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[[ファイル:NeuN1.png|サムネイル|350px|右|'''図1. NeuN/Rbfox3の遺伝子構造'''<br>エクソンは数字付きの四角で示されている。赤い線はNeuNのエピトープを、青い線はRNA結合部位(RRM)を示している。a, ヒト(''Homo sapiens'')のNeuN/Rbfox3、b, マウス(''Mus musculus'')のNeuN/Rbfox3。マウスでは、選択的スプライシングにより6個のスプライシングバリアントを生じることが報告されている。c, ラット(''Rattus norvegicus'')のNeuN/RTbfox3。文献<ref name=duan><pubmed>25680637</pubmed></ref>より改変]] | |||
NeuN抗体の抗原分子として知られていたNeuNは、Rbfox3と同じ分子である(この項ではNeuN/Rbfox3と記述する)。 | NeuN抗体の抗原分子として知られていたNeuNは、Rbfox3と同じ分子である(この項ではNeuN/Rbfox3と記述する)。 | ||
2016年2月8日 (月) 13:25時点における版
石 龍徳
東京医科大学組織・神経解剖学分野
DOI:10.14931/bsd.6876 原稿受付日:2016年2月8日 原稿完成日:2016年月日
担当編集委員:大隅 典子(東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)
英語名:neuronal nuclei
同義語:Feminizing locus on X 3, FOX3, Rbfox3
NeuNは、マウス脳の細胞核を抗原として作製されたモノクローナル抗体の抗原分子の名称で、その抗体は細胞分裂終了後のニューロンと反応するが、グリアとは反応しない。現在、ニューロンのマーカー抗体として発生学、神経科学などの分野で広く用いられている。2009年になって、NeuN抗体の抗原分子は、組織特異的スプライシング調節因子のRbfox3であることが判明した。
NeuNとは
1992年Mullenらは、ニューロン分化の調節に重要な分子を同定する目的で、オキナワハツカネズミ(Mus caroli)脳の細胞核をマウス(ハツカネズミ、Mus musculus BALB/c系統)に免疫してモノクローナル抗体を作製した。その結果、細胞分裂終了後のニューロンの核に特異的に反応する抗体(mAb A60)を得て、その抗原をNeuN(neuronal nuclei)と命名した[1]。NeuN抗体はニューロンのマーカーとして長年用いられてきたが、その抗原分子の性質は17年間不明なままであった。NeuNの正体は、2009年にKimら(Kawamotoのグループ)によって組織特異的スプライシング調節因子のRNA-binding Fox3 (Rbfox3)であることが明らかになった[2]。
構造
NeuN抗体の抗原分子として知られていたNeuNは、Rbfox3と同じ分子である(この項ではNeuN/Rbfox3と記述する)。
ウェスタンブロッティングでは46kDaと48kDaの分子量を示す。NeuN/Rbfox3はFox(feminizing locus on X)ファミリーに属する分子で、RNA認識モチーフであるRRM型RNA結合ドメインが分子の中心に1つある[3]。
マウスではNeuN/Rbfox3の選択的スプライシングによって、6種類のスプライスバリアントを生じることが報告されている(図1)。また、選択的スプライシングによってNeuN/Rbfox3の働きを自己調節するようなドミナントネガティブのバリアントを作ることが知られている[4]。
サブファミリー
NeuN/Rbfox3の属するRbfoxファミリーには、Rbfox1(別名:Fox1, A2BP1)、Rbfox2(別名:Fox2, Rbm9, Fxh),Rbfox3(別名:NeuN, Fox3, D11Bwg0517e)の3つのサブタイプがある。それぞれの分子の組織発現は異なっている。
発現
Rbfoxファミリーの3つのサブタイプの発現パターンは異なっている。Rbfox1は、ニューロン、骨格筋、心臓に、Rbfox2はニューロン、筋、卵巣、胚全体、ヒト胚由来細胞(編集部コメント:これは何でしょうか?ヒトではない種ではどうでしょうか?)に、Rbfox3は細胞分裂終了後のニューロンに発現している[3][5]。
NeuN/Rbfox3は核では正染色質(euchoromatin)に強く発現していおり、異染色質(heterochromatin)にはほとんど発現していない。また、発現は弱いが核だけでなく細胞質にも発現している。
核には46kDaと48kDa分子が同量発現しているが、細胞質では48kDa分子が多く発現している[6]。NeuN/Rbfox3は、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア、シュワン細胞、増殖中の神経前駆細胞などには発現していない。その発現が細胞分裂終了後のニューロンに限られているので、発生期のニューロン分化マーカーや病理学的なマーカーとして有用である[3][7]。ほとんどのニューロンに発現しているが、つぎに挙げるニューロンでは例外的にが発現していない:小脳のプルキンエ細胞、下オリーブ核のニューロン、網膜の内/外顆粒層のニューロン、脊髄のγ運動ニューロン、交感神経節のニューロン、発生期大脳皮質のCajal-Retzius細胞[5]。In vitroの培養細胞では、GFAP陽性細胞がNeuNを発現することがあるので注意を要する[8]。
機能
NeuN/Rbfox3の属するRbfoxファミリー分子は、組織特異的選択的スプライシング調節因子である。RNA認識モチーフであるRRM型RNA結合ドメインが分子の中心に1つあり、RNA penta(hexa)nucleotide (U)GCAUGと結合する[2][3][5]。例えばNumbの選択的スプライシングを調節することにより、ニューロンの分化を促進する[9]。また、直接pri-miRNAに結合しpri-miRNAのプロセシングを調節している[10]。NeuN/Rbfox3欠損マウスでは、けいれん発作に対する感受性が上昇し、不安行動が減少することが報告されている[11]。
疾患との関わり
NeuNは神経細胞腫、神経節細胞腫、 髄芽腫に発現している[7][12]。脳卒中(編集部コメント:脳卒中は脳梗塞と出血の異なった病態が含有されますので、詳しく御記述ください。)、パーキンソン病などにおけるNeuN/Rbfox3発現の低下が報告されているが、機能低下によるものか細胞死によるものかが不明確な場合が多い[3]。Rbfox3の遺伝子欠損がローランドてんかん患者で見つかっている[13]。
関連項目
参考文献
- ↑
Mullen, R.J., Buck, C.R., & Smith, A.M. (1992).
NeuN, a neuronal specific nuclear protein in vertebrates. Development (Cambridge, England), 116(1), 201-11. [PubMed:1483388] [WorldCat] - ↑ 2.0 2.1
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