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<font size="+1">[https://researchmap.jp/read0110611 藤原範子]</font><br> | |||
''兵庫医科大学医学部医学科生化学''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2021年1月14日 原稿完成日:2021年XX月XX日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真](滋賀医科大学 医学部 脳神経内科)<br> | |||
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英:Cu/Zn-superoxide dismutase<br> | |||
英略語:Cu/Zn-SOD, SOD1 | |||
{{box|text= 銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼは、スーパーオキシドアニオンラジカルを酸素と過酸化水素に変換する抗酸化酵素の一つで、生体を酸化ストレスから守る役目を果たしている。SOD1をコードする遺伝子の変異は筋萎縮性側索硬化症 (ALS) を来たし、家族性ALSの20%に存在する。変異SOD1を高発現させたマウスはALS症状を示すが、SOD1を欠損させたマウスはALSとは異なる表現型を示す。}} | |||
== 発見の歴史 == | == 発見の歴史 == | ||
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|} | |} | ||
[[ファイル:Fujiwara SOD Fig1.png|サムネイル|'''図1. SODの立体構造'''<br>'''A.''' | [[ファイル:Fujiwara SOD Fig1.png|サムネイル|350px|'''図1. SODの立体構造'''<br>'''A.''' Cys111に2-メルカプトエタノール修飾させた野生型SOD1の立体構造({{PDB|3T5W}}を改変) 2-メルカプトエタノールの有無に関わらず、野生型SOD1結晶構造のCys111付近は非対称で向き合う構造が多く、ALS変異型SOD1では対称になっている場合が多い<ref name=Ihara2012><pubmed>22804629</pubmed></ref>[12]。<br>'''B.''' SOD1のβストランドとループ構造の模式図 同じ色のβストランドが水素結合により、逆平行βシートを形成する。SOD1のアミノ酸配列から見たβストランドはa, b, c, d. e. f. g. hの順に並んでいる。SOD1ではグリークキー (Greek key) 構造 が2つ存在する。この構造は、隣接する4本の逆平行βストランドとそれらを連結するループで構成され、このうちの3本はヘアピン構造で結合している。1番目のβストランドに隣接する4番目のβストランドは、グリークキーループ (SOD1ではループIIIとループVI) によって3番目のストランドと結合している。]] | ||
[[ファイル:Fujiwara SOD Fig2.png|サムネイル|''' | [[ファイル:Fujiwara SOD Fig2.png|サムネイル|200px|'''図2. SOD1の分子進化過程で増えてきたシステイン残基''']] | ||
== 構造 == | == 構造 == | ||
SOD1の分子量は生物種によって多少異なるが、サブユニットあたり約16,000 (アミノ酸残基:151から155個)で、ヒトSOD1は153個のアミノ酸残基を有している。 | SOD1の分子量は生物種によって多少異なるが、サブユニットあたり約16,000 (アミノ酸残基:151から155個)で、ヒトSOD1は153個のアミノ酸残基を有している。 | ||
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N末端の[[メチオニン]]残基は脱落し、アセチル化された[[アラニン]]残基から始まっている。そのためSOD1のアミノ酸残基の番号は、ヒトSOD1のアミノ酸配列を基本とし、アラニンを1番目として表記されている(メチオニンを1番目とする表記法もある)。例えば家族性ALSの変異を表すG37Rは、アラニンから数えて37番目のグリシンがアルギニンに変異したことを表している。 | N末端の[[メチオニン]]残基は脱落し、アセチル化された[[アラニン]]残基から始まっている。そのためSOD1のアミノ酸残基の番号は、ヒトSOD1のアミノ酸配列を基本とし、アラニンを1番目として表記されている(メチオニンを1番目とする表記法もある)。例えば家族性ALSの変異を表すG37Rは、アラニンから数えて37番目のグリシンがアルギニンに変異したことを表している。 | ||
SOD1は分子量も小さく安定であることから非常に多くの立体構造が決定されており、[https://pdbj.org/ Protein Databank]に登録されている(''' | SOD1は分子量も小さく安定であることから非常に多くの立体構造が決定されており、[https://pdbj.org/ Protein Databank]に登録されている('''図1A''')。SOD1サブユニットは8本のβストランドが逆平行βシートを形成しており、[[グリークキー構造]]を2つ有したβバレル構造である('''図1B''')。グリークキー構造は隣接する4本の逆平行βストランドとそれらを連結するループで構成され、このうちの3本はヘアピン構造で結合している。1番目のβストランドに隣接する4番目のβストランドは、グリークキーループによって3番目のストランドと結合している。SOD1では、ループIIIとループVIがグリークキーループと呼ばれる。グリークキー構造はギリシャ美術で見られる[[wj:ギリシア雷文|雷門模様]]に似ていることから命名された。 | ||
SOD1のサブユニット同士のダイマー化は[[疎水性アミノ酸]]残基間の相互作用と主鎖同士の水素結合から成り立っている。またサブユニットあたり酵素活性に必須であるCuイオンと酵素の構造安定性に寄与するZnイオンを1つずつ配位している。金属の配位とサブユニット内に1ヶ所ある[[ジスルフィド結合]](Cys57-Cys146)はSOD1タンパク質の安定性に大きく寄与している。 | SOD1のサブユニット同士のダイマー化は[[疎水性アミノ酸]]残基間の相互作用と主鎖同士の水素結合から成り立っている。またサブユニットあたり酵素活性に必須であるCuイオンと酵素の構造安定性に寄与するZnイオンを1つずつ配位している。金属の配位とサブユニット内に1ヶ所ある[[ジスルフィド結合]](Cys57-Cys146)はSOD1タンパク質の安定性に大きく寄与している。 | ||
=== システイン残基 === | === システイン残基 === | ||
''' | '''図2'''は進化の過程におけるSOD1の[[システイン]]残基の位置を示したものである。SOD1構造の維持に重要なCys57とCys146の分子内S-S結合は存在しており、種を超えて完全に保存されている。一方、進化の過程でフリー(S-S結合していない)のシステイン残基は増えてきた。ヒトSOD1のCys6に相当する6番目のアミノ酸は酵母や植物ではアラニンで、ヒトのCys111に相当するアミノ酸はセリンになっている。[[魚類]]や[[ニホンザル]]を含む哺乳類のSOD1では6番目のアミノ酸がフリーのシステインに変異し、ヒト・[[類人猿]]および[[ニワトリ]]のSOD1は111番目もフリーのシステインを持つようになった。 | ||
なお、[[ショウジョウバエ]]やニワトリのSOD1はフリーのシステイン残基を余分に持つ。大きな脳をもつ高等動物や酸素を大量に消費する飛行を行う昆虫と鳥類は多くの酸化ストレスに曝されることから、フリーのシステイン残基のチオール基(SH)による抗酸化作用が必要になってきたと考えられる。しかし、フリーのシステイン残基は反応性が高く酸化されやすいため、SOD1タンパク質自体にとっては有利なことではない。特にグリークキーループVIに存在するCys111は非常に酸化されやすく、[[スルフォン酸]]への不可逆的酸化<ref name=Fujiwara2007><pubmed>17913710</pubmed></ref>[10]や分子間ジスルフィド結合<ref name=Furukawa2006><pubmed>16636274</pubmed></ref>[11]が起こり、ミスフォールディングや凝集に進む。このCys111を[[2-メルカプトエタノール]](2-ME)(''' | なお、[[ショウジョウバエ]]やニワトリのSOD1はフリーのシステイン残基を余分に持つ。大きな脳をもつ高等動物や酸素を大量に消費する飛行を行う昆虫と鳥類は多くの酸化ストレスに曝されることから、フリーのシステイン残基のチオール基(SH)による抗酸化作用が必要になってきたと考えられる。しかし、フリーのシステイン残基は反応性が高く酸化されやすいため、SOD1タンパク質自体にとっては有利なことではない。特にグリークキーループVIに存在するCys111は非常に酸化されやすく、[[スルフォン酸]]への不可逆的酸化<ref name=Fujiwara2007><pubmed>17913710</pubmed></ref>[10]や分子間ジスルフィド結合<ref name=Furukawa2006><pubmed>16636274</pubmed></ref>[11]が起こり、ミスフォールディングや凝集に進む。このCys111を[[2-メルカプトエタノール]](2-ME)('''図1A''')<ref name=Ihara2012><pubmed>22804629</pubmed></ref>[12]やシステイン<ref name=Auclair2013><pubmed>23927036</pubmed></ref>[13]などでブロックすると酸化による分解や凝集を防ぐことができる。 | ||
== 機能 == | == 機能 == | ||
[[ファイル:Fujiwara SOD | [[ファイル:Fujiwara SOD Fig3.png|サムネイル|'''図3. SOD、その他の抗酸化酵素の働き<br>A.''' SODの酵素反応 SODの活性中心では金属イオン(M)の酸化還元を利用してスーパーオキシドを酸素への酸化と過酸化水素への還元を行っている。<br>'''B.''' 酸素から水への還元時における活性酸素の発生と各抗酸化酵素の働き。]] | ||
=== 酵素活性 === | === 酵素活性 === | ||
[[好気性生物]]の細胞内呼吸であるミトコンドリアの[[電子伝達系]]からは、酸素が不完全に還元された[[スーパーオキシドアニオンラジカル]](以下[[スーパーオキシド]])が漏れ出ている。SODは最初の[[ラジカル]]消去に働く最も重要な抗酸化酵素である。 | [[好気性生物]]の細胞内呼吸であるミトコンドリアの[[電子伝達系]]からは、酸素が不完全に還元された[[スーパーオキシドアニオンラジカル]](以下[[スーパーオキシド]])が漏れ出ている。SODは最初の[[ラジカル]]消去に働く最も重要な抗酸化酵素である。 | ||
SODはスーパーオキシドを[[過酸化水素]]と[[酸素]]に変換する不均化反応 『 2O<sub>2</sub><sup>・-</sup> + 2H<sup>+</sup> → O<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> 』 を触媒する。不均化反応とは、同一種の基質が2種類以上の異なる種類の生成物を与える化学反応のことである。SOD1の場合は、2価の銅イオンがO<sub>2</sub><sup>・-</sup>をO<sub>2</sub>に酸化して銅イオンは1価になり、その1価の銅イオンがO<sub>2</sub><sup>・-</sup>をH<sub>2</sub>O<sub>2</sub>に還元して銅イオンは2価に戻ることを繰り返している。活性中心がFe (3価 ⇔ 2価)やMn (3価 ⇔ 2価) | SODはスーパーオキシドを[[過酸化水素]]と[[酸素]]に変換する不均化反応 『 2O<sub>2</sub><sup>・-</sup> + 2H<sup>+</sup> → O<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> 』 を触媒する。不均化反応とは、同一種の基質が2種類以上の異なる種類の生成物を与える化学反応のことである。SOD1の場合は、2価の銅イオンがO<sub>2</sub><sup>・-</sup>をO<sub>2</sub>に酸化して銅イオンは1価になり、その1価の銅イオンがO<sub>2</sub><sup>・-</sup>をH<sub>2</sub>O<sub>2</sub>に還元して銅イオンは2価に戻ることを繰り返している。活性中心がFe (3価 ⇔ 2価)やMn (3価 ⇔ 2価)でも同様の触媒機構が働いている('''図3A''')。 | ||
銅イオンや鉄イオンが存在すると過酸化水素と反応してより毒性の高い[[ヒドロキシラジカル]](・OH)ができてしまうので、生成した過酸化水素は[[カタラーゼ]]や[[グルタチオンペルオキシダーゼ]] | 銅イオンや鉄イオンが存在すると過酸化水素と反応してより毒性の高い[[ヒドロキシラジカル]](・OH)ができてしまうので、生成した過酸化水素は[[カタラーゼ]]や[[グルタチオンペルオキシダーゼ]]などによって水にまで還元される('''図3B''')。 | ||
電子伝達系以外に[[キサンチンオキシダーゼ]]や[[NADPHオキシダーゼ]]によってもスーパーオキシドは産生される。 | 電子伝達系以外に[[キサンチンオキシダーゼ]]や[[NADPHオキシダーゼ]]によってもスーパーオキシドは産生される。 | ||
=== ミトコンドリア呼吸抑制能 === | === ミトコンドリア呼吸抑制能 === | ||
SOD1はミトコンドリアから漏出するスーパーオキシドの消去以外に、ミトコンドリアの酸素呼吸そのものを低下させる役割を持つことが明らかになってきた<ref name=Sehati2011><pubmed>21397007</pubmed></ref><ref name=Reddi2013><pubmed>23332757</pubmed></ref>[77,78] | SOD1はミトコンドリアから漏出するスーパーオキシドの消去以外に、ミトコンドリアの酸素呼吸そのものを低下させる役割を持つことが明らかになってきた<ref name=Sehati2011><pubmed>21397007</pubmed></ref><ref name=Reddi2013><pubmed>23332757</pubmed></ref>[77,78]。Lys122残基('''図4''', ALS変異未定)の[[アセチル化]]がSOD1の酵素活性には影響せずにSOD1がもつミトコンドリア呼吸抑制能を低下させることも報告されている<ref name=Banks2017><pubmed>28739857</pubmed></ref>[79]。多くの代謝酵素や[[転写因子]]のリシン残基のアセチル化や[[スクシニル化]]がミトコンドリア呼吸をはじめとする細胞内代謝を制御することがわかってきており<ref name=Zhao2010><pubmed>20167786</pubmed></ref>[80]、SOD1のアセチル化もその一つだと考えられている。 | ||
=== 転写制御因子としての作用 === | === 転写制御因子としての作用 === | ||
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細胞質に存在するSOD1が[[小胞体]](ER)-[[ゴルジ体]]経路で細胞外に輸送され<ref name=Urushitani2008><pubmed>18337461</pubmed></ref>[83]、特に変異SOD1は[[クロモグラニンB]]と結合して分泌され細胞毒性に関与していることが報告された<ref name=Urushitani2006><pubmed>16369483</pubmed></ref>[84]。さらに、細胞外のカリウムイオンによって誘導された[[脱分極]]によってSOD1が細胞外に分泌されること<ref name=Cruz-Garcia2017><pubmed>28794127</pubmed></ref>[85]や神経細胞においてSOD1が[[ムスカリン性アセチルコリン受容体]]を介して[[ERK1]]/[[ERK2|2]]と[[AKT]]を活性化すること<ref name=Damiano2013><pubmed>23147108</pubmed></ref>[86]が報告されている。 | 細胞質に存在するSOD1が[[小胞体]](ER)-[[ゴルジ体]]経路で細胞外に輸送され<ref name=Urushitani2008><pubmed>18337461</pubmed></ref>[83]、特に変異SOD1は[[クロモグラニンB]]と結合して分泌され細胞毒性に関与していることが報告された<ref name=Urushitani2006><pubmed>16369483</pubmed></ref>[84]。さらに、細胞外のカリウムイオンによって誘導された[[脱分極]]によってSOD1が細胞外に分泌されること<ref name=Cruz-Garcia2017><pubmed>28794127</pubmed></ref>[85]や神経細胞においてSOD1が[[ムスカリン性アセチルコリン受容体]]を介して[[ERK1]]/[[ERK2|2]]と[[AKT]]を活性化すること<ref name=Damiano2013><pubmed>23147108</pubmed></ref>[86]が報告されている。 | ||
[[ファイル:Fujiwara SOD Fig4.png|サムネイル|''' | [[ファイル:Fujiwara SOD Fig4.png|サムネイル|'''図4. ALSに関与するSOD1変異'''<br>θは終止コドンやフレームシフト変異、インサートによってSOD1全長が変化している欠失変異を表している。 黄色マーカーは酵母、植物、魚類、他の哺乳動物でも保存されたアミノ酸残基を示し、黄緑色マーカーは魚類や哺乳動物など脊椎動物で保存されているアミノ酸残基を示している。]] | ||
== 疾患との関わり == | == 疾患との関わり == | ||
=== 筋萎縮性側索硬化症 === | === 筋萎縮性側索硬化症 === | ||
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1993年に[[家族性ALS]]の原因遺伝子として最初に同定されたのがSOD1である<ref name=Deng1993><pubmed>8351519</pubmed></ref><ref name=Rosen1993><pubmed>8446170</pubmed></ref>[14, 15]。当初はSOD1活性の低下がALSの原因になると考えられたが、SOD1[[ノックアウトマウス]]はALS症状を示さず<ref name=Reaume1996><pubmed>8673102</pubmed></ref>[16]、変異SOD1の高発現マウスがALS症状を示したことで、その考えは否定された。全ALS患者の2%程度がSOD1遺伝子の変異によるものと推定されている。 | 1993年に[[家族性ALS]]の原因遺伝子として最初に同定されたのがSOD1である<ref name=Deng1993><pubmed>8351519</pubmed></ref><ref name=Rosen1993><pubmed>8446170</pubmed></ref>[14, 15]。当初はSOD1活性の低下がALSの原因になると考えられたが、SOD1[[ノックアウトマウス]]はALS症状を示さず<ref name=Reaume1996><pubmed>8673102</pubmed></ref>[16]、変異SOD1の高発現マウスがALS症状を示したことで、その考えは否定された。全ALS患者の2%程度がSOD1遺伝子の変異によるものと推定されている。 | ||
執筆時点(2021年3月)で153個のアミノ酸残基から成るサブユニットに180個以上の[[点変異]]やC末端を欠損する[[フレームシフト変異]]が報告されている(''' | 執筆時点(2021年3月)で153個のアミノ酸残基から成るサブユニットに180個以上の[[点変異]]やC末端を欠損する[[フレームシフト変異]]が報告されている('''図4''')[[https://alsod.ac.uk/ Amyotrophic Lateral Sclerosis online Database]]。ALSを引き起こす変異はあらゆる場所に起こっているが、真核生物間でよく保存されているアミノ酸残基での変異がALS変異になる傾向が高い。あまり保存されていないループIIからβ3cストランド(K23~K36)及びループIV(F50~E78)には比較的ALS変異が少ない('''図1、4''')。 | ||
構成するアミノ酸残基による違いも見られ、システイン残基は4ヶ所すべてにおいてALS変異が見つかっている。SOD1に多く存在する[[グリシン]]残基は25ヶ所あるが、そのうち15ヶ所でALS変異が見つかっており、変異率は60%である。G37R、G85R、G93Aは早期に発見されたALS変異で、ALSモデルマウスが作製されている。特にGly93においてはAla以外に5種類のアミノ酸変異が報告されている。14ヶ所あるバリン残基も10ヶ所でALS変異が見つかっており、変異率は70%に上る。一方、11ヶ所あるリシン残基の点変異は1ヶ所(K3E)のみで、フレームシフトなどによる欠失変異が3ヶ所見つかっている。 | 構成するアミノ酸残基による違いも見られ、システイン残基は4ヶ所すべてにおいてALS変異が見つかっている。SOD1に多く存在する[[グリシン]]残基は25ヶ所あるが、そのうち15ヶ所でALS変異が見つかっており、変異率は60%である。G37R、G85R、G93Aは早期に発見されたALS変異で、ALSモデルマウスが作製されている。特にGly93においてはAla以外に5種類のアミノ酸変異が報告されている。14ヶ所あるバリン残基も10ヶ所でALS変異が見つかっており、変異率は70%に上る。一方、11ヶ所あるリシン残基の点変異は1ヶ所(K3E)のみで、フレームシフトなどによる欠失変異が3ヶ所見つかっている。 | ||
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SOD1ノックアウトマウスはALS症状を示さず一見正常に生育するものの雌の不妊が見つかり<ref name=Reaume1996><pubmed>8673102</pubmed></ref>[61]、その後多くの異常が報告されるようになった。SOD1は赤血球に多く発現しているため、その欠損は[[溶血性貧血]]を引き起こし<ref name=Iuchi2007><pubmed>17059387</pubmed></ref>[62]、腎臓や肝臓に鉄が蓄積すると考えられる<ref name=Yoshihara2012><pubmed>22435664</pubmed></ref><ref name=Yoshihara2016><pubmed>27629432</pubmed></ref>[63, 64]。また、普通食でも脂肪肝から肝硬変になり<ref name=Uchiyama2006><pubmed>16921198</pubmed></ref><ref name=Sakiyama2016><pubmed>26981929</pubmed></ref>[65, 66]、高齢になると肝腫瘍が発生する<ref name=Elchuri2005><pubmed>15531919</pubmed></ref>[67]。さらに、[[難聴]]<ref name=McFadden1999><pubmed>10466888</pubmed></ref>[68]、骨減少症<ref name=Nojiri2011><pubmed>22025246</pubmed></ref>[69]、[[骨格筋]]の萎縮<ref name=Muller2006><pubmed>16716900</pubmed></ref>[70]、[[皮膚萎縮症]]<ref name=Murakami2009><pubmed>19289104</pubmed></ref>[71]、[[加齢黄斑変性]]<ref name=Imamura2006><pubmed>16844785</pubmed></ref>[72]などの老化症状が見られている。[[アルツハイマー病]]モデルマウスと掛け合わせると認知機能がさらに低下することも報告されている<ref name=Murakami2011><pubmed>22072713</pubmed></ref>[73]。またSOD1ノックアウトマウスは行動異常を起こし、[[大脳]]では[[ドーパミントランスポーター]]の発現が上昇していることが観察されている<ref name=Yoshihara2016><pubmed>27629432</pubmed></ref>[74]。 | SOD1ノックアウトマウスはALS症状を示さず一見正常に生育するものの雌の不妊が見つかり<ref name=Reaume1996><pubmed>8673102</pubmed></ref>[61]、その後多くの異常が報告されるようになった。SOD1は赤血球に多く発現しているため、その欠損は[[溶血性貧血]]を引き起こし<ref name=Iuchi2007><pubmed>17059387</pubmed></ref>[62]、腎臓や肝臓に鉄が蓄積すると考えられる<ref name=Yoshihara2012><pubmed>22435664</pubmed></ref><ref name=Yoshihara2016><pubmed>27629432</pubmed></ref>[63, 64]。また、普通食でも脂肪肝から肝硬変になり<ref name=Uchiyama2006><pubmed>16921198</pubmed></ref><ref name=Sakiyama2016><pubmed>26981929</pubmed></ref>[65, 66]、高齢になると肝腫瘍が発生する<ref name=Elchuri2005><pubmed>15531919</pubmed></ref>[67]。さらに、[[難聴]]<ref name=McFadden1999><pubmed>10466888</pubmed></ref>[68]、骨減少症<ref name=Nojiri2011><pubmed>22025246</pubmed></ref>[69]、[[骨格筋]]の萎縮<ref name=Muller2006><pubmed>16716900</pubmed></ref>[70]、[[皮膚萎縮症]]<ref name=Murakami2009><pubmed>19289104</pubmed></ref>[71]、[[加齢黄斑変性]]<ref name=Imamura2006><pubmed>16844785</pubmed></ref>[72]などの老化症状が見られている。[[アルツハイマー病]]モデルマウスと掛け合わせると認知機能がさらに低下することも報告されている<ref name=Murakami2011><pubmed>22072713</pubmed></ref>[73]。またSOD1ノックアウトマウスは行動異常を起こし、[[大脳]]では[[ドーパミントランスポーター]]の発現が上昇していることが観察されている<ref name=Yoshihara2016><pubmed>27629432</pubmed></ref>[74]。 | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
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* [[グルタミン酸]] | * [[グルタミン酸]] | ||
== 参考文献 == | |||