憶]]の異常が生じることも報告されている。μ1Aおよびγ1の欠損マウスは胎生致死である<ref name=Meyer2000><pubmed>10811610</pubmed></ref><ref name=Zizioli1999><pubmed>10026148</pubmed></ref> 。μ1Bの欠損マウスでは一部の[[側基底膜]]に存在する[[サイトカイン受容体]]が頂端膜へと輸送されることで、上皮細胞の[[wj:抗菌性タンパク質|抗菌性タンパク質]]の発現の減少や[[wj:IgA|IgA]]の分泌異常が引き起こされ、[[wj:腸管免疫|腸管免疫]]が異常をきたし、慢性[[wj:大腸炎|大腸炎]]をしめす。<ref name=Takahashi2011><pubmed>21669204</pubmed></ref>


=== 疾患との関連 ===
=== 疾患との関連 ===
==== MEDNIK症候群 ====
==== MEDNIK症候群 ====
 &sigma;1Aの欠損により[[MEDNIK症候群|MEDNIK (mental retardation, enteropathy, deafness, neuropathy, ichthyosis, and keratodermia) 症候群]]が引き起こされることが報告されている<ref name=Montpetit2008><pubmed>19057675</pubmed></ref> 。この疾患は[[銅ポンプ]]である[[ATP7A]]と[[ATP7B]]の細胞内輸送の異常のために引き起こされると考えられている。
 &sigma;1Aの欠損により[[MEDNIK症候群|MEDNIK (mental retardation, enteropathy, deafness, neuropathy, ichthyosis, and keratodermia) 症候群]]が引き起こされることが報告されている<ref name=Montpetit2008><pubmed>19057675</pubmed></ref> 。健常者由来の繊維芽細胞では、銅イオンポンプATP7Aは基底状態ではゴルジ体に、高濃度の銅イオン存在下では細胞膜に輸送されるのに対し、患者由来の繊維芽細胞では基底状態でも細胞膜に多くATP7Aが検出されることが報告されている <ref name=Martinelli2013><pubmed>23423674</pubmed></ref> 。その為、この疾患は銅ポンプであるATP7AおよびそのホモログであるATP7Bの細胞内輸送の異常のために引き起こされると考えられている。
 
====Pettigrew症候群 ====
====Pettigrew症候群 ====
 &sigma;1Bの欠損により[[X連鎖精神遅滞]]である[[Pettigrew症候群]]<ref name=Tarpey2006><pubmed>17186471</pubmed></ref> に関連しているといわれている。
 &sigma;1Bの欠損により[[X連鎖精神遅滞]]である[[Pettigrew症候群]]<ref name=Tarpey2006><pubmed>17186471</pubmed></ref> に関連しているといわれている。
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== AP-2 ==
== AP-2 ==
=== 機能 ===
=== 機能 ===
 AP-2はクラスリン依存性エンドサイトーシスを司るアダプタータンパク質である<ref name=Robinson2004><pubmed>15066634</pubmed></ref> 。
 AP-2はクラスリン依存性エンドサイトーシスを司り、細胞膜からエンドソームへの膜タンパク質の輸送を行うアダプタータンパク質である<ref name=Robinson2004><pubmed>15066634</pubmed></ref> 。


 AP-2はAP-1と同様にクラスリン結合部位を有しており、クラスリンを細胞膜上に集積させる。同時に、積荷タンパク質を認識することによって、AP-2は積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞によってエンドサイトーシスさせる。
 AP-2はAP-1と同様にクラスリン結合部位を有しており、クラスリンを細胞膜上に集積させる。同時に、積荷タンパク質を認識することによって、AP-2は積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞によってエンドサイトーシスさせる。
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 YXX&Phi;配列と&mu;2サブユニットとの結合の構造的基盤が明らかにされており<ref name=Owen1998><pubmed>9812899</pubmed></ref> 、それによると&mu;2サブユニットの2つの疎水性ポケットの一方にチロシンが、もう一方に&Phi;が結合することが示されている。YXX&Phi;配列はAP-1の輸送シグナル配列と同じであるが、Xや&Phi;の位置に存在するアミノ酸によってどちらのアダプタータンパク質に結合しやすいかが決まると考えられている<ref name=Ohno1998><pubmed>9748267</pubmed></ref> 。
 YXX&Phi;配列と&mu;2サブユニットとの結合の構造的基盤が明らかにされており<ref name=Owen1998><pubmed>9812899</pubmed></ref> 、それによると&mu;2サブユニットの2つの疎水性ポケットの一方にチロシンが、もう一方に&Phi;が結合することが示されている。YXX&Phi;配列はAP-1の輸送シグナル配列と同じであるが、Xや&Phi;の位置に存在するアミノ酸によってどちらのアダプタータンパク質に結合しやすいかが決まると考えられている<ref name=Ohno1998><pubmed>9748267</pubmed></ref> 。
=== 発現パターンと欠損マウス ===
 AP-2はユビキタスに発現しており、μ2サブユニットの欠損マウスは胎生致死であることが報告されている<ref name=Mitsunari2005><pubmed>16227583</pubmed></ref> 。


== AP-3 ==
== AP-3 ==
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=== サブユニット構造 ===
=== サブユニット構造 ===
 AP-3も2つのlarge subunit (&beta;3と&delta;)、1つのmedium subunit (&mu;3)、1つのsmall subunit (&sigma;3)からなっている<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。&beta;サブユニットと&mu;サブユニットにはそれぞれ脳特異的な&beta;3Bと&mu;3Bサブユニットが存在する<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref> 。
 AP-3も2つのlarge subunit (&beta;3と&delta;)、1つのmedium subunit (&mu;3)、1つのsmall subunit (&sigma;3)からなっている<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。&beta;サブユニットと&mu;サブユニットにはそれぞれ脳特異的な&beta;3Bと&mu;3Bサブユニットが存在する<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref> 。
=== 発現パターンと欠損マウス ===
 β3Bとμ3Bを含むAP-3(AP-3B)は脳特異的に発現するが、これらを含まないAP-3Aはユビキタスに存在する。ユビキタスに発現するδサブユニットが欠損した変異マウス([[mochaマウス|mocha]])は、眼や皮膚の色素が薄まり、[[wj:血小板|血小板]]や[[wj:リソソーム|リソソーム]]、[[wj:内耳|内耳]]の異常と共に神経系の異常も見られ、後述の10型[[アダプタータンパク質#Hermansky-Pudlak症候群|Hermansky-Pudlak症候群]]のモデルマウスと考えられている <ref name=Kantheti1998><pubmed>9697856</pubmed></ref> 。脳特異的なβ3Bのノックアウトマウスでは、[[シナプス]]の形態や[[GABA]]の放出に異常が見られ、[[てんかん]]発作を起こすことが知られている <ref name=Nakatsu2004><pubmed>15492041</pubmed></ref> 。


=== 疾患との関連 ===
=== 疾患との関連 ===
==== 10型Hermansky-Pudlak症候群 ====
==== 10型Hermansky-Pudlak症候群 ====
 &delta;サブユニットの欠損により10型[[Hermansky-Pudlak症候群]]が引き起こされることが報告されている<ref name=Ammann2016><pubmed>26744459</pubmed></ref> 。この疾患は重篤な[[神経発達遅延]]、[[小頭症]]、[[てんかん]]、[[聴覚]]異常、[[終脳]]萎縮といった症状を示す。
 &delta;サブユニットの欠損により10型[[Hermansky-Pudlak症候群]]が引き起こされることが報告されている<ref name=Ammann2016><pubmed>26744459</pubmed></ref> 。この疾患では上述のmochaマウスと類似した様々な症状が現れるが、神経症状としては、重篤な[[神経発達遅延]]、[[小頭症]]、[[てんかん]]、[[聴覚]]異常、[[終脳]]萎縮がみられる。。


==== 2型Hermansky-Pudlak症候群 ====
==== 2型Hermansky-Pudlak症候群 ====
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=== サブユニット構造 ===
=== サブユニット構造 ===
 AP-4も2つのlarge subunit (&beta;4と&epsilon;)、1つのmedium subunit (&mu;4)、1つのsmall subunit (&sigma;4)からなっている。&beta;サブユニットと&epsilon;サブユニットにはクラスリン結合モチーフが含まれておらず、また電子顕微鏡による解析からAP-4がクラスリンに覆われていない小胞上に存在することが示されており、これらのことからクラスリン非依存性の小胞輸送に関与すると考えられている<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref><ref name=Hirst1999><pubmed>10436028</pubmed></ref> 。
 AP-4も2つのlarge subunit (&beta;4と&epsilon;)、1つのmedium subunit (&mu;4)、1つのsmall subunit (&sigma;4)からなっている。&beta;サブユニットと&epsilon;サブユニットにはクラスリン結合モチーフが含まれておらず、また電子顕微鏡による解析からAP-4がクラスリンに覆われていない小胞上に存在することが示されており、これらのことからクラスリン非依存性の小胞輸送に関与すると考えられている<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref><ref name=Hirst1999><pubmed>10436028</pubmed></ref> 。
=== 発現パターンと欠損マウス ===
 AP-4はユビキタスにみられるアダプタータンパク質であり<ref name=Dell'Angelica1999><pubmed>10066790</pubmed></ref> 、β4のノックアウトマウスには軽度の運動失調が見られることが報告されている<ref name=Matsuda2008></ref>。


=== 疾患との関連 ===
=== 疾患との関連 ===
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=== サブユニット構造 ===
=== サブユニット構造 ===
 AP-5も2つのlarge subunit (&beta;5と&zeta;)、1つのmedium subunit (&mu;5)、1つのsmall subunit (&sigma;5)からなっている<ref name=Hirst2011><pubmed>22022230</pubmed></ref> 。AP-5はクラスリンには結合せず、その代わりに[[spatacsin]] ([[SPG11]])と[[spastizin]] ([[SPG15]])に結合することが知られている<ref name=Hirst2013b><pubmed>23825025</pubmed></ref> 。
 AP-5も2つのlarge subunit (&beta;5と&zeta;)、1つのmedium subunit (&mu;5)、1つのsmall subunit (&sigma;5)からなっている<ref name=Hirst2011><pubmed>22022230</pubmed></ref> 。AP-5はクラスリンには結合せず、その代わりに[[spatacsin]] ([[SPG11]])と[[spastizin]] ([[SPG15]])に結合することが知られている<ref name=Hirst2013b><pubmed>23825025</pubmed></ref> 。
=== 発現パターンと欠損マウス ===
 AP-5は最も新しく発見されたアダプタータンパク質であり、詳しいサブユニットの発現部位および欠損マウスの表現型については報告されていない。


=== 疾患との関連 ===
=== 疾患との関連 ===

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