視覚系の発生
視覚系は、眼球、視神経、視中枢(視床、中脳、大脳後頭葉)および眼球付属器(眼瞼、結膜、涙器、外眼筋)からなる。視覚系の組織は、神経外胚葉、表皮外胚葉、中胚葉および神経堤に由来する。視覚系の発生は、神経管が形成される以前の発生のきわめて早い時期に始まり、生後もその発達が見られる。近年、眼の形成に関わる遺伝子が多数見つかっており、その遺伝子変異は眼の先天異常にも関連が深い。
視覚系組織
視覚系は、眼球、視神経、視中枢(視床、中脳、大脳後頭葉)および眼球付属器(眼瞼、結膜、涙器、外眼筋)からなる。視中枢は、解剖学的に脳の一部であり、その発生についてはここでは扱わない。視覚系の組織は、神経外胚葉、表皮外胚葉、中胚葉および神経堤に由来する(表1)[1]。視覚系は、その解剖学的構造が動物種により多様性に富むため、本項では脊椎動物(特にヒト)の視覚器の発生についてのみ記述する。視覚系の発生は、神経管が形成される以前の発生のきわめて早い時期に始まり、生後もその発達が見られる。
胚 葉 | 眼 の 組 織 | |||
神経外胚葉 | 網膜 | 虹彩上皮・瞳孔筋 | 毛様体上皮 | 視神経 |
表皮外胚葉 | 水晶体 | 角膜上皮 | 眼瞼上皮 | 結膜 |
中胚葉 | 眼球の結合組織・血管系 | |||
神経堤 | 脈落膜 | 強膜 | 角膜内皮・実質 | 虹彩結合組織 |
眼球周囲の結合組織・血管系 | 毛様体結合組織 | 毛様体筋 | 眼瞼間葉 |
各組織の発生
眼胞・眼杯と水晶体胞
光を感じる網膜は脳の一部として発生し、前脳から外側へ突出した膨らみである眼胞に由来する(図1)[1]。眼胞形成の兆候はヒトで胎生第3週の中頃にすでに認められ、神経板の予定前脳形成領域に眼溝と呼ばれる浅いくぼみができ、これが眼胞形成のもととなる。眼胞は、胎生第4週のはじめに、近傍の表皮外胚葉に作用して肥厚させ、水晶体板(lens placode)を誘導する。やがて、眼胞は腹側に切れ長に陥入をおこして眼杯となり、前脳との連絡部が細くなって中腔の眼茎(がんけいoptic stalk)(眼柄「がんぺい」ともいう[3])が形成される(図2)。同時に水晶体板も陥入して、胎生第5週までに表皮外胚葉から分離して水晶体胞となる。眼杯の内層、外層の間には最初、網膜内腔(intraretinal space; 視室 cavitas opticaともいう)と呼ばれる間隙が存在するが、まもなく消失する。眼杯外層は一層の網膜色素上皮に分化し、眼杯内層は偽重層上皮である神経網膜に分化する。眼杯外層の色素は、胎生第5週末頃から蓄積され始める。眼杯および眼茎の腹側部には眼杯裂 (optic fissure; 脈絡膜裂 choroid fissureともいう)と呼ばれる線状の溝が形成され、ここに硝子体血管が発生する(図2、図3)。ヒト胎生第6-7週中に眼杯裂の縁が癒合すると(図2)、硝子体血管は眼茎内に包み込まれる。硝子体血管の遠位部は最終的に退行して硝子体管を残すだけになるが、近位部は網膜中心動脈および網膜中心静脈となる。
網膜、虹彩、毛様体
眼杯内層すなわち神経網膜の後部5分の4を網膜視部と呼び、視室に接した領域から光受容細胞である桿体と錐体とが分化する[1]。従って、光は光受容ニューロンに届く前に網膜のほとんどの層を通過するが、網膜は薄くて透明であるため、光に対して妨げとならない。より内側の神経網膜には、外顆粒層、内顆粒層、神経節細胞層が区別されるようになり(図4)、それぞれ桿体・錐体の核、介在ニューロン(双極細胞など)の核、神経節細胞の核が存在する層を形成する。神経網膜の最も内側には神経節細胞の軸索が走行し、眼茎の内腔を通って視中枢へ投射する。網膜細胞の分化と増殖には部位による差があり、中心部網膜の細胞から分化成熟し、周辺部網膜には細胞増殖域がある。また、網膜細胞の中で神経節細胞が最初に分化する。ヒトの網膜には中心部に黄斑部と呼ばれる陥凹した部位があり、錐体視細胞が最も多く存在する。黄斑部は胎生第8月以降に発達し始め、生後6ヶ月頃に完成する[4]。
神経網膜の前部5分の1は網膜盲部と呼ばれ、網膜虹彩部と網膜毛様体部を形成する。虹彩は、平滑筋である瞳孔筋(瞳の開閉を司る括約筋と散大筋)、結合組織、色素上皮、無色素上皮からなる(図5)。毛様体は、5ヶ月めの胎児になると、毛様体突起と呼ばれるヒダ状の部分が同定できるようになり、やがて毛様体筋(水晶体の曲率を調節する平滑筋)が発生し、毛様体小帯(水晶体を支える弾性線維、zunular fiber、チン小帯ともいう)は毛様体突起から分泌されてできる[4]。虹彩上皮および毛様体上皮(突起)の色素上皮、無色素上皮はそれぞれ眼杯外層、眼杯内層に由来する。瞳孔筋は眼杯(神経外胚葉)由来であるのに対し、毛様体筋は神経堤に由来する。瞳孔括約筋は動眼神経(副交感神経)、瞳孔散大筋は頚部交感神経に支配される。毛様体筋は動眼神経(副交感神経)に支配される。
水晶体
ヒトで胎生6週末までに、水晶体胞の後壁の細胞は伸長し、次第に水晶体胞の内腔を満たす長い線維を形成するようになる[1]。第7週の終わりには、これらの一次水晶体線維は水晶体胞の前壁に到達する。これ以降も新しい二次水晶体線維が、水晶体縁である赤道部から中心部へ追加される。発生中の水晶体は、硝子体動脈が退縮するまでには、水晶体血管膜に包まれておりこれにより酸素や栄養を受け取っている。硝子体動脈が退縮すると、血管膜も退縮し、眼房水や硝子体液からの拡散によって栄養されるようになる。
眼房
眼房には前眼房と後眼房とがある(図6)。前眼房は、発生中の水晶体と角膜との間にあり、間葉組織内に形成される間隙状の腔から発生する[5] 。一方、後眼房は、発生中の虹彩の後方で、水晶体の前部の間葉組織に形成された腔から発生する。水晶体血管膜(瞳孔膜を含む)が消失すると、前眼房と後眼房とは互いに交通し、前眼房周辺部にある強膜静脈洞(シュレム管 canal of Schlemmともいう)とも交通するようになる(図5)。シュレム管は毛様体突起から産生される眼房水を血流へ吸収させる管であり、正常に発生することで眼内圧が保たれるようになる。
脈絡膜、強膜、角膜
ヒト胎生第5週末までに、眼の原基は疎性結合組織である眼周囲間葉に取り囲まれる[1]。眼周囲間葉は神経堤由来であり、この組織から眼杯の誘導作用により、網膜に近い側に「血管に富んだ脈絡膜」が、その外側に「結合組織性線維が密に配列した強膜」が分化する。角膜は、まず上皮が水晶体胞の作用により表皮外胚葉から誘導され、その後、神経堤に由来する実質(固有層ともいう)と内皮とが形成される。角膜実質は、強膜に連続しており、角膜内皮は眼杯縁から遊走してきた神経堤細胞が分化して形成される。
硝子体
眼周囲間葉は、眼杯裂より眼杯内部へ入り、硝子体血管とともに透明なゼラチン質からなる硝子体を形成する[1]。前述のように、硝子体血管は後に退縮し硝子体管を痕跡として残す。
視神経
眼茎から発生する。胎生第7週に眼杯裂が閉鎖したとき眼茎は中腔であるが(図7)、神経線維(軸索)が増えることにより内腔が次第に消失する。視神経の外面は、外方から硬膜(強膜の続き)と軟膜クモ膜(脈絡膜の続き)に包まれるようになる。ヒトの視神経は、眼球へ入るまでは髄鞘に覆われているが(有髄神経という)、眼内に入ると無髄になる。ヒト視神経の髄鞘形成は、出生時には不完全であるが、生後10週ほどで完成する[5]。
眼瞼、結膜
眼瞼は、ヒト胎生第6週に、神経堤由来の眼周囲間葉と角膜を覆う表皮外胚葉から発生する。第10週の初めまでにいったん眼瞼は癒合し、第26-28週まで癒合したままである。眼瞼が開き始めると、眼瞼の内面を覆う上皮として眼瞼結膜が、強膜前方部の表層上皮として眼球結膜が発達する。眼瞼内の間葉組織から、眼瞼に強度を与える瞼板が発生し、眼瞼を閉じる横紋筋である眼輪筋は、第2咽頭弓内の間葉組織に由来し、顔面神経に支配される[5]。他に眼瞼の筋には、眼裂を開く瞼板筋(平滑筋、交感神経支配)と上眼瞼挙筋(横紋筋、動眼神経支配)とがある。眼瞼には睫毛や腺(眼瞼腺、副涙腺など)があり、他の皮膚の部分と同様に表皮外胚葉から発生する。
涙器
表皮外胚葉からまず涙腺が発生する[5] 。涙腺のもととなる萠芽がさらに分枝し、管状になって鼻涙管が発生する。涙腺は出生時には未発達で、生後6週〜3ヶ月くらいまでに発達する。
外眼筋
6つの外眼筋が、眼窩骨の結合組織から始まり強膜に付着し、眼球の運動を司り両眼融合視を可能にしている。外直筋と上斜筋は、頭部の分節していない傍軸中胚葉に由来し、それぞれ外転神経と滑車神経支配である。上直筋、下直筋、内直筋および下斜筋は、脊索前方の頭部中胚葉に由来し、すべて動眼神経支配である[6]。
眼の形成の分子的制御
眼の形成とPax6遺伝子
眼が形成されるのに必須の遺伝子は、マウス、ヒト、ショウジョウバエの遺伝学から発見された[1] 。1960年代にSmall eye (Sey)という常染色体半優性遺伝の突然変異マウスが見つかっていた。このマウスは、ヘテロ接合変異体で小眼症を呈し、ホモ接合変異体では全く眼が形成されない。また、ヒト先天性眼疾患の一つである無虹彩症 aniridiaの原因遺伝子(An)が同定され、ヒトのPax6遺伝子であることが明らかになった(1991年)。これとほぼ同時期に、マウスSeyの原因遺伝子もPax6遺伝子であることが報告された。1993年には、小眼症ラット「内田ラット」(rSey) の原因遺伝子がPax6遺伝子であること、この変異体解析からPax6遺伝子は眼の発生だけでなく、神経堤細胞の移動による頭部・顔面発生に関与していることが世界で初めて報告された。その後、ショウジョウバエのeyeless変異体の原因遺伝子がハエのPax6相同遺伝子であることが発見された。ショウジョウバエでeyelessあるいはマウスPax6遺伝子を異所性に発現させると、触角や脚、翅に複眼を形成させることができる。Pax6遺伝子は眼の原基以外にも、鼻板や脳の他の領域、神経管、分化した網膜細胞、膵臓などにも発現しており、多くの機能を担っている。また、無虹彩症以外にも様々な先天性眼疾患でPax6遺伝子の変異が見られる。
眼が左右2つできるしくみ
これまでに眼形成領域に遺伝子発現する転写因子がPax6を含めていくつか同定されている(表2)[7]。発生初期において、これらの眼形成転写因子(Eye Field Transcription Factors, EFTFs)は、神経管形成が始まる前の前方神経板に正中部から左右に帯状に遺伝子発現する(図8)。このように眼形成領域は、発生初期には中央部に一つで、発生が進むに従い左右2つの眼原基に分かれる[2] 。眼原基を2つに分けるためのシグナル分子は、脊索前板から分泌されるソニックヘッジホッグ (Sonic hedgehog, Shh)である。Shhは、眼形成領域の中央部でPax2の発現を増加させ、Pax6の発現を低下させる。Pax2発現領域は後に眼茎となり、Pax6などEFTFs発現領域は眼杯となる。Pax6は表皮外胚葉の予定水晶体・角膜領域にも発現するがRaxは眼胞とその系譜にのみに発現するなど、EFTFsの発現領域は互いに必ずしも全て一致するわけではない。Shh遺伝子変異やShhシグナル伝達阻害により単眼症がおこることからも、正中部からのShhシグナルが単一の眼形成領域を左右2つに分けることがわかる。
EFTF(別名) | 正式名 | 属する転写因子ファミリー | ノックアウトマウスの表現型(ホモ接合体)* |
ET (Tbx3) | Eye T-box | T-box | 胎生致死、四肢・乳腺・卵黄嚢の異常 |
Rx1 (Rax) | Retina homeobox-1 | Paired-like homeobox | 新生児致死、前脳・中脳・眼の欠損 |
Pax6 | Paired homeobox-6 | Paired homeobox | 周産期致死、無眼球、頭部・顔面・前脳の異常 |
Six3 | Sine oculis-related homeobox-3 | Six family of homeobox | 前方頭部と前脳の欠損 |
Lhx2 | LIM homeobox-2 | LIM (Lin11, Isl-1, Mec-3) homeobox | 周産期致死、肝臓・終脳・嗅脳・大脳基底核・眼形態の異常 |
tll (Tlx)(Nr2e1) | Tailless | Nuclear receptor-type | 小さい脳、大脳・嗅脳の形成不全、薄い網膜、網膜血管の減少 |
Optx2 (Six6) | Optic Six gene 2 | Six family of homeobox | 網膜と下垂体の形成不全 |
- Genome Informaticsを参照した。
眼杯のパターン形成
眼胞から眼杯が形成されるときに、将来、光を受容して情報処理を行う神経網膜領域と網膜色素上皮(Retinal Pigment Epithelium: RPE)の領域が決まってくる。これには、細胞非自律的な組織間相互作用によるしくみと細胞自律的なしくみの2つが関わっている。眼胞に隣接した表皮外胚葉からの線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor: FGF)が、神経網膜の分化を促し、眼周囲間葉から分泌される形質転換増殖因子β(Transforming Growth Factor β:TGFβ)様シグナル分子(アクチビンなど)がRPEの分化を促す(図9)[2] 。これら分泌因子の作用を受けて、予定神経網膜領域にはChx10 (Vsx2と同じ)などの転写因子が遺伝子発現するようになり、一方、予定RPE領域にはMitfなどが発現するようになり、それぞれの分化が細胞自律的なしくみで進行する。Chx10はocular retardation (or) 変異マウスの原因遺伝子であり、Mitfはmicrophthalmia (mi) 変異マウスの原因遺伝子である。最近、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)由来の上皮シートから三次元培養により眼杯が形成された[8]。培養皿で形成された眼杯において、神経網膜とRPEとが分化することが示された。このことは、眼杯のパターン形成と網膜細胞の分化が周囲の組織の介在なしに自律的に進行することを示している。
水晶体の分化
水晶体板の形成にはPax6が必要であり[2] 、Pax6を発現している頭部表皮外胚葉は、眼胞からの水晶体誘導シグナルに応答できるようになる。Pax6は、転写因子Sox2の水晶体原基での遺伝子発現を促進し、水晶体分化を正に制御する(図9)。眼胞から分泌される骨形成因子4 (Bone Morphogenic Factor 4, BMP4)も、Sox2および別の転写因子であるL-mafの発現を上昇させ維持する。さらにPax6によりホメオボックス遺伝子であるSix3とProx1の発現が制御される。Pax6, Sox2, L-mafの協調的な作用によりProx1の発現が開始され、Prox1は水晶体特異的タンパク質であるクリスタリン遺伝子の発現を促して、水晶体分化を進める。一方、Six3はクリスタリン遺伝子の発現を負に制御する。
網膜細胞分化
神経網膜から様々な形態と機能をもった網膜細胞が分化するしくみの解明は、1980年代後半の網膜細胞系譜に関する研究にさかのぼる。すなわち、神経網膜の細胞である網膜前駆細胞retinal progenitor cells (RPCs)は、多分化能をもっており(multipotent)、全ての網膜細胞がRPCsから分化することが、レトロウイルスや蛍光物質を用いた細胞標識法により明らかにされた。網膜細胞分化には、細胞外からの因子(extrinsic factors)と細胞内の自律的なしくみ(intrinsic factors)の両方が重要であることは、他の細胞や組織の発生分化と同様である。網膜細胞分化を左右する細胞自律的なしくみとして、様々な転写調節因子が同定されている(図10) [9] 。塩基性ヘリックスループヘリックス (basic-helix-loop-helix, bHLH)、ホメオドメイン (homeodomain)、フォークヘッド (forkhead)などのモチーフをもつものが多い。
網膜幹細胞・網膜前駆細胞
すべての網膜細胞に分化でき、自己複製できる細胞を網膜幹細胞 retinal stem cells (RSCs)という。これに対して、細胞分裂能があり、ある限られた種類の網膜細胞に分化できる細胞を網膜前駆細胞retinal progenitor cells (RPCs)という(図11)[9]。RSCs/RPCsの分子マーカーは、特異的なものはまだ見つかっておらず、神経幹細胞や神経前駆細胞に存在する分子と同様なものや、分化した網膜細胞にも存在する分子である(表3)[10]。
分子名 | 他の発現細胞 |
Pax6 | アマクリン細胞、網膜神経節細胞 |
Sox2 | Müllerグリア細胞、網膜アストロサイト |
nestin | グリア細胞、創傷時、内皮細胞、周皮細胞、腫瘍細胞 |
vimentin | グリア細胞、創傷時 |
musashi | 神経幹細胞 |
Chx10 (Vsx2) | 双極細胞 |
網膜細胞形成retinogenesisは、魚類や両生類において生涯にわたっておこり、その細胞の供給は毛様体辺縁部(ciliary marginal zone: CMZ)(図5)と呼ばれる周辺部網膜からなされる。魚類では、中心部網膜のMüllerグリア系の細胞から桿体視細胞が付加的に形成されることから、Müller(ミュラー)グリア細胞も動物や環境によって網膜前駆細胞に変化すると考えられている。鳥類もCMZ類似の増殖性周辺部網膜をもつが、孵化後2-3週間までに細胞分裂しなくなり、分化する網膜神経細胞の種類も限られている。マウスのCMZ様領域の細胞は、グリア細胞または後期分化型網膜細胞(双極細胞、桿体)にのみ分化し、生後1週間までにこの能力は失われ、生後2週間までに網膜細胞形成が見られなくなる。2000年に、成体齧歯類の分化した毛様体色素上皮が、培養下で高い増殖能力を持って網膜前駆細胞様に脱分化して、様々な網膜神経細胞に分化できることが報告された。その後研究が進み、毛様体以外にも様々な眼の細胞が、増殖因子添加や創傷時など、いろいろな条件下で脱分化して網膜神経細胞へと分化できることがわかった(表4)[10]。
細胞名 | 条件 | ||||||
培養 | 生体内 | 増殖因子投与 | 神経毒投与 | 網膜切除 | 虚血 | レーザ照射 | |
虹彩色素上皮細胞 | ○ | ||||||
毛様体色素上皮細胞 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
周辺部網膜細胞 (CMZ) | ○ | ○ | ○ | ||||
網膜色素上皮細胞 (RPE) | ○ | ○ | |||||
Müllerグリア細胞 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
網膜アストロサイト | ○ | ○ | ○ | ||||
ミクログリア | ○ | ||||||
視神経グリア細胞 | ○ |
- 出生後postnatalまたは成体adultの眼。
関連項目
参考文献
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 大隅典子
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人体発生学 第10版 (原書第11版)
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(執筆者:大内淑代 担当編集委員:大隅典子)