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2021年7月23日 (金) 20:26時点における最新版
勝山 裕
滋賀医科大学 解剖学講座
DOI:10.14931/bsd.3005 原稿受付日:2013年1月9日 原稿完成日:2014年11月13日
担当編集委員:大隅 典子(東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)
英:forebrain、prosencephalon 独:Vorderhirn 仏:prosencéphale
前脳はヒトの脳のもっとも大きな部分であり、中枢神経系の再前端領域に位置する。大脳(扁桃体、海馬などの辺縁皮質を含む)、中隔核、乳頭体、視床前核、嗅球といった大脳皮質外の構造、視床、視床上部、視床下部などからなる領域である。発生過程の三脳胞期のもっとも前方のふくらみである前脳胞から由来する。前脳の発生過程で両半球が分離されない脳形成不全を全前脳胞症(holoprosencephaly)とよび、正中部の脳、顔面の構造に奇形を生じる。
前脳とは
脳になる神経管の三領域のうち、最も吻側の領域、ならびにそこから発生した脳領域を指す。その尾側に中脳 (midbrain, mesencephalon)、後脳 (hindbrainもしくはrhombencephalon)が続く。神経管発生初期にはそれぞれの領域が膨らんで胞状である事から形態的に前脳胞、中脳胞、後脳胞と呼び、この時期を三脳胞期と呼ぶ。その後、前脳域は終脳 (telencephalon)と間脳 (diencephalon)に分かれ、五脳胞期と呼ばれる[1]。
区分
終脳
終脳は大脳と呼ばれることがあるが、記述によっては間脳を含んだ脳部位を大脳とよぶ場合がある。大脳は英語でcerebrumであるが、中脳水道は英語でcerebral aqueductと言うが中脳の構造である。同様に大脳脚 (cerebral peduncle)も中脳の構造であるが、これは大脳の入出力線維を含んでいる。
哺乳類の脳では表面から脳の深部にむかって大脳皮質、大脳白質、大脳基底核となっている。
大脳皮質は層構造を呈する神経細胞から構成されている。特に発生過程で6層構造をとる領域を新皮質とされるが、成熟した新皮質の全ての領野で6層がみられる訳ではない。
大脳白質は、大脳への入出力線維を含む交連線維(脳梁や前交連)からなる。
扁桃体や海馬は大脳皮質の一部であり、終脳に含まれる。扁桃体や海馬を含む大脳底部の脳幹を囲む様な領域を辺縁皮質とよぶ。辺縁系 (limbic system)(もしくは大脳辺縁系)と言う場合には海馬、海馬傍回、帯状回、梨状葉皮質、扁桃体に加え、中隔核、乳頭体、視床前核、嗅球といった大脳皮質外の構造、神経核と脳弓や嗅条の様なそれらをつなぐ神経線維も含まれる。
間脳
視床、視床上部、視床下部に分けられ、これらは発生過程で背腹軸にそった3領域(蓋板→視床上部、翼板→視床、基板→視床下部)から分化する[2]。
視床下部は自律神経系と内分泌系の最高中枢であり、機能が異なる細かい神経核が存在する。
内包は視床と大脳基底核の間にある白質部分で間脳に含まれる。大脳皮質への入出力線維が通過する。内包前脚側は大脳基底核のレンズ核と尾状核を分ける。内包のくの字部分は内包膝と言う。内包後脚側は視床とレンズ核を分ける。
疾患との関わり
正常な前脳の発生では分離した左右の半球が生じるが、全前脳胞症の場合、この分離が起きないか不十分になる。障害が軽度の場合、脳は比較的正常な形態をもって産まれてくるが、眼、鼻、上唇に形成異常や知的障害、運動障害がみられる。障害が重度な場合には顔面と脳の構造と機能が大きく失われ死産となる。特に激しい障害では眼が顔面の中心に1つのみ形成される単眼症(cyclopia)となる。この疾患の原因としてSonic hedgehog遺伝子などが知られている[3] [4]。
関連項目
参考文献
- ↑ von Baer KE
Über Entwickelungsgeschichte der Thiere. Beobachtung und Reflexion.
Königsberg, Bornträger. 1828 PDF - ↑
Chatterjee, M., & Li, J.Y. (2012).
Patterning and compartment formation in the diencephalon. Frontiers in neuroscience, 6, 66. [PubMed:22593732] [PMC] [WorldCat] [DOI] - ↑
Belloni, E., Muenke, M., Roessler, E., Traverso, G., Siegel-Bartelt, J., Frumkin, A., ..., & Scherer, S.W. (1996).
Identification of Sonic hedgehog as a candidate gene responsible for holoprosencephaly. Nature genetics, 14(3), 353-6. [PubMed:8896571] [WorldCat] [DOI] - ↑
Roessler, E., Belloni, E., Gaudenz, K., Jay, P., Berta, P., Scherer, S.W., ..., & Muenke, M. (1996).
Mutations in the human Sonic Hedgehog gene cause holoprosencephaly. Nature genetics, 14(3), 357-60. [PubMed:8896572] [WorldCat] [DOI]